みかん小説
本棚

"義母介護八年、離婚の夜に捨てられた私の逆転" 第4話

その予は、数に現実になる。

そのの午、隆のでは、すでに獄のような空気が満ちていた。

真美はキッチンにち、顔をしかめていた。いネイルが邪魔で、スプーンを持つつきもぎこちない。彼女が用したのは、級レトルト粥を器に移しただけのものだった。

「おばあちゃん、ちゃんとべてよ。これかったんだから」

真美は苛った声でスプーンを静子さんの元に押しつけた。

静子さんは、見らぬ女の顔をじっと見つめていた。次の瞬、その目に恐怖が浮かんだ。

「誰……あんた誰。棒、棒よ!」

静子さんの腕ががり、真美の頬にスプーンが当たった。

「痛っ! 何すんのよ、このクソババア!」

真美の声が気にくなる。先ほどまでの甘い声は消え、本性がむきしになった。

その声に驚いた静子さんは、さらに混乱した。テーブルの瓶を掴み、力任せに投げつける。

ガシャン。

陶器が割れ、に広がった。

「うわっ、俺のスピーカー!」

隆の鳴が響いた。

には割れた陶器、、粥、そして静子さんが漏らしてしまった臭いが混ざりい、息をするのも苦しいほどだった。

「隆さん、もう無理! 私、こんなの聞いてない!」

真美はバッグを掴み、玄関へ向かおうとした。

「介護なんて、適当に話し相してればいいって言ったじゃない。なんで私が糞尿の世話までしなきゃいけないのよ」

広告

「真美ちゃん、落ち着いてくれ。最初だけだ。慣れれば――」

「慣れるわけないでしょ! 汚い、臭い、最。もう帰る」

隆が慌てて追いかけようとした、そのだった。

玄関のチャイムが鳴った。

ちながらドアをけると、そこにっていたのは、帰ろうとする真美ではなかった。

黒いスーツにを包み、鏡越しに鋭い線を向ける女性。

「田法律事務所の田と申します」

隆の顔が固まった。

「法律事務所……?」

女性は淡々と名刺を差しした。

「静子様の財産管理と、様に関する類について確認に参りました」

? あいつが何をしたんだ」

隆が声を荒げると、田弁護士は眉ひとつかさずに答えた。

「静子様は、まだ判断能力が残っていた期に、公正証を作成されています。そので、様に対し、の介護への謝礼として定の財産を遺贈するを示されています」

「は?」

隆のいたまま止まった。

「母さんの財産は息子の俺のものだろう!」

「いいえ。静子様ご本の財産です」

弁護士の声はたかった。

「また、様はこのの介護記録、医療連絡、支管理、通院記録を詳細に残されています。これらは、静子様の活を実質に支えていた物が誰であったかを示すな資料です」

隆は言葉を失った。

私は何も考えず、ただ黙って介護していたわけではない。

広告

々の記録、領収、ケアマネとのやり取り、静子さんの体調変化。すべて残していた。

それは、自分を守るためでもあり、静子さんを守るためでもあった。

弁護士の背で、真美は顔を引きつらせていた。

「ちょっと、財産って何? 話が違うんだけど」

隆は振り返った。

「真美ちゃん、違うんだ。これは――」

「私、面倒な老と借まみれの男なんて無理だから」

真美は吐き捨てるように言うと、バッグを抱えてった。

残されたのは、散らかった部、暴れる静子さん、弁護士、そして現実を突きつけられた隆だけだった。

方その頃、私はアトリエ佐々しいデザイン案に向きっていた。

スマートフォンには隆からの着信が何件も並んでいた。

けれど私は、それを裏返しにして机に置いた。

もう戻らない。

、私はあのを支えた。

そして今度は、自分のを支える番だった。

真美がったには、苦しい沈黙だけが残った。

には割れた瓶の破片が散らばり、が広がっている。静子さんは部の隅で怯えたように震えながら、「棒よ……棒がいる……」と繰り返していた。

隆は呆然とち尽くしていた。

つい数まで、自分は勝者だとっていた。

介護臭い妻を追いし、若くて綺麗な女性としいを始める。そんな未来を本気で信じていた。

しかし現実は違った。

真美は半も持たなかった。

介護どころか、認症の老とまともに会話することすらできなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: