"白いワンピースの帰還" 第2話
桜はいワンピースにサンダル姿で、にはお菓子の袋を持っている。
その、桜は景品コーナーのに入っていく。
だが、そこで映像は途切れた。
美咲が棚の方へ目を向けたには、桜の姿はもうどのカメラにも映っていなかった。
カメラには角がかった。柱の裏や通の向こう側は瞬しか映らず、トイレの映像も画質が荒く、輪郭がぼやけていた。
桜が1でにる様子は、どの映像にも残っていない。
美咲は同じ面を何度も見返した。
「このあと、どこへったの……」
そのつぶやきは、事務所のい空気のに沈んでいった。
駐のカメラも調べられた。
正面入とにそれぞれカメラがあり、の入りは映っていた。だが、そこにも子どもの姿はない。いワンピースのは、どこにも見当たらなかった。
警察は、内の映像を刻ごとに照らしわせた。
美咲と桜がカウンターにいた。
久志が景品交換を終えた。
美咲が員に声をかけた。
それぞれのきは残っている。
だが、桜だけが突然いなくなる。
映像にてこないきが、どこかにあった。
美咲はの入を何度も往復した。久志は駐の端から端まで歩いた。の、隣の舗との、ゴミ箱の裏、さな植え込み。どこを探しても、桜の姿は見つからない。
広告
員の1が美咲に声をかけた。
「何かお探しですか?」
美咲は顔をげ、声を絞りした。
「子どもがいなくなったんです」
員はすぐに事務所へり、のスタッフへらせた。内放送でも桜の名が呼ばれた。
しかし、反応はなかった。
駐にはたいが吹き始めていた。久志は入を振り返り、の流れを確認し続けた。客たちは巻きに様子を見ていたが、誰も桜の方をらなかった。
計の針がむたび、美咲の焦りはくなった。
そして15分、美咲は公衆話から警察へ話をかけた。
1758分。
それが、最初の通報だった。
「娘がいなくなりました」
美咲の声にはい焦りがにじんでいた。話の向こうで、警察官が所、名、子どもの特徴を確認する。
いワンピース。
6歳。
サンダル。
お菓子の袋を持っていた。
美咲は何度も同じことを繰り返した。
警察が現へ到着した、美咲は駐の端にち尽くしていた。久志はので携帯話を握りしめていた。
警察官はまず、族から事を聞き取った。
桜の名、齢、装、髪型、持ち物。
美咲は震える声で説した。
「いワンピースで、バッグを持っていました。さっきまで、私のすぐそばにいたんです」
員にも確認が取られた。数が、カウンターで桜を見たと答えた。レジくの女性員は、グミをにっていた桜を覚えていた。
広告
だが、その、へていくところを見たはいなかった。
内はざわつき始めた。
しかしパチンコ台の音だけは、何事もなかったように鳴り続けていた。
が完全に落ちてからも、捜索は続いた。
警察はの周囲だけでなく、くのや建物にもを伸ばした。駐をてすぐの歩、その先にある横断歩までの細い、むら、自販売の裏、さな公園の入。
どこにも桜はいなかった。
内とに設置された12台の防犯カメラは、警察によって順番に見直された。美咲と桜が並んで歩く姿。しれた美咲が財布を持ち直す様子。桜が1でお菓子売りへ向かう面。
そこまでは、はっきり残っていた。
しかしその、桜は柱のに入り、きが見えなくなる。
警察が気にしたのは、カメラごとの刻のずれだった。映像によって1分から2分の誤差があり、美咲が「ここで消えた」と話すと、映像の表示が完全には噛みわない。
さらに久志は、このに景品交換を終えてカウンターからたと証言していた。だが映像と照らしわせると、そこにも1分ほどのい違いがあった。
美咲が桜を呼ぶ声も、記録には残っていない。内の音がきすぎて、さな声はすべてかき消されていた。
警察は、柱の裏や景品コーナーの奥を繰り返し調べた。
美咲と桜がれた所のすぐ横に、その柱はっていた。そこから先のきは、どのカメラにも映らない。
駐の映像も確認された。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
雨の美容室ローズ
