"切れた数珠の15年" 第7話
15に蓋をされたが、1つずつ引きずりされていった。
判決の、法廷には再びくの傍聴が集まった。
被告席につ真は、かつての華やかな弁護士ではなかった。青いにを包み、頬はこけ、目には焦点がなかった。
裁判は淡々と判決文を読みげた。
「被告は被害者を残酷に殺害し、15にわたり証拠を隠滅し、司法を愚弄した。その罪は極めてい」
そして最に、たい声が響いた。
「無期懲役」
真の膝から力が抜けた。に崩れ落ち、乾いた笑いを漏らした。その笑いには、もう何のも残っていなかった。
判決、は護送を追い、真が刑務所の鉄扉の向こうへ消えるまで見届けた。
い扉が閉まり、鉄の音が響いた。
はその音が完全に消えるまで、そのをれなかった。
数、自由庵帯のリゾート発事業は全面撤回された。
の陽射しが差し込む午、と捜査班の刑事たちは、黒いスーツで自由庵を訪れた。
本堂は解体の途で半分ほど崩れていたが、老尼僧たちが戻り、折れた柱を支え、仮の根をかけ、なんとか形を取り戻していた。
本堂の片隅には、蓮華の写真が置かれていた。
写真のの蓮華は、れやかに微笑んでいた。
は仏にみ、くをげた。
懐から2つのものを取りす。
1つは、蓮華がご本尊の台座に隠していた般若経の写経。
広告
もう1つは、証拠として保管されていた彫りの数珠玉だった。
がそれを仏に置くと、老尼僧たちがゆっくりづいてきた。
最も老いた尼僧が、布の袋を取りした。結び目をほどくと、から彫りの数珠玉がざらざらと現れた。
残りの107個だった。
15、事件現で散らばっていたものを、老尼僧たちは1つずつ拾い集め、ずっと切に保管していたのだ。
老尼僧の震えるが、証拠として戻ってきた1つの玉を拾いげた。
そして、107個の玉と並べた。
1つ、また1つ。
玉が糸に通されていく。
の玉が触れうたび、かすかな音が本堂に響いた。
最の1つが通された、切れていた108個の数珠は、15ぶりに1つにつながった。
老尼僧たちの目から涙があふれた。
も刑事たちも、何も言えなかった。
ただ、蓮華の写真に向かってくをげた。
のが本堂を抜け、軒先の古い鈴を揺らした。
澄んだ鈴の音が、あいのへ広がっていく。
15もの、に葬られていた真実は、ようやくのへ戻ってきた。
血を吐くようないで育ててくれた恩を裏切った男は、すべてを失った。
最まで諦めなかった刑事の執が、無の魂をようやく救った。
は本堂をるに、蓮華の写真をもう度見た。
「遅くなって、すまなかった」
そう呟くと、写真のの蓮華が、しだけ穏やかに微笑んだように見えた。
切れていた数珠が再びつながったその、自由庵のには、久しぶりに静かなのがり注いでいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
特大おにぎりの恩返し
小学4年生の遠足の日、黒川大雅は「お弁当を忘れた」と笑う同級生・浅川亜美に、祖母が握ってくれた特大の梅干しおにぎりを分けた。 けれど、それはただの忘れ物ではなかった。 給食だけが唯一まともに食べられる日もあった亜美。お風呂にも入れず、空腹を隠して笑っていた彼女の事情を知った大雅の家族は、静かに手を差し伸べる。やがて亜美は祖父母の家へ引き取られ、二人は離ればなれになった。 それから20年後。 建設会社の社長となった大雅の前に、再開発予定地にある「こども食堂」を守ろうとする一人の女性が現れる。 その名は、浅川亜美。 あの日のおにぎりは、ただ空腹を満たしただけではなかった。祖母の優しさと、一人の少女の人生を変えた記憶は、20年の時を越えて、思いがけない形で大雅の前に戻ってくる――。人生逆転|真相2.0萬字5 17 -
完結第13話
25年目の自白状
