"旅行中の夫に告げなかった葬儀" 第2話
「今もかよ。俺はの気分なんだよ」
「ごめんなさい。でもにハンバーグを作るって約束したから」
「なんで俺がしなきゃいけないんだよ。母さんは、俺がべたいものをいつも用してくれていたぞ」
私は箸を置き、優斗を見た。
「お義母さんは専業主婦だったでしょう。私は仕事をしているのよ。そんなに料理だけにをかけられないわ」
その瞬、優斗の目つきが鋭くなった。
「おなんて1にいるだけなんだから、仕事のの事くらい完璧にやれよな」
「にいても働いているの。共働きで活費だって折半なんだから、のことは優斗も協力してくれていいじゃない」
「うるさい。俺はでべてくる」
優斗はテーブルをく叩き、子を乱暴に引いてちがった。そして捨て台を残してをてった。
約1、私のスマホが鳴った。
画面には義母の名が表示されていた。
私はきくため息をつき、通話ボタンを押した。
「はい」
「ちょっと、優斗がお腹を空かせてうちに来たんだけど。あなたって相変わらず料理も満にできないのね」
義母は最初から責める調だった。
「事は作りました。でも、今はとの約束で――」
「夫のにわない事なんて、何のもないでしょう。子どもの好物も夫の好物も作るのが嫁の務めよ。
広告
私はそうしてきたわ」
「私は仕事をしています。そんな余裕はないんです」
「偉そうなことを言わないでちょうだい。仕事と言っても、いつもにいるだけじゃない。嫁は夫に尽くすのが番の仕事よ」
私は何度も菜さんに相談した。菜さんはそのたびに優斗を叱ってくれたが、優斗が改善することはなかった。義母に至っては、いつも優斗の方だった。
その夜も、義母は言いたいことだけ言って話を切った。
私はを連れ、優斗を迎えに義実へ向かった。
玄関にてきた義母は、骨に嫌そうな顔をした。
「あら、何しに来たの?」
「優斗さんを迎えに来ました」
「あんたたちの顔なんて見たくもないんだけどね。も優斗に似ていたら、もっとかったのに。母親にそっくりなんだもの」
その言葉に私が息をんだ、奥から義父がてきた。
「母さん、変なことを言うんじゃない。あゆみさんに失礼だろう」
義父は私にをげた。
「あゆみさん、すまない」
「いいえ」
「もよく来てくれたね」
義父が笑顔で話しかけると、は嬉しそうに駆け寄った。義父はをとてもがってくれた。も義父になついていた。
その様子を見た義母は、舌打ちを漏らした。
私は胸の奥を押さえながら、奥からてきた優斗に声をかけた。
「今度はちゃんと優斗の望も聞くから、に帰ってきて」
広告
優斗はで笑った。
「ふん、やっと反省したか。仕方ねえな。帰ってやるけど、今度逆らったら婚だからな」
私は何とかりをみ込み、を連れて義実をにした。
そんな状況が続いていたある、優斗が突然言った。
「俺さ、来週、母さんと旅にくことになったから」
私はにしていた洗濯物を止めた。
「え、来週? なんでそんなに急に?」
「母さんがにきたいんだって」
「でも、来週はと遊園にこうって言ってたじゃない。だって楽しみにしていたのに」
「うるさい。母さんがきたいって言ってるんだよ。おらとはいつでもけるだろ」
優斗は最初から話しう気などなかった。
「それに、おたちがいたら母さんも好きに買い物できないだろ。父さんは仕事が忙しいみたいだし、2でくことにしたんだよ」
「勝に決めないでよ」
「決まったことにごちゃごちゃ言うな」
結局、いつものように鳴られ、話しいにならなかった。
旅当、優斗はきなスーツケースを玄関に置き、嫌で言った。
「じゃあってくるから。帰りは空港まで迎えに来いよ」
隣では義母が、勝ち誇ったように笑っていた。
「悪いわね。楽しんでくるわ」
私はのを握り、無言で2を見送った。
その翌、菜さんから珍しく話が入った。
通話にると、菜さんの声はらかに焦っていた。
「あゆみちゃん、変なの。お父さんが倒れたのに、お母さんたちに連絡が取れないのよ。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
冷えた雑煮の逆転正月
元日の夜、シンガポール出張から1日早く帰国した佐藤健一は、実家の食卓に妻・弓の席だけがないことに気づく。 暖かい居間では、母と弟が豪華なおせちを囲んで笑っていた。だが弓は、冷え切った台所の隅で、たった1人、冷たい雑煮をすすっていた。 15年間、夫の不在中に何が起きていたのか。 赤切れた手、擦り切れたカーディガン、使わせてもらえないお湯。そして、父が遺したはずの3000万円の預金に残されていた、不可解な出金記録。 健一は怒りを飲み込み、その場では何も言わなかった。 翌朝、妻を呼び出した彼は、ついに決断する。 だが金庫を開けた時、そこにあったのは消えた遺産だけではなかった。弓の名前が書かれた、覚えのない離婚届。そして母と弟が隠していた、さらに深い裏切りの証拠。 元日の冷たい台所から始まった夫婦の反撃は、やがて家族の嘘を一つずつ暴いていく――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 28 -
連載中第7話
20億追放妻の封筒逆転
斎藤グループ創業家の長男と結婚して5年。跡継ぎを望まれながらも子どもに恵まれず、結菜は義実家の視線に耐え続けていた。 そんなある日、夫の愛人が妊娠したことを知らされる。しかも相手の女性は双子を身ごもっていた。義父母は結菜に離婚合意書を差し出し、20億円と引き換えに日本を出るよう命じる。 家族だと思っていた場所から、金で追い出されることになった結菜。だが署名の直前、彼女は誰にも言えない“ある事実”を知る。 何も告げず海外へ渡った結菜と、愛人との結婚式を迎えようとする元夫。 すべてが斎藤家の思い通りに進むはずだったその日、式場に一通の封筒が届く。 そこに記されていた真実が、夫と愛人の未来、そして斎藤家の後継者計画を静かに崩していく――。因果応報|人生逆転|不倫1.1萬字5 27 -
