"5万人が称賛する義母の、悪嫁は私だった" 第8話
午半に横になったはずだ。。まとまって、以も眠っていた。
信じられなかった。産半、細切れにかを貪るように識を失うことはあっても、誰の気配も気にせず、続けて眠れたことなど、ただの度もなかった。
の芯を覆っていた鉛のような痛みが、嘘のように消えている。界がクリアで、部の隅にある箪笥の目がはっきりと見える。
その瞬だった。
喉の奥から、うっ、と押し殺したような嗚咽が込みげてきた。
ボロボロと、粒の涙がシーツに落ちる。胸の奥を激しくかきむしられるような、激しいの波が押し寄せてきた。
しいのではない。悔しいのでもない。
「私……ただ、眠りたかっただけなんだ……」
声にした瞬、涙が止まらなくなった。両で顔を覆い、声を押し殺して泣いた。
私は、豪邸にみたかったわけじゃない。贅沢なが欲しかったわけでも、夫に級なディナーに連れてってほしかったわけでもない。
ただ、続けて眠りたかった。として当たりの、体力の回復と休息が欲しかった。
たったそれだけのことが、なぜあのでは「怠惰」と呼ばれなければならなかったのか。なぜ「未熟な母親」と罵倒され、何万ものので晒し者にされなければならなかったのか。
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「美紀……?」
すりガラスの引き戸が、そっといた。お盆のに湯呑みを載せた父が、戸でおずおずとち尽くしていた。
私がシーツので肩を震わせて泣いているのを見て、父のが目に見えて刻みに震えした。
「お……どこか痛むのか? 具でも悪いのか……?」
「お父さん」
私は涙を拭おうともせず、真っ赤に腫れた目で父を見つめ返した。
「私、寝たの」
「え……?」
「眠れたの、半ぶりなんだよ」
父はお盆を持ったまま、言葉を失った。
「と空を産んでから、ずっと以続けて眠れなかった。体がちぎれそうに痛くて、が割れそうに痛くて……だから、お父さんに話したの。週だけでいいから、実に帰らせてほしいって」
私は膝のに置いた両を、きつく握りしめた。
「どうして、あんなこと言ったの?」
父の肩が、びくりとねた。
「どうして……『帰ってくるな、お義母さんを切にしなさい』なんて言えたの? 私、実の娘だよ?」
父の顔から、急速に血の気が引いていった。持っていたお盆がカタカタと音をてる。父は畳のに膝をつき、お盆を横に置くと、く、くを畳に擦りつけた。
「すまなかった……美紀、本当に、すまなかった……!」
絞りすような、老いた父の謝罪。だが、私は「いいよ」とは言わなかった。許してしまえば、父の犯した罪の輪郭が曖昧になってしまうからだ。
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「お父さんは、お義母さんの言葉を信じたの? 私が育児を放棄して逃げそうとしてるって、本気でったの?」
「……いたく、なかった」父は畳に額をつけたまま、震える声で言った。「だが……あのお義母さんから『別居になれば親権で揉める』『実が娘をそそのかしたとなればで利になる』と言われて……私には、法律のことも何も分からなくて……」
「分からなかったら、私に聞くべきだったでしょう!」
私の鋭い声が、静かなに響き渡った。
「どうして私に本、確認の話をくれなかったの!? 『美紀、向こうからこう言われたけど本当なのか』って、なぜ私の言葉を聞こうとしなかったの!?」
父は顔をげられない。肩を激しく震わせ、畳のにぽたぽたと涙を落としている。
「……怖かったんだ」父は、掠れた声で告した。「おが婚して、傷物になって、世からろ指を指されるのが怖かった。お母さんがきていた頃は、どんなに苦しいことがあっても、文句つ言わずに耐えてを守ってくれた。だから……女がすれば、波をてなければ、族の形は保てるんだと……そうい込んでいたんだ……」
「お母さんは、して幸せだったの?」
私の徹な問いに、父が息を呑んだ。
「お母さんが何も言わなかったのは、幸せだったからじゃない。選択肢が奪われて、諦めていただけでしょう? お父さんは、お母さんにもそうやって『』を押し付けて、波がたない庭の平を享受してきたの?」
父は完全に言葉を失い、ただ呆然と涙を流すことしかできなかった。