みかん小説
本棚

"雨の美容室ローズ" 第9話

その会社はく続かず、やがてかなくなりました。

さんはくの借を抱え、すべてを失いました。

それからの暮らしは、転落の途でした。

仕事を点々とし、まいも定まらず、族もなく、寄りもなく、都会の片隅でひっそりと暮らしていたようです。

そして事件のあった2003頃、誠さんはい病にかかっていました。

医者からは、もうくはないと告げられていたのです。

頼る族もなく、取ってくれる者もなく、誠さんはたった1い余命をきていました。

おそらくその、誠さんの胸に浮かんだのは、い昔の故郷の景だったのでしょう。

あいの

を張った棚田。

田んぼに映る空の青。

そして、いずれ夫婦になるはずだった髪結いの娘、しず子さんの若いの笑顔。

にして、誠さんはたった1つの願いを抱いたのです。

に、もう1度だけあのに会いたい。

は、誠さんがどのようにして、しず子さんの居所を探し当てたのかも突き止めました。

さんはわずかながかりを頼りに、しず子さんが川で美容を営んでいることを探し当てていたのです。

そして、あのの夕方。

さんは紺着を着て、傘も差さずにに濡れながら、ローズの赤い庇のの戸をけました。

ぶりかの再会でした。

広告

向かいの本さんが見た、刻そうに話し込む2の姿。

それは、何もの歳を隔てて再び巡りった、かつての恋同士が、それぞれの過ぎし々を静かに語りう姿だったのです。

美佐さんはその話を聞きながら、止めどなく涙を流していました。

「母さんに、そんながいたなんて……私、全然らなかった」

はそんな美佐さんに、そっと言いました。

「お母さんは、きっと誰にも言わなかったのでしょう。胸の奥にずっとしまっておいた、若い切なとして」

だからこそ、しず子さんはあの男の常連カードを作らなかった。

写真を撮るまでもなく、よくった相だったからです。

けれど、から見つかったあの写真は、ただの記録ではありませんでした。

おそらく、再会の記に撮った1枚だったのでしょう。

痩せて、青く、ぎこちなく笑う誠さん。

そして写真の裏にかれた「田さん 福島」という文字。

それは単なる覚えきではありませんでした。

い福島から自分に会いに来てくれた若きの許嫁の名を、しず子さんがおしむようにき止めたものだったのです。

謎の輪郭は、ほとんど見えていました。

けれど、まだ肝なことが分かっていませんでした。

そのの夕方、再会した2はそのどうなったのか。

なぜ、しず子さんはけたまま、財布も置いたまま姿を消したのか。

広告

そして2は今、どこにいるのか。

の、そしてきな謎がまだ残されていました。

福島のでの聞き込みを終えて、と美佐さんは川へ戻りました。

2には、10にはなかった確かながかりがありました。

の客の正体は、しず子さんの若きの許嫁、田誠

病を抱え、くあてもないで、目会いたいと、はるばる福島から訪ねてきた男。

けれど、まだ肝の謎が残っていました。

あのの夕方、再会した2はそのどうなったのか。

はもう度、10の捜査資料を丁寧に読み返しました。

そして改めて、ある点に引っかかりを覚えました。

「美佐さん。10、お母さんが消えた晩のことですが、1つ妙なことがあるんです」

は、古い資料を指しながら言いました。

「お母さんのです」

……」

「あの当、ローズの裏に、お母さんが買い物などに使っていた軽自がありました。ところが、お母さんが消えた朝、そのもなくなっていたんです」

美佐さんは、息をのみました。

も……?」

「ええ。当はそれほどく見ていませんでした。お母さんがそのでどこかへかけたのだろう、くらいに考えていた。けれど、そのもお母さんと同じように、それきり見つからなかった。10、1度もです」

の目が鋭くりました。

「考えてみてください。

財布も置いたまま、けたまま、お母さんはていった。けれどは持っていった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: