"十五年間謝り続けた私に、夫は妹の子を差し出した" 第16話
「修さん、子さん、お義母さん」
私の声が、醜い号を切り裂きました。
私はバッグから、残る通の封筒を取りしました。第の封筒。公証役の印が鮮に押された『公正証(制執認諾文言付)』と、昨の曜夕方に方裁判所民事執係へ提済みの『差押命令申(受付印付控)』。第の封筒。陸くんの脅迫メモの写真と、音声データの反訳。「修さん。、あなたが会社をちげる際、私の個座から引きさせた百万円を覚えていますね」私は類の束を、修の元へ静かに滑らせました。「私の父は務の経理として、万がの裏切りに備えてあの借入を公証役で制執認諾条項付きの公正証にさせていました。裁判で争う必すらありません。すでに曜のうちに裁へ執続きを入れました」修の線が、類の最段にある赤い裁判所の受付印に縫い付けられました。「曜の朝、裁判所から各融関へ差押命令の決定が送達されます。会社の売掛座も、資材購入用の決済座も、すべて即座にロックされます」「な……公正証……? 差し押さえだと……?」「信用庫への債権者通も、片岡弁護士からすでに発送済みです。曜の決済用形、落ちないわよ」
「な……何てことをしてくれたんだ!」
修がいつくばるようにして私の元にすがりついてきました。
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まみれの犬のように、私の着物の裾を掴みます。
「美智子! 頼む、それだけは取りげてくれ! 会社が潰れたら、俺は破産する! 俺が悪かった、全部謝るから! おの実の墓参りだって毎くから!」
「触らないで」
私は裾を、ミリの躊躇もなく引き抜きました。
修のが空を切り、男は無様に畳に額を打ち付けました。
私はポケットからICレコーダーを取りし、再ボタンを押しました。
スピーカーから、昨夜の陸くんの震える泣き声が、広に響き渡りました。
『ぼく……ここに来たら、お母さんとはもう緒にめないの?』『施設に送るからね、って……お母さんが……』
そして、子がいたあの脅迫メモの文面を、私は全員ので掲げました。
「歳の子どもを脅し、自分の欲望のために売りばそうとした母親。自分の嘘を守るために、のと甥っ子を利用した男。そして、それらをすべてりながら、跡取り欲しさに加担し続けた姑」
私の線が、にいつくばるを、徹に見ろしました。
「あなたたちに、族を名乗る資格などありません」
座敷の親戚たちが、耐えかねたように次々とちがりました。
「……もう見てられん」
本の伯父が、吐き捨てるように着を掴みました。
「内の恥どころの話じゃないぞ。親族のを横領し、子どもを脅迫し、詐欺同然の養子縁組か。
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田の名はおたちのせいでに塗れたよ」
「度と敷居を跨ぐんじゃないよ!」
「もう顔も見たくない!」
親戚同は、蜘蛛の子を散らすように、逃げるように広からていきました。
玄関の引き戸が激しく閉し、が次々とりっていく音がくに響きます。
かつてあれほど誇っていた親戚たちから、瞬で見捨てられたのです。
広な広に残されたのは、荒らされた膳と、め切った料理。
そして、畳のに崩れ落ちた、の悪だけでした。
富は泡を吹くように過呼吸を起こし、畳を掻きむしりながら呻いていました。
「あああ……田が……私の本が……終わっちまった……」
子は髪を振り乱し、届かない弁護士の背に向かって泣き叫び続けていました。
そして修は、暗い瞳で畳を見つめ、ただ刻みに震えていました。
全てを奪われた男の、惨めな残骸でした。
私は背に隠れていた陸くんに向き直り、目線をわせました。
男の子の頬には涙がっていましたが、その瞳からは、先ほどまでの怯えが消えていました。
「陸くん。きましょう」
「……うん」
陸くんは私のを、さなでぎゅっと握り返しました。
私は度も振り返ることなく、広のふすまをけ放ちました。
玄関をると、張り詰めたの青空が、どこまでもく広がっていました。
の暗が音をてて砕け散り、胸の奥底に、澄み切った気と確かな自由が満ちていくのを、私は肌でじていました。