"十五年間謝り続けた私に、夫は妹の子を差し出した" 第9話
私は台所でお茶を淹れながら、の会話にを澄ませていました。
修はビールを喉に流し込み、豪に笑いました。
「百万か。任せておけ。妹のれ台に、恥ずかしい真似はさせられないからな」
「本当!? さすがはお兄ちゃん! 頼りになる!」
子がを叩いてびました。
しかし、修はすぐに声をくし、顎を撫でました。
「ただな、今は現の資材費の支払いがなってて、会社の座からすぐにはかせないんだよ。……おい、美智子」
急に名を呼ばれ、私は湯呑みをにしてテーブルへ向かいました。
「何かしら」
「おの実の裏にあった、古い資材置きののことだけどさ」
修は当然の権利のように、平然と言い放ちました。
「あそこ、今は誰も使ってないだろ。おの親父さんが遺産としておに残した帳があったよな。あのを担保に入れるか、いっそ売り払えば、百万どころかまとまったになる。子の祝いをして、余ったは陸のこれからの教育費に充ててやるのが、番効な使いだろ」
の奥で、たいが吹き抜けました。
くなった父が、最まで守り抜こうとしたさな。
病で「美智子、何かあったらこのだけは放すな」と遺言帳にき残してくれた切な所を、この男たちは舌先寸で奪い取ろうとしているのです。
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「の権利は、父の法事の類と緒にに預けてあるわ」
私はを交えず、静かに答えました。
「今すぐにはかせないわよ」
「ちっ、相変わらず際が悪いな」
修は舌打ちをしましたが、く追及はしてきませんでした。
すでに私を完全になずけたとい込んでいるため、いつでも引きせる隠し座程度に考えているのでしょう。
「まあいい、曜の親族会議が終わったら、曜に続きにけ。いいな」
修は話題を打ち切ると、今度は向かいに座る陸くんに目を向けました。
「おい、陸。ハンバーグ、美いか?」
陸くんはスプーンを握りしめたまま、さく頷きました。
修はそのを、から押さえつけるように撫で回しました。
「曜からは、ここがおのだ。おは今から、俺のことを『お父さん』と呼んでいいんだぞ。きな声で言ってみろ。『お父さん』ってな」
居の空気が、ぴんと張り詰めました。
陸くんのが、刻みに震え始めました。
握られたスプーンから、デミグラスソースの滴がぽたりとテーブルに落ちました。
男の子の喉がひくひくと波打ち、声がません。
「ちょっと陸! 何黙ってんのよ!」
子が苛ちを隠さずに、陸くんの細いの腕をテーブルのでくつねりました。
「おじちゃんがせっかく優しく言ってくれてるんでしょうが! く『お父さん』って呼びなさい! 返事は!?」
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「い、痛い……っ」
陸くんの瞳に、粒の涙が盛りがってきました。
「子さん、やめなさい」
私はちがり、子の首をからしっかりと掴みました。
私ののたさに驚いたのか、子は眉を吊りげて私を睨みつけました。
「何よ美智子さん、ししないでよ! しつけの邪魔しないで!」
「子どもに無理いをして、ご飯のを台無しにするのがしつけかしら」
私は子のを引き剥がし、陸くんの背にそっとを添えました。
「陸くん、ごちそうさまでいいわよ。お腹がいっぱいなら、あっちの部でテレビでも見ていなさい」
陸くんは泣きそうな顔で私を見げ、弾かれたように席をって隣の部へ駆け込んでいきました。
「けっ、げのないガキだな」
修は嫌そうにビール缶を握り潰しました。
「まあいいさ。曜に親戚同ので発表しちまえば、嫌でも観するだろ。親戚ので恥をかかせるような真似をしたら、ただじゃおかないからな」
子も腕を組み、忌々しそうに髪をかきげました。
「本当よ。あの子のせいで私の結婚がめちゃくちゃになったら、承しないんだから」
は再び酒を注ぎい、再婚相の資産や、親戚への見栄の話にを咲かせ始めました。
私は静かに膳をげ、台所へと戻りました。
夕の片付けを終えた、私は廊の隅、暗い勝のくにっていました。
パタパタとさな音がづいてきました。