"孤児の私に、婚約者が買い与えた「偽物の両親」" 第11話
「母さん、嘘つくなよ!!」
旬が弾かれたように叫び声をげた。
その顔は、追い詰められた獣のように歪んでいた。
「母さんが言ったんじゃないか!『片親すらいない施設育ちの女なんて神の恥だ、親戚に顔向けできない』って! 体裁をえなきゃ式にはないって、俺を追い詰めたのは母さんだろ!!」
「な、何を恩らずなことを……!」
醜悪な責任のなすりい。
神の誇る『格式』とやらが、音をてて崩れ落ちていく。
私はバッグからスマートフォンを取りし、画面をタップした。
恵子自の傲な肉声が、スピーカーから座敷全体へと容赦なく響き渡る。
---
『片親すらいない女なんて、うちの格に傷がつくだけだわ』
澄ました、酷な恵子の声。
『旬がどうしてもってすがりついて泣きつくから、私がこうして恥を忍んで、おを払って筋きをえてあげているんじゃないの。これくらいのをかけて体裁を取り繕うのは、うちのためだけじゃない、あなたのためでもあるのよ。謝してほしいくらいだわ』
---
カチリ、と止ボタンを押す。
座敷のには、もはや息をする音すらしなかった。
恵子は唇を刻みに震わせ、畳のに線を落としたままのように固まっている。
「……格、だと?」
栄介の震える声が、く漏れた。
内の体面を守るためなら平気で嘘をね、挙句の果てに本にまでを塗ろうとした妹への、完全な軽蔑の差しだった。
広告
「のいちを買い叩き、者を冒涜し、親族を騙し討ちにする……それがおの言う神の格か! 恥をれ、この愚か者どもが!!」
座卓が激しく揺れるほど、栄介の拳が叩きつけられた。
恵子は鳴をげてを縮めた。
その、旬が膝ちのまま、私の元へい寄ってきた。
スーツの裾を掴もうと、脂汗に濡れたを伸ばしてくる。
「美咲……頼む、美咲! 悪かった、俺が全部悪かったよ! 母さんとは縁を切る、式にも俺からをげるから! やり直そう、な? 俺はおをしてるんだ……!」
私はたく歩、ろへ引いた。
「触らないで」
氷のような言に、旬のが空を切った。
私はバッグから、最の枚の類を取りした。
に、赤の角印が鮮に押された枚の。
『結婚式利用契約解除通』
「本午、式へ正式に解約の申し入れをいました。支配および担当プランナーち会いのもと、受理されています」
「か、解約……!?」
旬の顎がれたようにがった。
「結婚式は、全面止です」
「ま、待てよ美咲! 違約はどうなるんだよ! 百万以かかるんだぞ!?」
自分の保。
最まで、この男のからるのはと世体のことだけだった。
「ごください」
私は笑を浮かべ、内訳を旬の先に落とした。
「共同座から無断で引きされた私の貯万円は、以内に私の個座へ全額返還してください。
広告
すでに代業者側へは法続きの通告を済ませており、業者からの返分も含め、あなたが責任を持って精算すること」
旬は息を呑んだ。
「そして、式のキャンセル料百万円。契約名義は郎である神旬さん、あなた単独です。私には切の支払い義務はありません」
「そ、そんなの横暴よ!」
恵子がちがり、震える指を私に突きつけた。
「勝に止にするなんて! 親戚への説はどうするのよ! 神にを塗る気!?」
私は恵子の目を、正面から見据え返した。
「嘘の台本で世体を守ろうとした瞬に、あなた方の面子など、とっくに々に砕け散っています」
恵子は言葉を失い、喉を鳴らして座布団のに崩れ落ちた。
親戚の誰も、を差し伸べようとはしなかった。
私は栄介と叔母に向き直り、完璧な角度でく礼した。
「叔父様、叔母様。本はお見苦しいところをお見せし、貴なおを奪ってしまいましたことをお詫び申しげます。神の皆様の、今のご健勝をお祈り申しげます」
度と、この族の敷居を跨ぐことはない。
私は鞄を抱え、踵を返した。
障子をけ、料亭の廊へを踏みす。
背から、旬のけない叫び声と、恵子の泣き喚く声が追いかけてきた。
だが、そのどれも、もう私のにはミリも届かなかった。
料亭のへると、たいのが通り抜けた。