"十五年間謝り続けた私に、夫は妹の子を差し出した" 第7話
私はカレンダーの曜の付に、赤黒いペンで、静かに丸をつけました。
翌朝、台所につ私の指先には、昨夜のような迷いは微も残っていませんでした。
噌汁の鍋にをかけ、汁のりがち込める、私はエプロンの紐を固く結び直しました。
寝から起きてきた夫の修は、昨夜の激しい鳴り声などまるでなかったかのように、けろりとした顔であくびを噛み殺していました。
テーブルに腰掛け、差しされた米に箸をつけます。
「おい、美智子。昨の夜は、おも虫の居所が悪かったんだろ」
修は湯気の向こうから、値踏みするような線を投げてきました。
「俺も言いすぎたよ。だがな、おが固になってカルテなんか持ちすからだ。昔のことはに流せ。週末の親族会議で、陸を正式に引き取れば、おもれて母親だ。全部うまく収まるんだよ」
私は背を向けたまま、静かに息を吸い込みました。
喉の奥で煮えたぎる嫌悪を、たい鉄のやすりで削り落とすように押し殺します。
そして、ゆっくりと夫に向き直り、さく頷いて見せました。
「……そうね。昨は取り乱して悪かったわ」
修の目が、ぱっとるくなりました。
「分かってくれたか!」
「ええ。でも陸くんを引き取るなら、学の転続きや活費の内訳をきちんとしておかないと困るでしょう? 私、パート代だけじゃ賄えないから、庭の座や会社の経理のことも、ちゃんと確認しておきたいの」
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「なんだ、そんなことか! 任せておけって。おは何も配しないで、俺に全部ついてくればいいんだ」
修は満そうに胸を張り、ご飯をかき込みました。
あまりにも容易い男でした。
、私が罪悪から度も逆らわなかったせいで、この男は「田美智子は自分の支配から逃げせない」と、の底から信じ切っているのです。
そのの夕方、夫は珍しく、座の名の袋をげて帰宅しました。
に入っていたのは、私がかつて好きだとにした級なモンブランでした。
「ほら、美智子。おの好きなやつだ」
テーブルに置かれた箱を、修はいかにも慈い夫の顔で指差しました。
「俺の言う通りにしていれば、美いものもえるし、世体だって守られる。やっぱりおは、聞き分けの良い来た妻だな」
「ありがとう。いただくわ」
私は微笑みながら箱を受け取りました。
夫が呂へ向かい、シャワーの音が響き始めた瞬、私の表から笑顔が抜け落ちました。
箱をけ、美しく絞られた栗のクリームを見つめました。
かつての私なら、このさなケーキつに涙を流し、夫の優しさに謝していたはずでした。
けれど今、私の目に映るのは、飼い犬に与えられるっぽい餌でしかありません。
私はフォークをに取ることすらなく、箱の蓋を静かに閉じ、蔵庫の奥へと押し込みました。
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翌の午、私は駅の雑居ビルにある政士事務所の扉を押しました。
「美智子、久しぶりね。急に改まった連絡をしてくるから驚いたわ」
迎えてくれたのは、父の務で事務員として働いていた頃の同僚であり、現は政士として独している佐伯奈緒でした。
奈緒は応接スペースの子を勧め、温かいほうじ茶をしてくれました。
「話で言っていた類、持ってきた?」
「ええ。これよ」
私はバッグから、切に保管していた茶封筒を取りし、机のに並べました。
実の務を継いだ父が、私に残してくれた預通帳。
そして、平成に夫の修が宅リフォーム会社をちげる際、私の独代の貯から用てた百万円の記録でした。
そこには、修の実印が鮮に押された『銭消費貸借契約』が添えられていました。
奈緒は老鏡をかけ、契約の条項との振込控を慎に指先でなぞりました。
「……利の定めはないけれど、返済期限はとっくに過ぎているわね。度でも返済された形跡はあるの?」
「円も返してもらっていないわ」
私は平然と答えました。
「夫は『夫婦のだから返済の必はない』と言い張り、義母は『嫁の持参は田のものだ』と主張しているの」