1982年、群馬県安藤市。雑貨店を営む佐藤大吾の9歳の息子・健二が、雨で増水した川のそばで姿を消した。 現場には健二の運動靴が残され、下流では赤い帽子も見つかった。警察は川への転落事故と判断するが、大吾だけは納得できなかった。あの日、黒い車に乗せられた赤い帽子の少年を見たという証言があったからだ。 しかし捜査は進まず、妻の三重子も「私には選択肢がなかった」という謎の言葉を残してこの世を去る。 息子も妻も失った大吾は、それでも25年間、健二の部屋をそのまま残し、帰りを待ち続けた。 そして2007年、差出人不明の黄色い封筒が届く。 そこに書かれていたのは、たった一文。 「あなたの息子は、自分のものではない人生を生きました。」 25年前の川の事故、東京へ消えた黒い車、妻が抱えていた秘密。 すべてがつながった時、父は息子が奪われた本当の理由を知ることになる――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 331 -
完結第8話
天井裏の元彼
2012年、福岡市の古いワンルームで一人暮らしを始めた小林里奈。 束縛の激しかった元恋人・山田誠と別れ、ようやく自由な生活を取り戻したはずだった。ところがその直後、誠は突然行方不明になる。 数か月後、里奈の部屋で奇妙な出来事が起こり始めた。 冷蔵庫の食べ物が少しずつ消え、置いたはずの物が別の場所へ移動する。夜になると、誰もいないはずの天井から、何かが這うような音が聞こえてくる。 警察も管理会社も、友人も、誰も里奈の言葉を信じなかった。 「疲れているだけ」 「気にしすぎだ」 そう言われ続けた里奈は、自分の記憶さえ疑い始める。 やがて彼女は、その部屋を逃げるように去った。 しかし2年後、寝室の天井裏から発見されたものが、里奈の恐怖が妄想ではなかったことを証明する。 あの夜、彼女が見上げていた天井の向こうには、確かに“誰か”がいた――。ミステリー|真相|行方不明1.1萬字5 1442 -
完結第11話
消えた父子の23枚
2017年3月、奥多摩の山中で、元消防士の伊藤大輝と生後8か月の赤ん坊が跡形もなく姿を消した。 父子は遭難したのか。それとも、誰かから逃げていたのか。遺体も手がかりも見つからないまま、事件は6年の時を経て忘れられようとしていた。 しかし2023年、地質調査に訪れた大学生2人が、岩の隙間から古いデジタルカメラを発見する。そこに残されていたのは、赤ん坊を抱く父親の写真と、背後から近づく不審な人影だった。 さらに調査を進めるうち、2人は「伊藤ハルト」という名前を消され、「鈴木湊」として生きる青年にたどり着く。 彼は本当に、6年前に消えた赤ん坊なのか。 そして大輝が命をかけて守ろうとした“真実”とは何だったのか。 1台のカメラが、封じられた過去と、血よりも深い父の愛を静かに暴き出していく。ミステリー|真相1.6萬字5 1317 -
完結第10話
21年目の誤公式
アメリカの名門大学を訪れた8歳の日本人少女・桜井ひなは、ロビーに掲示されていた有名な物理公式の前で、ふと足を止めた。 21年前から大学の象徴として飾られ、多くの教授や学生が見過ごしてきたその数式。だが、ひなには右下の一部だけが、どうしても「変な音」に聞こえた。 「ここ、間違っているかもしれません」 勇気を出して指摘した少女に返ってきたのは、困ったような笑顔と小さな笑い声だった。子どもだから、外国から来た見学者だから――誰も本気で耳を傾けようとはしなかった。 それでもひなは、亡き祖父から教わった“数字の音”を信じ、ホテルの小さな机で1枚の紙を書き上げる。 翌日、その紙が教授室へ届いた時、大学の空気は一変した。 21年間、誰も気づかなかった誤り。教授たちが凍りついた真実。そして、大人たちの思い込みを静かに揺さぶった少女の小さな声。 これは、笑われても自分の違和感を手放さなかった8歳の少女が、名門大学に残された“21年ぶりの真実”を動かす物語。真実|真相1.4萬字5 660 -
完結第11話
湯殿床下の女将日記
1999年、銀山温泉の老舗旅館「白糸屋」で、女将・鍛原沢子が忽然と姿を消した。 部屋は整えられ、財布も草履も残されたまま。争った跡もなく、まるで朝霧に溶けたように、彼女だけが消えていた。 夫を亡くしてから10年、たった1人で旅館を守ってきた沢子。だが失踪の数日前、東京から来た見知らぬ男と長く話し込み、その後、彼女の顔は真っ青になっていたという。 捜査は進まず、白糸屋はやがて閉ざされた。 それから6年後、取り壊しが決まった旅館の湯殿の床下から、油紙に包まれた一冊の帳面と銀色の帯留めが見つかる。 そこに残されていたのは、沢子が誰にも言えなかった苦しみと、息子の名前。 そして、40年以上湯殿を守ってきた三助の老人だけが知る、霧の朝の本当の出来事だった――。ミステリー|真相1.6萬字5 638 -
