"50年耐えた私が、息子の嫁に「一番怖かった」と言われた夜" 第13話
って文で送ったんだ。……なのにさ』
健の呼吸が荒くなる。
『既読スルーだよ。何待っても返事がないんだ。話をかけても着信拒否されてる。なんでだよ! 俺はこんなに努力して活を改めたのに、なんで由美は向に許してくれないんだよ!』
……はぁ。 私はいため息を、受話器の向こうに落とした。
代半になっても、この男は根本なところで何も変わっていない。 事をした、ゴミを分別した、だから免罪符をくれ。 努力を提示すれば、奪われた居のいい常を買い戻せるとっている。
「健」
「なんだよ母さん……俺、違ったこと言ってるか?」
「『変わったから許される』なんて、いがりもだしいわよ」
私の容赦のない言葉に、受話器の向こうが息を呑んだ。
「え……?」
「あなたが自分で事を作り、自分のを洗い、自分のゴミを片付けるのはね、のとして呼吸するのと同じ、当たりのことよ」
語語、噛んで含めるように叩きつける。
「それを何? 由美さんに許してもらうための取引材料にするつもり? 『こんなにやってあげてるのに』って、また恩着せがましく被害者面をするの?」
『で、でも、俺はやり直すために……!』
「由美さんはね、何もあなたに無され、見され、尊厳を削り取られてきたのよ。その何分もの絶望のさを、あなたがたった数週まともに活したくらいで帳消しにできると本気でっているの?」
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健の息が詰まる音が聞こえた。
「変わるっていうのは、に評価してもらうためにやるものじゃないわ。自分がの自したとしてきていくためにやるの。由美さんがあなたを許すかどうか、戻るかどうかは、すべて由美さんの自由よ。あなたの努力を査定してあげる義理なんて、あのにはミリもないの」
『母さん……』
「甘えるのはもうやめなさい。本当に反省しているなら、相に見返りを求めるのをやめなさい」
私は息子の返事を待たずに、通話を切った。
かつての私なら、「由美さんもしは健の頑張りを見てあげて」と、を挟んでいたかもしれない。 だが、それは息子の精神な自を奪い、若い女性に犠牲をいる暴力でしかなかったのだ。 健は、許されないかもしれない孤独を引き受けながら、できていくしかない。 それが、が背負うべき責任というものだ。
翌の夕暮れ。 私は駅のスーパーマーケットへ買いしにかけた。
ええとした内の気が、肌を刺す。 買い物かごを腕にかけ、夕方の混雑のをゆっくりと歩いた。
精肉売りのにっただった。 目が留まったのは、特売のシールが貼られた豚ロース肉の切りだった。 姜焼き用の、脂が綺麗に入った肉。
私のは、考えるよりも先に伸びていた。
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指先がラップに触れ、無識のうちにパックを買い物かごのへ入れようとした――その瞬。
ピタリと、指が止まった。
……何をしているの、私。
喉の奥が、ぎゅっと縮みがった。 臓の鼓が、急激に鐘を打つ。
姜焼きは、夫の好物だった。 あのは脂のい豚肉しかべなかった。 付けがしでもいと「い」と突き返し、姜が利いていないと嫌に箸を投げした。
私は、夕方のスーパーに来るたびに「夫は何をべたいか」「夫をらせないためには何を買うべきか」だけを基準にして、棚のにち続けていたのだ。
その呪縛のような筋肉の記憶が、あのをてヶ以が経った今でも、私の体にこびりついていた。
恐ろしかった。 というのみと、無識に刷り込まれた奴隷のような習性が、これほどまでに私の体を支配していたという事実に、背筋がすっと凍りついた。
私はく息を吸い込み、吐きした。
そして、かごに入れかけた豚肉のパックを、棚の元の位置へ静かに戻した。
踵を返し、鮮魚コーナーへと向かう。 氷のに並べられていたのは、鱈の京漬けだった。
夫は魚の骨を極端に嫌い、卓に魚をすと「猫の飯か」と罵った。 だから私は、自分が好物だった京焼きを、あのでは何もにすることができなかったのだ。
私は、切れの鱈のパックをに取った。