"柿の木の下の息子" 第2話
「そうです」
聖太郎はうなずいた。
「あの子がに来てくれたんです」
川は帳をく。
「詳しく聞かせてください」
聖太郎は記憶をたどるように目を閉じた。
「純也がいなくなってかくらい経った頃でした」
「あの子が突然やって来て……」
――おじさん。
――純也を待つでを植えませんか。
――純也は柿が好きだったでしょう。
――帰ってくる目印になりますよ。
聖太郎の声が震える。
「私は嬉しかったんです」
「本当に嬉しかった」
「純也を覚えていてくれるがいたんだとって……」
涙が頬を伝った。
「太は優しい子でした」
「穴も掘ってくれた」
「苗まで持ってきてくれた」
川は無言のままメモを取る。
しかしのでは警報が鳴っていた。
に穴を掘った。
被害者の友。
遺体発見所。
全てが本の線で繋がり始めていた。
「その、のに何か気付きませんでしたか」
聖太郎は首を振った。
「何も……」
「本当に何も見ていません」
「もしっていたら……」
聖太郎は顔を覆った。
「自分の息子があんな所に埋まっているなんて……」
嗚咽が漏れる。
川は帳を閉じた。
そして静かにちがる。
「ありがとうございました」
部をる直、川は振り返った。
夕が窓から差し込み、聖太郎の背を赤く染めている。
その姿はあまりにも痛々しかった。
だが刑事としての勘が告げていた。
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事件は今、きくき始めている。
そしてそのにいるのは――
佐藤太だった。
は。
。
の公民館は異様な気に包まれていた。
演が音量で流れ、たちの笑い声が響く。
今はの誇り、純也の医学部格を祝う宴のだった。
公民館の央には純也が座っている。
顔は酒で赤く染まり、何度もをげていた。
「おめでとう!」
「医者になったらを頼むぞ!」
「いやあ、派になったな!」
祝福の声が次々とぶ。
純也は照れ臭そうに笑った。
「ありがとうございます」
「まだ格しただけですから」
その隣では父の聖太郎が目を押さえていた。
牛を売り、借をしてまで支えた息子。
ようやくへの第歩を踏みしたのだ。
母の純子もエプロンで涙を拭っていた。
しかし。
宴会の片隅には全く違う空気が流れていた。
佐藤太。
歳。
純也より歳。
同じく医学部を目指していた青だった。
だが太は今も格だった。
浪活は目。
机のには酒が置かれている。
しかしほとんどを付けていない。
太はただ黙って純也を見つめていた。
笑顔もない。
祝福の言葉もない。
指先だけが静かに震えていた。
その様子を厨から見ていた物がいる。
松子だった。
代の女性で、公民館の伝いをしていた。
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松子はおでんの皿を運びながら太を見た。
そして違を覚える。
太の線だった。
それは友を見る目ではなかった。
羨望。
嫉妬。
憎悪。
様々なが入り混じったような目だった。
松子はわずを止めた。
だがすぐに宴会の喧騒にかき消される。
夜過ぎ。
宴会はおきになった。
たちは酔った取りで帰宅を始める。
純也も席をった。
「それじゃあ失礼します」
そう言ってへ向かう。
するとろから声がんだ。
「純也」
振り返ると太がっていた。
「し付きえよ」
純也は笑った。
「いいよ」
「久しぶりだしな」
太も笑みを作る。
だがその笑顔はどこかかった。
は並んで公民館をる。
たい夜が吹いていた。
灯もない。
の背はゆっくりとのへ消えていく。
その姿を見送ったたちは誰も気に留めなかった。
幼い頃から兄弟のように育った。
また酒でもみにくのだろう。
誰もがそうった。
だが――
それがたちが見た、純也の最の姿だった。
〇〇。
純也の骨遺体が発見されてから数。
秩父警察署では、川真司警部補がの関係者をずつ呼びし、改めて事聴取をめていた。
その、取り調べに現れたのは松子だった。
歳になった彼女は、両を膝ので握りしめながら子に腰をろした。
川は湯みを差しし、静かに声をかける。
「さん。何かいしたことがあるそうですね」
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