完結第14話
特大おにぎりの恩返し
小学4年生の遠足の日、黒川大雅は「お弁当を忘れた」と笑う同級生・浅川亜美に、祖母が握ってくれた特大の梅干しおにぎりを分けた。 けれど、それはただの忘れ物ではなかった。 給食だけが唯一まともに食べられる日もあった亜美。お風呂にも入れず、空腹を隠して笑っていた彼女の事情を知った大雅の家族は、静かに手を差し伸べる。やがて亜美は祖父母の家へ引き取られ、二人は離ればなれになった。 それから20年後。 建設会社の社長となった大雅の前に、再開発予定地にある「こども食堂」を守ろうとする一人の女性が現れる。 その名は、浅川亜美。 あの日のおにぎりは、ただ空腹を満たしただけではなかった。祖母の優しさと、一人の少女の人生を変えた記憶は、20年の時を越えて、思いがけない形で大雅の前に戻ってくる――。人生逆転|真相2.0萬字5 17 -
完結第13話
吹雪の一杯
夫が遺した山あいの温泉旅館「灯里館」を、一人で守り続けてきた70歳の富美子。 しかし返済期限まで残り三ヶ月。1500万円の借金を抱え、親族や開発会社からは「もう旅館を売れ」と迫られていた。 そんなある吹雪の夜、富美子は雪の中で倒れていた一人の外国人男性を助ける。凍えた彼に差し出したのは、囲炉裏の火と、いつもの味噌汁だった。 ただの親切のはずだった。 だが、その外国人が残した映像をきっかけに、灯里館には世界中から予約が殺到する。さらに、旅館を買い取ろうとする開発会社が本当に狙っていたもの、そして亡き夫が密かに守ろうとしていた“山の秘密”が少しずつ明らかになっていく。 夫は本当に旅館を売ろうとしていたのか。 なぜ死後の日付で、夫の署名が残されていたのか。 消えかけた囲炉裏の火が、富美子の人生をもう一度動かし始める――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 641 -
完結第10話
消えた金づる夫
妻と娘が、妻の浮気相手とハワイ旅行へ出発する朝。 山中敏文は、玄関で笑いながら荷物を確認する2人を黙って見送っていた。妻の裏切りも、娘がそれを知りながら母親の浮気相手と親しくしていたことも、すでにすべて知っていたからだ。 「今日でさようならだな。永遠に帰ってこなくていいぞ」 敏文の言葉を、妻はただの嫉妬だと笑い飛ばす。娘もまた、父を見下すような言葉を残して出ていった。 しかしその日こそ、敏文が何か月もかけて準備してきた“最後の日”だった。 2人がハワイで浮かれている間に、家の中から荷物は消え、生活の土台は静かに崩されていく。妻が当然のように帰るつもりだった場所は、もう以前の家ではなかった。 帰国後、空っぽの部屋で妻が知ることになる真実。 そして、金づるだと思っていた夫が本気で消えた時、彼女たちの人生は一気に崩れ始める――。人生逆転|夫婦|不倫1.5萬字5 2198 -
完結第13話
25年目の自白状
1982年、群馬県安藤市。雑貨店を営む佐藤大吾の9歳の息子・健二が、雨で増水した川のそばで姿を消した。 現場には健二の運動靴が残され、下流では赤い帽子も見つかった。警察は川への転落事故と判断するが、大吾だけは納得できなかった。あの日、黒い車に乗せられた赤い帽子の少年を見たという証言があったからだ。 しかし捜査は進まず、妻の三重子も「私には選択肢がなかった」という謎の言葉を残してこの世を去る。 息子も妻も失った大吾は、それでも25年間、健二の部屋をそのまま残し、帰りを待ち続けた。 そして2007年、差出人不明の黄色い封筒が届く。 そこに書かれていたのは、たった一文。 「あなたの息子は、自分のものではない人生を生きました。」 25年前の川の事故、東京へ消えた黒い車、妻が抱えていた秘密。 すべてがつながった時、父は息子が奪われた本当の理由を知ることになる――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 331 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 1874 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 924 -
完結第13話
16回の拒否
62歳の黒田正は、退職後に始めた一眼レフを手に、地域のハイキングサークルへ参加していた。 「嫌がる人ほど、綺麗に撮ってあげたいんですよ」 そう笑う黒田は、自分の写真が人を喜ばせるものだと信じていた。けれど参加者の高橋みさ子は、何度もはっきり伝えていた。 「SNSには載せないでください」 名前を出さなければいい。綺麗に撮れていれば問題ない。サークル内だけなら大丈夫――黒田はそう考え、みさ子の拒否を自分に都合よく解釈し続ける。 やがて、本人の知らないうちに撮られた写真はSNSへ投稿され、サークルの外にまで広がっていく。 削除しても、もう消えなかったもの。 そして次の集合場所で、みさ子は静かに告げた。 「私は、同じことを16回言いました」 写真の出来ではない。善意かどうかでもない。 「やめてください」という一言を、本当に聞けなかった男が失ったものとは――。人生逆転|修羅場2.0萬字5 123