"八年目のインタビュー" 第3話
そこでたな事実がてきた。
正弘は1998末に期退職していた。
退職、が変わったようになった。
同僚との付きいも減り、自宅に閉じこもることが増えていたという。
順満帆だった。
その歯がしずつ狂い始めていた。
そして刑事たちは、さらにな資料を発見する。
それは失踪夜の通話記録だった。
署へ戻った渡辺は、古い通話記録を調べ直していた。
そこで目が止まる。
失踪当の午347分。
正弘から純子へ発信。
通話2分34秒。
渡辺は資料を見つめた。
違があった。
「おかしいな」
斎藤がづく。
「どうしました」
渡辺は通話記録を指差した。
「同じにんでいる夫婦だぞ」
斎藤もすぐに気づいた。
「確かに」
失踪当のけ方。
夫婦は同じ根のにいた。
それなのに話をしている。
しかも2分以。
さらに問題は別にあった。
正弘は当の供述でこう話している。
『妻がかけたことには気づかなかった』
しかし実際には話をしている。
気づかなかったはずがない。
供述と事実が正面から衝突していた。
渡辺は8の調を読み返した。
当の捜査官は記録の横にこういていた。
『特になし』
それだけだった。
斎藤はを抱えた。
「見落としてたんですね」
渡辺は頷く。
「しかも番な部分をな」
そこへしい報も届いた。
広告
融関の記録だった。
純子は失踪の2、自分名義で700万円を引きしていた。
送先は甥の鈴健太。
事業に失敗し、額の借を抱えていた物だった。
斎藤が資料を見ながら言う。
「700万円ですか……」
渡辺は子にもたれた。
「夫婦のトラブルの能性がてきた」
退職。
銭問題。
夫婦関係の悪化。
そして失踪夜の解な話。
点だった報がしずつ線になり始めていた。
渡辺はファイルを閉じた。
「まずは鈴健太から話を聞こう」
窓のでは夕暮れが始まっていた。
8眠っていた事件が、ゆっくりと真実へづいていた。
鈴健太は、純子の甥だった。
事件当歳。
現は歳になっていた。
静岡郊のさな自備で働いている。
渡辺と斎藤がを訪ねたのは、梅入りの蒸し暑い午だった。
油の匂いが漂う作業の奥で、健太は黙って話を聞いていた。
「伯母さんの件ですか……」
刑事たちが頷く。
健太はしばらく黙り込んだ。
そして観したようにをいた。
「いつか来るとってました」
渡辺が静かに尋ねる。
「百万円について聞きたい」
健太はく息を吐いた。
「全部、本当です」
当、健太は古販売事業に失敗していた。
借は百万円以。
消費者融からの督促も始まっていた。
そんなに助けてくれたのが純子だった。
広告
「伯母は昔から優しいでした」
健太の目が赤くなる。
「親にも言えなかった借を打ちけたら、『はやり直せる』って」
百万円のうち百万円は借返済。
残りは再発資だった。
振込記録も残っている。
渡辺は資料を見ながら尋ねた。
「正弘さんはっていた?」
健太の顔が変わった。
数秒の沈黙。
そしてさく頷く。
「ってました」
「いつった?」
「振込の翌です」
その瞬、渡辺と斎藤は顔を見わせた。
振込の翌。
それは純子が失踪するだった。
「どんな反応でしたか」
健太は拳を握った。
「鳴ってました」
の空気がくなる。
「伯父さんがに話してきたんです」
『おにを渡したのか!』
『勝なことをしやがって!』
『あれは俺たちの老資だぞ!』
受話器越しに鳴り声が聞こえた。
純子も泣いていたという。
その証言はたな種となった。
失踪直。
夫婦は銭問題で激しく対していた。
そして翌。
純子は姿を消した。
健太の証言を受け、刑事たちは再びの資料を洗い直した。
するとつの事実が浮かびがる。
失踪から。
正弘は純子の失踪宣告を申請していた。
法律の失踪宣告。
庭裁判所が認めればとみなされる制度だ。
そしてその。
正弘は命保険を受け取っていた。
額は千百万円。
斎藤は眉をひそめた。
「失踪宣告だから法です」
渡辺も分かっていた。
だが胸の奥がざわつく。
保険受け取り。
正弘は宅ローンを完済し、級を購入していた。
広告
おすすめ作品
-
完結第8話
鳴らなかったホイッスル
1988年、紅葉シーズンの箱根峠で、23歳の女性バスガイド・高橋美咲が突然姿を消した。 乗客確認のために濃い霧の中へ降りた彼女は、そのまま戻らなかった。警察は生活苦による失踪と判断したが、高校生だった弟・健二だけは、姉が自分を置いて消えるはずがないと信じ続けていた。 それから15年後。 台風で崩れかけた休憩所の擁壁から、髪の毛が絡みついた「ちぎれたホイッスルの紐」が見つかる。それは、美咲が仕事中に首から下げていたものと酷似していた。 姉は本当に自ら姿を消したのか。 霧の夜に響いた鈍い音、消された運行記録、事件直後に退職した運転手。 15年間封じ込められていた峠の秘密が、冷たい擁壁の隙間から静かに姿を現し始める。ミステリー|行方不明1.1萬字5 125 -
