"孤児の私に、婚約者が買い与えた「偽物の両親」" 第10話
「幼い頃にしご苦労されたようですが、ご派なご親族に切に育てられたそうで。当の主賓席には、成におまいのご養父母様が並ばれますのよ」
息を吐きす。
私は音をてずに背筋を伸ばし、障子にをかけた。
すっと、音もなく引き戸をける。
部のにいた全員の線が、斉に私へ集まった。
座の央には、神の本筋にあたる叔父の栄介。
その隣に叔母。
座側には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる恵子と、隣で居悪そうにネクタイを弄る旬が座っていた。
私の黒いスーツ姿を見た瞬、旬の顔から血の気が引いた。
「……美咲?」
恵子の眉が、ぴくりと吊りがった。
「美咲さん、何ですかその格好は。今は両の最終確認のお席ですよ? お着物をお召しになりなさいと、あれほど……」
「こんにちは。遅くなり申し訳ありません」
私は恵子の言を平然と聞き流し、空いていた末席に滑り込んだ。
座布団のへ正座し、バッグから冊の青いファイルを取りす。
「美咲、その荷物……」
旬が掠れた声で囁いた。
目が激しく泳いでいる。
「神の皆様。本の顔わせに先ち、結婚式に関する事項の共がございます」
私は誰にもを挟ませず、座卓を滑らせるように、叔父の栄介、叔母、恵子、旬のにファイルを冊ずつ配った。
最の冊を、自分の元に置く。
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表には、黒のゴシック体できく印字されていた。
『儀式代理基本業務委託契約・婦養父母役配仕様(御見積・内訳細付)』
部の空気が、瞬で凍りついた。
「……おい、美咲さん」
叔父の栄介が、を隠そうともせず眉を険しく歪めた。
配られたファイルには指本触れず、私のビジネススーツを瞥して吐き捨てる。
「親族の顔わせというれの席に、なんだその非礼ななりは。いきなり類を配り始めて……神の礼節を何だと得ているんだ」
「兄さんの言う通りよ!」
恵子が待ってましたとばかりにを乗りし、座卓をのひらで叩いた。
「美咲さん、非常識にも程があります! 叔父様方に対して失礼でしょう! 旬、くそのを回収しなさい!」
「失礼を承で申しげております」
私は旬が伸ばしてきたをたく払いのけ、栄介の正面を射抜いた。
「栄介様。このでご確認いただかなければ、来の挙式当、神の親族である栄介様ご自が、取り返しのつかない醜聞に巻き込まれることになるからです」
「……何だと?」
栄介の表が、侮蔑から警戒へと変わった。
世体と自らの名を何よりんじる男だ。その言葉の毒を無できるはずがなかった。
栄介は忌々しそうに老鏡をかけ、元のファイルをいた。
「株式会社ファミリー・パートナーズ……親族代契約……?」
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目を読みげた瞬、栄介のがぴたりと止まった。
「発注者、神旬……婦両親役の派遣……着万円……?」
栄介のく濁った声が、静まり返った座敷に落ちる。
隣に座る叔母が息を呑み、を引いた。
「旬。これは何だ」
「お、叔父さん、それは……!」
旬の顔から血の気が引いていた。額からぼたぼたと脂汗が落ちる。
「私の承諾なく、旬さんが独断で結んだ契約です」
私は淡々と、しかし全員のに届く瞭な声で告げた。
「枚目の役者用指示をご覧ください。神旬さんの直で、私のき両親のを消しり、架空の資産夫婦を仕てげる指示がき込まれています。そして枚目。支払われた万円は、私個の活座から無断で流用されたものです」
「ば、馬鹿な……!」
栄介の顔が、今度は屈辱とりで赤黒く染まり始めた。
彼がっているのは、私の境遇のためではない。
自分自が『ペテンの共犯者』として主賓席に座らされようとしていたことへのりだった。
「恵子!」
栄介の声が、料亭の静寂を引き裂いた。
「お、さっき成の派なご養父母だと自げに話していたのは……で買った偽親のことだったのか!? 神の本である私を、親戚を、詐欺の片棒に担ぐ気だったのか!」
「ち、違います兄さん! 私はらなかったの!」
恵子は完全に狼狽し、隣の息子の肩を掴んで揺さぶった。
「旬が! 旬が勝にやったことよ! 私はただ、親戚に恥ずかしくないお席にしなさいと言っただけで……!」