"十五年間謝り続けた私に、夫は妹の子を差し出した" 第10話
トイレに起きてきた陸くんでした。
男の子は私の姿を認めると、びくっとち止まり、逃げるようにずさりしました。
「陸くん」
私はに膝をつき、陸くんの線のさまで腰を落としました。
「さっきは、腕、痛かったわね。丈夫?」
陸くんは驚いたように目を見きました。
いつも母から罵倒され、叔父から威圧されていたさな体が、私の穏やかな声に戸惑っているのが痛いほど伝わってきました。
エプロンの内ポケットので、ICレコーダーのスイッチを静かに滑り込ませました。
「……うん」
陸くんはさく頷き、それから、ぎゅっと自分のパジャマの裾を握りしめました。
「あのね……おばちゃん」
「なあに?」
「ぼく……ここに来たら、お母さんとはもう緒にめないの?」
震える声でした。
歳の幼い瞳の奥に溜まっていたのは、見らぬへの恐怖と、実の母親から捨てられることへの絶望でした。
「お母さん、なんて言ってたの?」
私が優しく問いかけると、陸くんはをすすりながら、ズボンのポケットにを突っ込みました。
取りされたのは、つ折りにされ、汗でくしゃくしゃになった枚のメモ用でした。
「これ……お母さんが、無くすなって言ったの。ちゃんと読めって」
私はそのを受け取り、廊の常夜灯のかりので広げました。
そこには、子の派で乱暴な跡が、青いボールペンでびっしりとき殴られていました。
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『曜の本での約束』1.親戚のおじちゃんたちので、絶対に泣かないこと。2.修おじちゃんを「お父さん」、美智子おばちゃんを「お母さん」ときな声で呼ぶこと。3.「田の子どもになれて嬉しい」と笑顔で言うこと。※全部できたら、しいゲームを買ってあげる。※もし失敗して私の結婚を邪魔したら、もう度とには入れない。施設に送るからね。
息が止まりました。
文字の端々から滲みる、の毛もよだつような利己主義。
歳の実のが子を、自分の欲望と見栄のために脅迫し、封じをして、のに売りばそうとしていたのです。
「施設って……どこ?」
陸くんが見げてきました。
その瞳から、ぽろぽろと粒の涙がこぼれ落ちました。
「ぼく、いい子にするから……お母さんと緒にいたいよ……」
喉の奥から絞りされた嗚咽が、静まり返った廊に染み込んでいきました。
私は陸くんの細い肩を、壊れ物を扱うようにそっと抱きしめました。
「丈夫よ、陸くん」
私の声は、く、しかし絶対に揺らぐことのない確信に満ちていました。
「あなたは何も悪くない。誰の言うことも、無理に聞かなくていいの」
「……ほんとう?」
「ええ。の汚い嘘に、あなたが付きう必なんてないわ。私が、絶対にあなたを守ってあげる」
私はポケットからスマートフォンを取りし、そのメモ用を鮮に撮しました。
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子の跡。
子どもへの脅迫の文言。
そして、抱きしめた腕のでさく震える陸くんの「お母さんと緒にいたい」という泣き声は、すべてICレコーダーの子データとして、消せない証拠へと変換されていきました。
居からは、修と子の品な笑い声が漏れ聞こえていました。
誰かの痛みを踏みにじり、己の虚栄を満たすことしかにない、醜悪な血族たち。
あいつらに、族を名乗る資格など欠片もありません。
私は陸くんの涙を指先で優しく拭い、ちがりました。
胸の奥のたい炎は、今や静かに、しかし確実に全てを焼き尽くす業となって研ぎ澄まされていました。
曜の午。
私のスマートフォンに、義母の富から着信が入りました。
通話ボタンを押し、スピーカーに切り替えます。
『もしもし、美智子さん! の段取りはに入ってるんだろうね!』
受話の向こうから、ヒステリックに弾んだ富の声が響きました。
「ええ、お義母さん。伺っております」
『は本に親戚が集まるんだからね。正午ぴったりに親族会議を始めるよ。あんたは半には本に来て、座敷の掃除とお茶の準備をしなさい。それと、着てくる着物は紺の訪問着だよ。すぎず、派すぎず、修の引きて役に徹する着物にしなさい』
「分かりました」
『いいかい、親戚ので決して余計なを利くんじゃないよ。