完結第7話
水槽裏の金歯
2002年、ワールドカップで街が沸いていた夜。築地の海鮮居酒屋で開かれた積立会の宴会中、400万円を受け取った魚屋の妻・鈴木恵子が突然姿を消した。 最後に見られたのは、黒いバッグを抱えてトイレへ向かう後ろ姿。財布も携帯も残らず、彼女はそのまま築地の夜から消えた。 夫の健一は「妻は逃げるような女じゃない」と訴え続けたが、ギャンブル癖と夫婦喧嘩の噂から疑いの目を向けられる。さらに、店長の証言と積立会の代表・高橋義子の涙ながらの話によって、事件は“夫から逃げた家出”として処理されてしまう。 それから8年後。 閉店した海鮮居酒屋の改修工事中、水槽裏の排水管から、泥にまみれた小さな金歯が見つかる。 それは、失踪した恵子の前歯にあったものだった。 なぜ金歯は、彼女が出て行ったはずの店の排水管に残されていたのか。 誰が嘘をつき、誰が真実を隠したのか。 400万円の積立金、秘密の帳簿、そして市場で「姉御」と呼ばれた女。 8年間沈黙していた築地の闇が、一本の排水管から静かに暴かれていく。ミステリー|行方不明1.1萬字5 68 -
完結第13話
梅の下に眠る不動産王
1995年、東京に50棟のビルを持つ不動産王・宇井源一郎が、ある夜突然姿を消した。 会長室には、読みかけの新聞、置き忘れた老眼鏡、そして冷え切った一杯のお茶だけが残されていた。専属運転手を帰し、「今日は歩いて帰る」と告げたのを最後に、彼の行方は分からなくなる。 誘拐、逃亡、裏社会との関係――。世間はさまざまな噂を立てたが、身代金の要求もなく、遺体も見つからないまま事件は迷宮入りしていく。 それから8年後。 山形の小さな町で亡くなった元駐在巡査の遺品から、1冊の古い手帳が見つかる。そこには、失踪当日の朝、宇井源一郎がある古い墓の前に立っていたという、たった1行の記録が残されていた。 なぜ東京の不動産王は、誰も知らない山あいの墓地にいたのか。 そして、その墓に刻まれていた名前は、彼の人生そのものを揺るがすものだった。 8年間、会長室に残された冷えたお茶の謎を忘れられなかった刑事が、封じられた過去へとたどり着く。ミステリー|行方不明1.9萬字5 102 -
完結第10話
兄の嘘、妹のリボン
2014年11月、再開発予定地の暗い路地で、17歳の女子高生・中村幸が遺体となって発見された。 自宅まで残りわずか100m。彼女の手には、兄への誕生日プレゼントが固く握られていた。 警察は当初、現場付近にいた前科のある男を疑う。だが捜査は決定打を欠き、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていった。 誰よりも妹を思い、涙ながらに情報提供を呼びかけていた兄・拓也。家族も町の人々も、彼だけは疑わなかった。 しかし4年後、取り壊し前の家から封印された一通の封筒が見つかる。 そこに隠されていたのは、兄が守り続けた大きな嘘だった。 最後まで兄を信じていた妹は、なぜ家のすぐ近くで命を奪われたのか。 リボンの結び目に残された小さな痕跡が、誰も見ようとしなかった真実を暴き出す――。ミステリー|行方不明1.4萬字5 290 -
完結第9話
午後4時の失踪日記
1998年8月15日、夏の白浜海水浴場で、大学生の佐藤健二が忽然と姿を消した。 友人たちが海で遊んでいる間、健二は1人で荷物番をしていたはずだった。だが戻ってきた時、敷物の上に残されていたのは、揃えられた運動靴と読みかけの専門書だけ。本人の姿も、鞄も、どこにもなかった。 事故なのか、自ら消えたのか、それとも誰かに呼び出されたのか。 手がかりのないまま、家族の時間は止まり、事件は長い沈黙の中へ埋もれていく。 それから12年後。 白浜町の小さな中古品店で、健二の学生証が入った古い鞄が見つかる。さらに内ポケットから出てきた日記には、失踪直前の彼が抱えていた“ある人物”との金銭トラブルが記されていた。 日記に何度も登場する謎の頭文字「K」。 そして最後のページに残された一文。 〈今日、全てが決まるだろう〉 午後4時、健二は誰と会い、何を決めようとしていたのか。 12年後に見つかった日記が、消えた大学生の夏を再び動かし始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 993 -
完結第9話
8年目の遺失物