2003年、埼玉県川口市の古い商店街で、美容室「ローズ」を1人で営んでいた宮下しず子が、雨の朝に突然姿を消した。 店の明かりはついたまま。床には切ったばかりの髪が落ち、ハサミと櫛は使いかけのまま置かれていた。レジの金も財布も残され、争った跡もない。 まるで、誰かの髪を切っている途中で、店主だけが雨に溶けるように消えてしまったかのようだった。 警察が追ったのは、前日の夕方に店を訪れた見知らぬ男。痩せて背が高く、雨に濡れたままローズへ入っていった「あの日の客」だった。 しかし男の名前も行方も分からず、事件は迷宮入りする。 それから10年後。 取り壊されることになった美容室の床下から、古い予約帳と一枚の写真が見つかる。そこに写っていたのは、かつて誰も正体をつかめなかった最後の客。 写真の裏には、しず子の筆跡でただ一言、こう書かれていた。 「金田さん 福島」 10年前の雨の夜、しず子はなぜ店を開けたまま姿を消したのか。 そして、最後の客と彼女の間に隠されていた古い約束とは――。ミステリー|真実1.7萬字5 0 -
完結第5話
消えた教師と127番の鍵
1997年、北アルプスで単独登山をしていた小学校教師・佐藤幸恵が、忽然と姿を消した。 リュックも靴も水筒も見つからず、まるで山に吸い込まれたかのように消えた彼女。家族は必死に捜し続けたが、手がかりは何ひとつ残されていなかった。 それから2年後。 秋の渓谷で、登山客が岩の間に挟まった小さな紫色の小銭入れを発見する。中に入っていたのは、幸恵の身分証明書、謎の鍵、そして破れた一枚のメモだった。 そこに震える文字で書かれていたのは―― 「私はこの山に1人ではなかった」 彼女は本当に単独登山中に遭難したのか。 それとも、山にはもう1人、誰かがいたのか。 小銭入れに残された127番の鍵が、2年間眠っていた真実の扉を開いていく。ミステリー|真実7.5千字5 0 -
完結第6話
秩父の森に残された映像
2003年、卒業課題のために秩父山中へ向かった5人の大学生が、森の奥で忽然と姿を消した。 彼らが調べようとしていたのは、管理区域外で夜ごと聞こえるという重機の音と、地図にない工事現場の噂。ビデオカメラ、GPS、無線機を持って森へ入った5人は、やがて人の気配が消えたはずの山中で、不自然な構造物と誰かに見張られているような視線を感じ始める。 そして最後の夜。 暗闇の中で響いた悲鳴、壊された車、森の奥へ消えていく仲間たち。翌日発見されたのは、傷を負い、怯えきった1人の生存者だけだった。 事件は山岳事故として処理されかけ、4人の行方は分からないまま時だけが流れていく。 しかし7年後、秩父の山中で発見された1台のビデオカメラが、封じられていた真実を再び呼び覚ます。 そこに映っていたのは、ただの遭難では説明できない、森の奥に隠された“誰かの罪”だった――。ミステリー|行方不明9.2千字5 6 -
完結第8話
赤城山に消えた幸
2005年春、群馬・赤城山の山開きに参加した52歳の女性・木村幸が、下山中に忽然と姿を消した。 最後に彼女と一緒にいたのは、山岳会の登山リーダー・田中健二。彼は「彼女は先に下りた」と証言したが、幸は打ち上げ会場にも、自宅にも戻らなかった。 警察、消防、山岳救助隊による大規模な捜索が行われたものの、足跡も所持品も見つからない。まるで山の中で、彼女だけが消えてしまったかのようだった。 それから1年後。 赤城山の麓にある廃山荘のリフォーム工事中、古い浄化槽の中から人骨が発見される。そばには登山靴、指輪、壊れた携帯電話。 山で消えたはずの女性は、なぜ登山道から離れた廃山荘にいたのか。 そして、彼女の最後を知っていた人物は誰だったのか――。ミステリー|真実1.1萬字5 119 -
完結第5話
青い門扉の三つ子
1992年12月、名古屋の静かな路地で、5歳の三つ子の兄弟が一夜にして姿を消した。 寝かしつけたはずの布団は空になり、玄関はわずかに開いていた。外部の男による誘拐、近所の不審者、曖昧な目撃証言――捜査は何度も別の方向へ揺れたが、決定的な手がかりは見つからないまま、事件は未解決のまま時の中へ沈んでいく。 しかし、20年後。 かつて祖母が住んでいた青い門扉の家の解体工事中、地面の下から小さな骨が見つかる。 長い沈黙を破るように現れた真実。 孫を誰よりも可愛がっていたはずの祖母は、あの夜、本当は何をしていたのか。 20年間、土地だけが覚えていた三つ子失踪事件の真相が、ついに明らかになる。ミステリー|真実7.0千字5 46