"十五年間謝り続けた私に、夫は妹の子を差し出した" 第1話
「子どもも産めない嫁を、も事にしてくれるなんて。本当に優しい旦さんね」
皿に盛った鯛の姿造りを運んだ瞬、義妹の子の甲い声が、満座の座敷に突き刺さりました。
今は義母・富の歳の誕です。
私は朝に起き、酢飯を切り、煮崩れしないよう面取りした根菜を炊きげ、義母の好む昆布汁の吸い物を用しました。
親戚たちが集まる本の広には、酒の匂いと煙の煙が淀んでいます。
誰も、私の労働をねぎらう言葉などにしません。
畳の座に座る親戚の叔母が、運ばれた刺に箸を伸ばしながら、わざとらしく眉をげました。
「修さんも、かわいそうにねえ。田の血も、これで途絶えてしまうのかい」
義母がく、芝居がかった溜息を落とします。
「私がいくら言っても、修が美智子さんをかばうのよ。跡取りがいないなんて、世様に対して恥ずかしくて顔もげられないっていうのに」
私は畳に膝をついたまま、さくをげました。
のひらの皮が、朝からの仕事でくふやけて張っています。
そのとき、座の央でビールグラスを傾けていた夫の修が、いかにも良識ある男といった穏やかな調で割って入りました。
「母さん、親戚のでそういう嫌を言うのはやめてくれよ」
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修は私の肩に、いかにも慈しむようなつきでぽんとを置きました。
「俺は子どもが欲しくて美智子と結婚したんじゃない。子どもがいなくても、俺は美智子と緒にいたいから夫婦を続けてるんだ。美智子だって、毎こうしてを支えてくれているんだから」
広から、斉に嘆の吐息が漏れました。
「まあ、修さんたら。なんてできた旦さんなの」
「美智子さん、本当に果報者だよ。子どもが産めない体なのに、こんなに庇ってもらえて」
「修さんに謝しなきゃ、罰が当たるわよ」
親戚たちの声が、善の形をした刃物となってり注ぎます。
私はを向いたまま、唇を噛みしめました。
、歳で修と見い結婚したとき、私は自分の庭を築けることをからんでいました。
実の務の経理を伝いながら、いつか自分の腕のにが子を抱くを見ていました。
けれど、経っても、経っても、兆候すら訪れませんでした。
で所の産婦科のを叩き、検査を受けました。
結果がたあのから、義母の態度は変しました。
親族の集まりがあるたびに、私は「子どもも産めない嫁」として晒し者にされ、義母の腰の湿布貼りから通院の付き添いまで、無償の政婦のように使われ続けてきました。
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それでも耐えられたのは、夫だけが方でいてくれたからでした。
『俺が守るから』
『美智子が番つらいんだろ。俺は何も責めないよ』
その言葉を杖にして、私は、義母からの嫌がらせにも、夫の会社が苦しいと言われて差しした独代の貯百万円のことも、すべて「私の落ち度を埋めるための代償」としてみ込んできたのです。
宴会がおきになり、散らかった徳利や皿をで台所に運び終えたのは、夜のを回った頃でした。
寝に戻ると、修がすでにスーツを脱ぎ、ベッドのでタブレットを眺めていました。
私が化粧を落とし、えた先をさすりながら布団に入ろうとしたとき、修がに画面を伏せました。
「美智子。ちょっと事な話があるんだ」
「……何?」
「子の息子の陸のことなんだけどさ。来から、うちで引き取って育ててみないか」
の奥で、カチリと計の秒針が止まったような錯覚を覚えました。
「え……? 引き取るって、どういうこと?」
陸くんは、義妹の子が未婚で産んだ歳の男の子です。
父親とは認も養育費の取り決めも交わさないまま、子が実に入りしながらで育てていたはずでした。
修は私のを取り、あの、いつもの痛ましいものを見るような優しい笑みを浮かべました。
「子、来に再婚が決まりそうなんだよ。
相は隣町の医療法の事務さんだ。ただ、向こうのご両親が、の男の連れ子を最初から同居させるのは難を示していてね」