"録音機が暴いた息子の本音" 第2話
「どんな話なの」
「あら、それはいらしてからのお楽しみですよ。曜の夕方、お待ちしていますね」
話は方に切れた。
背で斎の扉がいた。茂が老鏡をかけたままっていた。その顔には血の気がなかった。
「誰からだ」
「霞さんよ。週末、が事な相談があるから来てほしいって」
老鏡が夫のから落ちた。
夫は話の向こうにある何かを見たように、青ざめた。そこにあったのはりではない。純粋な恐怖だった。
「俺はかない」
夫はよろめきながらずさった。
「絶対にかない。週末は忙しい。登の約束がある」
嘘をまともについたことのない男の拙い言い訳だった。子は胸が締めつけられるのをじた。
息子が呼んでいる。ただそれだけなのに、なぜ父親がここまで怯えなければならないのか。
子ので、ひとつの確信が形になった。
息子のは、夫にとってらぎの所ではない。
獄になっている。
話から週末までの3は、30のようにかった。
茂は斎からほとんどてこなかった。子が事を盆にのせて扉のに置くと、しばらくしてつかずの器だけが戻された。それが唯の確認だった。
子の疑いは、嫁の霞に向いていた。
が結婚相として霞を連れてきた、子は息子の選んだ相だからと信じようとした。
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博士号を持ち、流企業に勤めるしっかりした女性。その落ち着きが頼もしく見えた。
だが、そのしっかりさはたさでもあった。
、茂の誕に霞がへ来たのことだ。彼女は卓でにこやかに言った。
「お義父さん、お義母さん、このマンション、お2にはし広すぎませんか。3部も必ないですよね。管理費も修繕積ももったいないですし、私たち夫婦がまわせていただければちょうどいいんですけど」
が肘で制しても、霞は平然としていた。
「老の資はちゃんと準備されていますか。今どき子どもに頼るなんて代遅れですから」
その言葉は、刃だった。
子はその、この嫁はと計算以、何も信じていないなのだと悟った。
きっとの事業資をせと言われたのだろう。マンションの名義を譲れ、担保にしろと迫られたのだろう。夫は実の息子から侮辱な求を聞かされ、崩れてしまったのだ。
だが、どう確かめるのか。
茂は絶対にを割らない。実の子にで脅されたなど、妻に打ちけるくらいならを選ぶ男だ。
その夜、テレビで齢者の財産問題を扱う番組が流れていた。茂はぼんやり画面を見ていたが、やがてちがり、寝のタンスをけた。週末に着る濃紺のスーツを取りし、丁寧にほこりを払っている。
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く決をしたのだ。
子は寝の壁に背を預けた。
このまま、無防備なまま夫を送りすわけにはいかない。
その、のに禁じられた考えが浮かんだ。
録音。
翌朝、子は「体が混むから朝1番でってくる」と嘘をつき、バスで気へ向かった。裏通りのさなで、若い員に声をかけられた。
「何をお探しですか」
「録音できるもの。すごくさいもの」
員が差ししたのは、指の先ほどの属の塊だった。
「ボイスレコーダーです。ボタン1つで録音できます。丸2は持ちますよ」
帰宅すると、茂は浴にいた。寝のハンガーには、あの濃紺のスーツがかかっている。息子にみすぼらしい姿を見せたくないという、夫の最の誇りだった。
子は震えるで着を取った。
夫の匂いと鹸のりがした。その常な匂いに、涙がにじんだ。
「茂さん、ごめんね。あなたを救うためなの。1度だけ、あなたを騙すわ」
子は録音のスイッチを入れ、内ポケットの奥、縫い目のへ押し込んだ。
その、浴のドアがく音がした。
子は慌ててを引き、シャツの襟を直すふりをした。湯気をまとった夫は、彼女の審なきに気づかなかった。気づく余裕などなかったのだ。
夫の目は、スーツだけを見つめていた。
「アイロンをかけておいてくれ」
「ええ」
子は震える声で答えた。
そのさな属は、獄のふたをける鍵だった。
曜の朝、のには張り詰めた空気が満ちていた。
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