1997年8月、東名高速道路の富士川サービスエリアで、28歳の岡田裕子が突然姿を消した。 夫と車で帰宅する途中、トイレへ行くと言って車を降りたまま戻らなかった裕子。夫はその場で通報せず、1人で車を出し、失踪届が出されたのは3日後だった。 財布も身分証も、幼い息子と写った家族写真も見つからないまま、事件は未解決のまま時だけが過ぎていく。 そして8年後。 遺失物センターの棚の奥から、古びたベージュ色のバッグが発見される。中には裕子の身分証、家族写真、そして震える文字で書かれた手紙が残されていた。 「私は今、1人では家に帰ることができません」 あの夜、裕子は本当に消えたのか。 夫はなぜ、妻を残して走り去ったのか。 そして、バッグを届けた“別の女性”は何を知っていたのか。 8年間止まっていた家族の時間が、古いバッグの中の手紙によって、静かに動き始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 1152 -
完結第8話
消えた背番号1
平成12年、都内のホテルで開かれたプロ野球選手・藤原健二の引退会見。 肩の故障でも、年齢でもない。彼がマイクの前で語り出したのは、18年前の春に消えた天才エース投手・宮崎武志の名前だった。 昭和57年、選抜大会を目前に控えた大阪の工業高校。背番号1を背負う武志は、病気の母と幼い弟妹を支えるため、プロ入りを夢見て投げ続けていた。一方、幼い頃から常に武志の後ろにいた藤原は、誰にも言えない嫉妬を胸に抱えながら、控え投手としてその背中を見つめていた。 選抜出発の前夜、家族の苦しみと将来への不安に追い詰められた武志は、学校を出ていく。 その後を追った藤原。 月明かりの下で交わされた言葉は、2人の運命を大きく狂わせることになる。 なぜ天才エースは甲子園を目前に消えたのか。 そして18年後、すべてを手に入れたはずの藤原が、自らの引退会見で語った“本当の理由”とは――。ミステリー|行方不明1.1萬字5 1386 -
完結第8話
10年目の地下室
2004年12月、忘年会の夜。 会社員の田村孝介は、2次会で訪れたカラオケ店から妻へ電話をかけた。 「もうすぐ出る。少し地下に降りるだけだから」 それが、家族が聞いた最後の声だった。 翌朝になっても田村は帰らず、携帯電話の電源は切れたまま。財布も口座も動かず、どこかへ逃げた形跡もない。妻は何度も「夫は地下に降りると言った」と訴えたが、警察は事件性を認めず、行方不明として処理した。 その後、カラオケ店は突然廃業し、店長は海外へ出国する。 誰も調べなかった地下。 不自然に塗り固められたコンクリートの壁。 そして、田村の名前の横に残された謎の星印。 10年後、老朽化したビルの解体工事中、閉ざされていた地下から人骨が見つかる。 田村はなぜ地下へ向かったのか。 あの夜、彼は誰と何を話したのか。 そして、真実をコンクリートの奥へ封じ込めたのは誰だったのか。 忘れ去られたはずの忘年会の夜が、10年の時を越えて再び動き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 468 -
完結第8話
床下に消えた29年
2023年、岐阜県の山中にある古民家で深夜に火災が発生した。 焼け跡から見つかったのは、この家で1人暮らしをしていた高齢男性の遺体。古い木造家屋の痛ましい火事として処理されるはずだった。 しかし、消防士が焼け落ちた床を踏み抜いた時、事件はまったく別の顔を見せる。 床下に広がっていたのは、誰も存在を知らなかった暗い空間。そこには、木の板に縛りつけられたまま長い年月を過ごした、女性の乾燥遺体が横たわっていた。 遺体のそばに残されていた古い医療カード、切り裂かれた写真、そして日記に記された不気味な一文。 「もう彼女は逃げることができない」 29年前、自ら姿を消したと思われていた女性は、本当に新しい人生を選んだのか。 それとも、誰にも知られない山中の家で、ずっと助けを待ち続けていたのか。 すべてを灰に変えた火が、長年閉ざされていた床下の秘密を暴き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 472 -
完結第8話
天井裏の元彼
2012年、福岡市の古いワンルームで一人暮らしを始めた小林里奈。 束縛の激しかった元恋人・山田誠と別れ、ようやく自由な生活を取り戻したはずだった。ところがその直後、誠は突然行方不明になる。 数か月後、里奈の部屋で奇妙な出来事が起こり始めた。 冷蔵庫の食べ物が少しずつ消え、置いたはずの物が別の場所へ移動する。夜になると、誰もいないはずの天井から、何かが這うような音が聞こえてくる。 警察も管理会社も、友人も、誰も里奈の言葉を信じなかった。 「疲れているだけ」 「気にしすぎだ」 そう言われ続けた里奈は、自分の記憶さえ疑い始める。 やがて彼女は、その部屋を逃げるように去った。 しかし2年後、寝室の天井裏から発見されたものが、里奈の恐怖が妄想ではなかったことを証明する。 あの夜、彼女が見上げていた天井の向こうには、確かに“誰か”がいた――。ミステリー|真相|行方不明1.1萬字5 1361