完結第11話
夫の顔と20年目の罪
8歳の事故で母と光を失った桜田はるかは、暗闇の中でピアノだけを支えに生きてきた。 父の死後、叔父に勧められるまま結婚した相手は、名門病院の跡取り息子・桜田真一。寡黙ながらも優しく、毎日花束を贈ってくれる夫を、はるかは心から信じていた。 そしてある日、20年待ち続けた角膜移植手術の順番が回ってくる。 初めて夫の顔を見られる――。 そう思って迎えた包帯を外す日。眩しい光の中で、はるかの前に立っていたのは、愛していたはずの夫とはまるで違う男だった。 「あなたは誰?」 病室に凍りつく空気。夫を名乗る男、黙り込む周囲、そして誰もが隠していた結婚の嘘。 やがてはるかは、20年前の事故と、ガーベラに隠された本当の意味へとたどり着いていく。人生逆転|夫婦|真相1.7萬字5 1306 -
完結第11話
20年目のマネキン
2002年、モデルを夢見て新潟から東京へ出てきた22歳の加藤リナは、ある日、中堅モデル事務所「神聖モデルズ」からキャスティングの連絡を受ける。 小さな仕事を重ねながら、ようやく掴めそうになった大きなチャンス。リナは期待を胸に新宿の事務所へ向かうが、面接の途中で案内された小道具室に、言いようのない違和感を覚える。 午後5時、リナは友人に電話をかけた。 「変な部屋にいるの。薬品みたいな匂いがする」 それが、彼女からの最後の連絡となった。 警察の捜査でも、リナがビルを出た記録は見つからなかった。事務所のオーナーは「彼女は帰った」と証言し、事件は証拠のないまま時間だけが過ぎていく。 そして20年後。 古い事務所の移転作業中、清掃員が小道具室の奥に置かれた“1体のマネキン”に異変を見つける。 剥がれたラテックスの下から現れたものは、誰も想像していなかった真実だった。 夢を追って東京へ来た若い女性は、あの日、本当に事務所を出ていたのか。 そして20年間、部屋の隅で沈黙していた“マネキン”の正体とは――。ミステリー|真相|行方不明1.6萬字5 1038 -
完結第11話
8年目の松林
昭和57年、岡山県美作地方の小さな農村に、若い女性教師・松本美子が赴任してきた。 都会から来たばかりの彼女は、慣れない村の暮らしに戸惑いながらも、子どもたちに真っ直ぐ向き合い、少しずつ教室に居場所を見つけていく。 しかし、村は思っていたほど穏やかな場所ではなかった。 先輩教師の嫉妬、教頭からの不自然な呼び出し、贈り物を断られた保護者の怒り、下宿先での小さな金銭問題。美子の周囲には、静かな違和感が積み重なっていた。 そして昭和57年10月12日。 美子はいつも通り学校へ向かったまま、忽然と姿を消す。 荷物は下宿に残されたまま。日記には「明日も笑顔で学校に行く」と書かれていた。だが警察は、やがて彼女の失踪を“自ら姿を消した可能性”として扱い始める。 それから8年。 大人になった教え子たちが同窓会で語り出した、あの日の記憶。 校長室から聞こえた泣き声。 松林で見た先生の姿。 そして、夕暮れの中で土を掘っていた誰かの背中。 子どもたちの小さな証言が、8年間沈黙していた村の真実を掘り起こしていく――。ミステリー|真相1.6萬字5 495 -
完結第14話
消えた花嫁の名札
1999年、スクラッチくじで5000万円を当てた看護師姉妹。 妹の美緒は結婚を控え、幸せの絶頂にいた。だがある夜、彼女は突然姿を消す。部屋には白いスニーカー、コンタクトレンズ、結婚指輪が残されたまま。姉の詩織は落ち着いた声で失踪届を出したが、担当刑事はその態度に小さな違和感を覚える。 「本人だけが知るはずの服装」 その一言を、刑事は8年間忘れなかった。 やがて美緒は法的に“いない人”となり、当選金の行方も静かに変わっていく。 そして8年後。病院の地下倉庫から、古びたネームプレートが発見される。 そこに刻まれていた名前は――苅田美緒。 左胸に残された小さな名札が、封じられていた姉妹の秘密を再び地上へ引き戻す。ミステリー|真相2.2萬字5 660