"年収2000万円の夫、その創業史に私の名前はなかった" 第12話
お茶もされていないテーブルの向こうから、義母の甲い声がんできた。
「あの事会で、スポンジを投げられたくらいで親戚ので騒ぎてて、挙句の果てには会社にまで乗り込んで直のを引っ張ったんですって? 奥田社から直の役職をすって連絡があったのよ! 嫁の分際で、夫の世を潰すなんて代未闻だわ!」
義母はヒステリックに机を叩いた。
「し昔に伝った写真を見せびらかして、いい気にならないでちょうだい! 理恵から聞いたわよ、資者名簿に名があったって騒ぎしたらしいじゃない。でも資って言ったって、どうせ直があなたに名義を貸してあげたか、遣いを持たせてやっただけでしょ!」
義母はで嘲笑った。
「卒で働きもなかったような娘が、会社の資本をせるわけないじゃない! 直が稼いだで今まで贅沢な暮らしをさせてもらっておきながら、恩を仇で返す気!?」
親戚たちが、居悪そうに目を伏せる。理恵がたまらず「お母さん、もうやめてよ……」と割って入ろうとしたが、義母はそれを乱暴にで払いのけた。
私がをこうとした、その瞬だった。
「――違う」
く、押し殺したような叫びが、部の空気を切り裂いた。
夫だった。夫は私の隣で、両膝のに置いた拳をくなるほど握りしめていた。
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その肩が、激しくしている。
「何が違うのよ、直! あなた、この期に及んでまだこの女をかばうの!?」
「違うって言ってるだろ、母さん!」
夫の号が、実の井に霊した。義母がビクッと肩をねさせ、目を丸くする。息子からこれほどの激昂を向けられたことなど、まれて初めてだったのだろう。
「彩が俺に名義を借りたんじゃない! 彩が、自分の取りの全貯を会社に入れてくれたんだ! 会社ができるから、俺たちがをすすってたから、彩がしてくれたで会社は息をつないだんだよ!」
「な……何を言ってるのよ。どうせ、結婚のバイト代の数万の話でしょ……」
「持株比率、18%だ」
夫のから、酷な数字が突き落とされた。
「……は?」
「彩は、会社の創から今に至るまで、株主の奥田社に次ぐ株主だ。俺の持分は、7%しかない」
リビングに、を打ったような静寂が落ちた。
義母のが、抜けに半きのまま固まる。叔父や叔母たちが、息を呑んで顔を見わせた。
「じゅう……はち……?」
義母の喉から、かすれた空気の音が漏れた。
収2000万円を稼ぐ自の息子。その息子を遥かに凌駕する権利を、自分が「卒の居候」と見し、濡れたスポンジを顔に投げつけた嫁が、今この瞬も握り続けている。その残酷な現実が、義母の狭いの許容量を完全に破壊したようだった。
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「で、でも……!」
義母は震える指先で夫を指差した。プライドの破片をかき集めるように、必で言い訳を探す。
「でも、今の会社をかしてるのは直でしょう!? 役員として毎をにして働いて、2000万円も稼いできてるのは直じゃない! 彩さんは何もで事をしてただけじゃないの! 養われてるのは事実でしょう!?」
夫は目を閉じ、苦痛に顔を歪めた。その目尻から、筋の涙が頬を伝って流れ落ちる。
「……母さん。彩がどうして現をりたか、ってるか」
「え……?」
「8だよ。を作って、会社が番事だっただ。彩は現のリーダーとしてアルバイトをまとめげて、奥田社からもの責任者に推薦されてたんだ。あのままいけば、彩が違いなく役員になってた」
義母の顔から、サーッと血の気が引いていく。
「そんなの……嘘よ……」
「嘘じゃない! だけどあの、美緒がまだ2歳で……そして、親父が倒れたんだ!」
「お父さん」という単語がた瞬、義母の肩がきくねた。
「親父が脳梗塞で倒れて、入院とリハビリが必になった。母さんじゃ介護も病院の送り迎えも回らなかっただろ!? 俺は営業の型案件を抱えてて、連夜まで帰れなかった。誰かが仕事をセーブして、と親父の面倒を見なきゃならなかったんだ!」
夫は両で顔を覆い、しゃくりあげるように声を絞りした。
「奥田社は、彩のために介護費用もシッター代も全額会社ですって言ってくれたんだよ! 彩のキャリアを潰さないための支援案を作ってくれたんだ! なのに……なのに俺が、それを彩に黙って断ったんだ!」