"孤児の私に、婚約者が買い与えた「偽物の両親」" 第3話
彼女の名が、どこを探しても見当たらない。
招待客リストの備考欄に、極の赤字でメモが残されていた。 『郎様より指示:席数調のため席見わせの方向で調』
「……調?」
声が震えた。 莉奈は先、自分の料からやりくりして買ったのだと、嬉しそうにドレスの写真を見せてくれたばかりだった。 私がきりで嫁ぐことを配して、作りのリングピローまで作ってくれた親友を。
あの男は、私のらないところで、勝に「しないもの」として処理していた。
ガチャガチャと、激しくドアノブが揺れる。
「美咲! けてくれ! 頼むから話しおう!」
旬の焦燥しきった声が廊に響く。 私はく息を吸い、鏡に映る自分の顔を瞥した。
泣いてなどいない。 瞳の奥にあるのは、徹な計算と激しいりだけだ。
鍵をし、ドアを半歩だけけた。 旬が崩れ込むように部へ入ってきて、すぐさま背でドアを閉める。
「美咲、悪かった。でも聞いてくれ。席のことなら、あとでどうとでも言い訳ができるから――」
「莉奈の名を消したわね」
私のい言に、旬の言葉が途切れた。
「え……」
「文恵先を配膳の隣に追いやって、莉奈の席を消した。どうして?」
「それは……あのがいたら、どうしても話がるだろ? 児童養護施設の話がさ!」
旬は髪を乱暴にかきむしり、苛ちを隠そうともせずに吐き捨てた。
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「うちの親戚は堅いんだよ! 父さんの実は方の旧だし、母さんは世体を何より気にするなんだ! そこに『親のいない施設育ちの仲たち』が堂々と主賓面して座ってたら、式が終わった、俺がどれだけ親族から責められるか分かるか!?」
「あなたが、責められる?」
「そうだよ! 俺だって板挟みで限界なんだよ! 母さんは『そんな自のれない女を連れてくるな』って毎騒ぐし、でも俺はおと結婚したいから……だから、形だけでもえようとしたんじゃないか!」
旬は両を広げ、まるで被害者のような顔で私を見ろした。
「母さんには、美咲のい親戚が養父母として名乗りてくれたって伝えてある。相の事務所にもいを払って、当の台本も完璧に作ってもらった。文恵さんたちには、ちゃんとお詫びの品を送ればいい。それで全員が丸く収まるんだよ!」
全員が丸く収まる。 その「全員」のに、私と、私を育ててくれたたちの尊厳は微も含まれていなかった。
私の過を消しり、切な恩を隠し部に押し込め、友を排除する。 それが、この男の言う「解決」だった。
「いおって、いくら払ったの?」
私のたい問いに、旬は瞬、言葉を詰まらせた。
「……え?」
「代会社にいくら払ったのって聞いてるの。契約はどこ?」
「そんなの、今は関係ないだろ! 費用のことは俺が――」
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「関係あるわよ」
私は化粧台ののバッグから、自分のスマートフォンを取りした。
「席次表の変更指示に、代会社の契約番号がいてあった。『ファミリー・パートナーズ』への発注名義、そして支払元。どのアカウントから振り込んだの?」
旬の瞳が、らかに揺して揺れた。 線が私の元から逃げ、泳ぐ。
「……俺の、遣いからだよ」
嘘をつく、このは必ずの眉をわずかにげる。 付きってきて、見過ごすはずがなかった。
「もう度聞くわ。どのおを使ったの?」
「美咲、いい加減にしろよ!」
旬は声を荒らげ、逃げるようにドアノブにをかけた。
「今はリハーサルのて直しが先だろ! 親戚だってもう集まり始めてるんだ! おがを張って式をぶち壊す気か!?」
ガチャリとドアをけ、旬は逃げるように廊へとびしていった。 い音がざかっていく。
引き止めはしなかった。 言い逃れの言葉をこれ以聞く必はない。
震えるでスマートフォンを操作しようとした瞬、画面が激しく滅した。 通バーに、莉奈の名が表示される。
メッセージが件。 そして、本の音声ファイル。
『美咲、急にごめん。ずっと言えなかったことがある』 『先週、神さんから個別に呼びされたの』 『これ、聞いて。お姉ちゃんにも相談したんだけど、やっぱり美咲に黙ってるのは違うとった』
指先がたく張る。
私は息を潜め、イヤホンをの奥へと押し込んだ。