"桜を連れて消えた妻" 第2話
1目が女の子でも、2目が男の子ならいい。
つまり、今ここにいるこの子だけではりない。
そういうことだった。
健はそのでさく言った。
「やめろよ」
けれど、それは妻を守る声ではなかった。ただ、そのの会話をく終わらせるための声だった。
義母はすぐに笑った。
「あら、そんなじゃないのよ」
私は何も言わなかった。
言えなかったのではない。言っても無駄だと分かったからだった。
午になり、助産師さんが娘を連れてきてくれた。
「抱いてみますか」
私は頷いた。
初めて自分の腕に抱いた娘は、信じられないくらい軽く、信じられないくらい事だった。
この子を守ろう。
そうった。
その、私は恐ろしいことに気づいた。
自分の幸せより先に、この子を守らなければと考えている自分がいた。
まだまれたばかりなのに、もう守らなければならない。
その予が胸の奥に静かに広がった。
退院の、はよくれていた。産ののが嘘のようだった。
健はをし、義母も緒に来た。私は部座席で娘を抱き、窓のを見ていた。
信号でが止まった、義母がの席からふいに言った。
「でもまあ、次は男の子だといいわね」
内が静まり返った。
私はその言葉を聞いた瞬、体ののどこかがすっとえていくのをじた。
先の言葉を、義母はまだらない。
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けれど、ったところでこのは何を言うのだろう。
そんなことを、ぼんやり考えていた。
健はハンドルを握ったまま、何も言わなかった。
私は胸に娘を引き寄せ、そのさなぬくもりだけを確かめた。
この子がいる。
それだけでいい。
そうい込もうとした。
けれど、そのから始まるものが幸せだけではないことを、私はもう々気づいていた。
誰もきな声では責めない。
誰もひどい言葉は使わない。
けれど、笑顔のままを追い詰めるやり方が、このには確かにあった。
そして私は、その真んに、これから何もたされることになる。
娘に「桜」と名付けたのは、退院して3のことだった。
その名をにするだけで、の空気がし柔らかくなる気がした。
健も文句は言わなかった。
「いい名だな」
それだけ言って、娘の寝顔を見ていた。
その頃の私は、まだ信じようとしていた。
このは父親として、きっとこの子をしてくれる。
義母の言葉はあっても、夫さえそばにいてくれれば、なんとかやっていける。
そういたかった。
けれど、活が始まって1ヶもすると、さな違が増えていった。
義母は々に来て、事を伝ってくれた。ありがたいはずなのに、そのたびに私は息が詰まった。
「桜ちゃん、本当にいわね」
そう言いながら、義母はいつも最に言した。
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「でも、顔ちは健に似てるのに、性別だけは惜しかったわね」
私は笑わなかった。
笑える言葉ではなかったからだ。
それでも義母は冗談のように言うので、そのの空気だけは壊れなかった。
壊れないからこそ、余計に逃げがなかった。
桜が半を過ぎた頃、夜泣きがひどくなった。
私はほとんど眠れず、昼も夜も分からないまま娘を抱き続けた。
健は「仕事が忙しい」と言い、別の部で寝るが増えた。
「起こされるとに響く」
1度そう言われてから、私は何も頼めなくなった。
朝になっても、ぼんやりしたで洗濯をして、事の支度をした。桜がやっと寝たとうと、今度は義母から話が来た。
「体はもう丈夫なの?2目のことも、そろそろ考えないとね」
私は受話器を握ったまま、しばらく声がなかった。
先から聞いていますよね。
そう言いかけて、やめた。
健がどこまで族に話したのか、私はらなかった。ただ、もし伝えていたとしても、義母が諦めるとはえなかった。
「まだ若いんだし、昔のはもっと産んだのよ」
義母は悪気のない声でそう言った。
悪気がないからこそ、言われるたびにがすり減った。
その夜、私は健に聞いた。
「お義母さんに先の話をしたの?」
健はネクタイをしながら、ぶっきらぼうに答えた。
「したよ」
「じゃあ、どうしてあんなことを言うの?」
私がそう聞くと、健は面倒そうにため息をついた。
「寄りの言うことなんて、いちいち気にするなよ」
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