"年収2000万円の夫、その創業史に私の名前はなかった" 第2話
全員が袋をはめ、油汚れと洗剤の泡にまみれながら、きなスポンジを握りしめていた。
「これ……お父さん? なんで、あなたが奥田社と緒に……」
義母の震える指先が、写真を指す。 義母は、私が結婚した13から今まで、息子がで会社をちげ、成功させたのだと信じ切っていた。 私はただ、軌に乗ったあとに転がり込んできた、学歴のない無力な女だと。
「どうせ、直に頼まれて、数バイトで伝っただけでしょ!」
必に自分を納得させようと声を絞りす義母。 私は何も言わず、テーブルのの写真を裏返した。
裏面には、き義父の独特な、太い跡が残されている。
『初の発注完。朝まで残った創業メンバー4で、最の鍋洗い』
付は、16の。 会社を登記する、半の記録だった。
「お兄ちゃん……」
理恵が、掠れた声で夫を呼んだ。
「彩さんも、最初からいたの……? パパと緒に、会社作ってたの……?」
夫はをきかけたが、声にならなかった。 ただ喉を刻みにさせ、線を彷徨わせている。
っていたのだ。 夫だけは、最初から全部。 私が自分の貯を資本として差ししたことも、毎晩夜までレシピ発と原価計算を繰り返したことも。
っていながら、母親が「卒の嫁を養ってやっている派な息子」と褒めそやすよさに浸り、真実を隠し続けてきた。
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「今はもう、お引き取りください」
私の声は、自分でも驚くほど静かだった。
「彩さん、ちょっと待ちなさいよ!」
「お引き取りください。これ以、美緒のでみっともない真似をしないで」
義母は何か言い返そうとを歪めたが、理恵に腕を引かれ、よろめきながら玄関へと向かった。 親戚たちも、逃げるように部をていく。
い玄関ドアが閉まり、のにたい沈黙が落ちた。
その夜、美緒を寝かしつけたあと、リビングに戻ると、夫がで暗のに座っていた。
ダイニングテーブルのには、あの写真が置かれたままだ。
夫は私がづく気配に肩をねさせ、消え入りそうな声で言った。
「……ごめん。母さんがあんなことするなんて、わなかったんだ」
「何に謝ってるの?」
「え?」
「お義母さんがスポンジを投げたこと? それとも、親族ので恥をかいたこと?」
夫は両を膝のでぎゅっと握りしめた。
「母さんを止められなかったことだよ。俺がもっとくに入っていれば……」
やっぱり、このは分かっていない。
「お義母さんは、私の過を何もらなかったから見したのよ。無なが傲になるのは、あるで自然なことよ。でも、あなたは違う」
私は夫の正面にち、見ろした。
「あなたはっていた。私が16、どんないで奥田さんとあなたと緒にをすすったか。
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それを全部りながら、お義母さんが私を『養われているだけの卒主婦』と罵るのを、10以黙って見ていた」
夫の顔が、見る見るうちに青ざめていく。
「言おうとしたんだ! でも、母さんがあんなに俺の成功をんでくれてるのに、わざわざを差すようなこと……」
「気持ちよかったんでしょうね」
私のい言葉に、夫の喉がヒュッと鳴った。
「の力で収2000万円までり詰めた優秀な黒柱。親族の頂点にって、無な妻を養ってやっている優しい男。その偽りの物語を守るために、私の16を透にしたのよ」
夫は両で顔を覆い、く俯いた。 反論は返ってこなかった。
否定できないのだ。 それが、夫のの底にあった番浅ましい本音だと、自分自でもっているから。
翌の夕方、学から帰ってきた美緒が、ランドセルから枚のプリントを取りした。
学4の国語のワークシート。 タイトルにはきく、こうかれていた。
『わたしのなプロフェッショナル――族の仕事をインタビューしよう』
「ママ」
美緒が、そうに私を見げる。
「今ね、学くにおばあちゃんから話があったの。『パパを取材しなさいね。パパは会社の役員で、収2000万円で、族ので番すごいなんだから』って」
美緒のさな指先が、箱の奥から取りしたメモ用をいじっている。
昨、私がテーブルに置いた古い写真を、美緒は自分のスマートフォンで撮していたらしい。