"50年耐えた私が、息子の嫁に「一番怖かった」と言われた夜" 第4話
【18:20 実着。部に異臭。シーツまで汚れてる】 【18:45 オムツ交換試みる。テープの止め方がわからない。ばあちゃん暴れる】 【19:30 親父が鳴ってばあちゃん泣きす。所のが見に来た】 【20:15 夕飯(お粥? べさせようとするが誤嚥しかける)】 【21:00 薬。どれをませればいいかわからない。お薬帳どこ?】 【22:30 腰が限界。親父は酒んで自にこもった】
写真のに、いメッセージが続いていた。
『母さん、本当にすまなかった。 オムツを替えるのが、こんなに変なことだなんてらなかった。 腰が割れそうだし、腕も痛い。親父とでやっても全然うまくいかない。 母さんが何もこれをでやってたなんて、俺、像もしてなかった。本当にごめん』
文字の向こうから、息子の疲弊と揺が滲みていた。 まれて初めて、の排泄と老いに直面した代の男の狼狽。
けれど、読者の誰もが「これで息子も反省した」とうであろうその謝罪のあとに、続けざまにもう通、メッセージが届いた。
画面に表示されたその文面を見た瞬、私の指先は完全に凍りついた。
『母さん、頼むから助けてくれ。 今度は由美まで、をてくと言いしたんだ』
……由美さんが。
暗い部ので、青い液晶のが私の元を照らしていた。
健は、何も分かっていない。 自分が今、なぜ妻に逃げられようとしているのか。
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なぜこのタイミングで庭が崩壊しかけているのか。 その本質を、これっぽっちも理解していないのだ。
ただ自分の元のタスクが溢れ返り、介護と事の圧に押し潰されそうになって、また別の「女」に救いを求めているだけだった。
私は布団のに起きがり、え切った指先で画面をタップした。
慰めも、配の言葉も打たなかった。
ただ言、臓の奥底から湧きがった問いを、そのまま文字にして送った。
『由美さんは、何もからそう言っていなかった?』
送信のボタンを押すと、即座に「既読」がついた。
しかし、分待っても、分待っても、画面の向こうから返信の文字が打ち込まれることはなかった。
返信は、度と来なかった。
暗転したスマートフォンの画面に、畳の暗い井が映り込んでいる。健が黙り込んだのは、私の問いが図だったからだ。
何もから、由美さんは助けを求めていた。言葉を濁し、線を落とし、に絞りすような声で、夫である健に常の限界を伝えていたはずだ。それを「仕事で疲れている」「男には男の役目がある」と聞き流し、見殺しにしてきたのは誰か。
健自であり――そして、ならぬ私だった。
胸の奥が、たい針で刺されたように疼く。胃の腑がく沈み込む。私はただの被害者面をしてをてきたが、由美さんにとっては、私もまたあの窒息しそうなの部だったのではないか。
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翌朝、午を回った頃だった。机のに置いたスマートフォンが、く震えた。
由美さんからのLINEだった。
『お義母さん、突然すみません。今、おでしょうか。しだけでいいので、お話しできませんか』
くえられた文面に、の波は見えなかった。だが、あの几帳面な義理の娘が、を排して文字を打っていること自体が、切羽詰まった決を物語っていた。
私はアパートの所と部番号だけを返信した。
分、控えめなチャイムが鳴った。
扉をけると、いベージュのトレンチコートを着た由美さんがっていた。目のには濃い隈が張り付き、頬の肉が削げている。肩にかけた通勤用の革鞄の角が、すり切れていた。
「……お義母さん」
「いらっしゃい。狭い部だけど、がって」
靴を脱いで畳のにがった由美さんは、正座をしてくをげた。私は買ってきたばかりの急須で、い湯を淹れて差しした。
「お茶もなくてごめんなさいね。今朝、急いで用したの」
「いえ……ありがとうございます」
由美さんは湯呑みを両で包み込んだ。細い指先が、微かに震えている。畳の静けさので、の呼吸だけが微かになっていた。
「健から連絡があったでしょう」
私が切りすと、由美さんは顔をげ、さく頷いた。そして、元に置いていた鞄から、冊の学ノートを取りして畳のに置いた。