"孤児の私に、婚約者が買い与えた「偽物の両親」" 第7話
文恵先や莉奈が何か言おうものなら、スタッフを使って力づくで排除する筈までえられていた。
指先がたく震える。
だが、シャッターを切るは決してブレさせなかった。
契約の全頁。
領収。
望の文面。
振込の控え。
枚残らず、解像度でクラウドストレージへバックアップする。
全てを元の位置へ戻し、封筒のを閉じてブリーフケースに収めた。
カチリとファスナーを閉めた瞬、浴のドアがく音がした。
「ふう、さっぱりした」
タオルで髪を拭きながら、旬がリビングに戻ってくる。
その顔には、の懸案事項を片付けた男特の、呑気な緩みがあった。
「美咲、は何に母さんのところへくんだ?」
「よ。お義母さんから指定されたから」
「そっか。俺はの夜、親戚の叔父さんたちへの挨拶回りでし遅くなるけど、半には実にくよ。母さんの作った台本、し細かいかもしれないけど、適当に相槌打っておいてくれよな」
「ええ」
私は微笑んだ。
鏡を見なくても、完璧な笑顔を作れている自信があった。
「丈夫よ。言句、聞き逃さないようにするから」
翌の午。
世田の閑静な宅に佇む、神ののにっていた。
な本。
入れされた松のが、扉の向こうから枝を伸ばしている。
このが誇る「由緒正しい柄」
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の象徴。
だが、その内実は、のを買い叩いて繕ったハリボテに過ぎない。
私はコートのポケットにを入れ、型のボイスレコーダーのスイッチを静かにスライドさせた。
録音ランプが赤く点灯したのを確認し、内ポケットのスマートフォンでもバックアップ用の録音アプリを起する。
インターホンを押した。
「はい」
「美咲です。お約束のおになりましたので伺いました」
数秒の沈のを置いて、解錠の音が響いた。
玄関をがると、廊の突き当たりにある客に通された。
のには季節れの掛け軸が掲げられ、座卓のには、すでに数枚のプリント用が然と並べられていた。
「座りなさい」
座に陣取った恵子は、元のお茶を啜り、私に目を向けた。
された湯呑みからは、ぬるい茶の匂いが漂っている。
「昨はし取り乱したそうね。旬から聞いたわよ」
「……ご配をおかけしました」
私は膝のにを置き、殊勝にをげた。
「いいのよ、分かれば。あなたのような育ちの方には、世体というものがどれほどいものか、像もつかなかったのでしょうから」
恵子はい唇を歪め、座卓のの類を私のへ滑らせた。
『披宴当における婦側親族対応領』
表をめくると、びっしりと活字が敷き詰められていた。
叔父夫婦の職業、美咲が育ったとされる成の邸宅の取り、幼期の習い事、果てはき両親の法をどこで済ませたかという虚偽の表まで。
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「私のりいの議員さんや、親戚の鎮も勢いらっしゃるの。恥をかかせるようなことだけは絶対に許されません」
恵子は細い指先で面をとんとんと叩いた。
「あちらの役者さんたちには、旬を通してすでにこの内容を叩き込んであるわ。あなたも、自分ののにこのいちを叩き込みなさい。いい? あなたは恵まれた親族に引き取られて、何自由なくされて育ったの。施設だの、親が事故しただの、そんな気な話はこれっぽっちもしちゃダメよ」
私は類に線を落としたまま、静かにをいた。
「お義母さん」
「何よ」
「しお聞きしてもよろしいですか。もし、披宴の席で、親戚の方から戸籍や本籍のことを尋ねられたら、どう答えるおつもりですか?」
恵子はあからさまにを鳴らした。
「戸籍? 誰が披宴の祝いの席で、の戸籍謄本なんて改めるのよ。神の親族はね、皆それなりの教養と分別を持った方ばかりなの。表向きの体裁さえ完璧にっていれば、無粋な詮索なんて誰もいたしません」
「……体裁、ですか」
「当たりでしょう」
恵子はを乗りし、私を品定めするように細い目を向けた。
「美咲さん、あなた自分がどれだけ恵まれているか分かっているの? 親もいない、施設で育ったような元の確かな女性をね、神の男の嫁として迎え入れてあげるのよ? 普通なら払いよ。