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"23年逃げた母が、娘のスマホの中にいた" 第11話

「私じゃないわ! 全部この男がやったことよ! 私は京へついてきただけ! 妹を殴って首を絞めたのも、をハサミで切り刻んだのも、全部志がやったのよ!」

「おい、真由美! てめえ、何言ってやがる!」

取り押さえられそうになった孝志が、の妻を鳴りつけた。

「京へ乗り込んで志保の娘の学にビラ撒くって脅せって言ったのは、おだろうが! お袋の通帳を取りげたのだって――」

「おとも、署で伺います」

捜査員のが、孝志の腕を力く、確に拘束した。

カチャリ、と乾いた音が落ちる。

の首にたい属がった瞬、あれほど傲だった兄の体から、完全に芯が抜けた。

「志保……頼む、志保!」

引きずられるように歩かされながら、孝志がすがるような目を私に向けた。

みっともない涙が、油の浮いた頬を伝い落ちる。

「悪かったよ……俺が悪かった! 頼むから取りげてくれ! 刑務所なんて入ったら、俺のは終わりなんだよ!」

にたされた私を嘲笑い、首筋に爪をてていた男の、これが本性だった。

力関係が逆転した途端、自らの罪のさに耐えかねて、被害者に許しを乞う。

私は、歩もかなかった。

「兄さん」

たく澄んだ私の声が、会議に響いた。

「あなたは昔から、自分で壊したものの始末を、度も自分でつけたことがなかった。……これが、分の代償です」

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孝志は息を呑み、絶望に目を見いたまま、捜査員に促されて部をてった。

真由美の見苦しい泣き叫ぶ声が廊の奥へとざかり、い防音扉が閉まる音とともに、完全に遮断された。

会議に、静寂が戻ってきた。

さんが目をくし、私の肩を力く叩いた。

「志保ちゃん、よくやったな。正介さんも、葉ので笑っているはずだ」

「ありがとうございます、さん」

私はくをげた。

続きの類にサインを済ませ、私たちはビルの正面玄関へとりてきた。自ドアを抜けると、たいのが私の頬を撫でた。

ビルのに広がる青空を仰ぎ、私はく息を吐きした。もの、私の肺の奥底に溜まっていたたいが、気に吐きされたような覚だった。

だが、そのだった。

私のコートのポケットので、スマートフォンが鋭く震え始めた。画面を見ると、実の局番からだった。

まだ終わっていない。故郷に残る、あの最の呪縛との決着をつけなければならなかった。

画面に点滅する局番を、私はえ切った指で見つめていた。

の、あのいあいの。に私が捨て、そして数に私をのように拒絶した、実の固定話だった。

隣で健が、私の張った肩を抱き寄せる。美咲は唇をきつく噛みしめ、私の元をじっと見つめていた。

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逃げる必は、もうどこにもない。私は画面をスワイプし、スピーカー通話のボタンを押した。

「……はい、です」

名乗った瞬、受話器の奥から鼓膜を突き破るような切り声が破裂した。

『志保! お、何てことをしてくれたんだい!』

母の声だった。昨夜の話で見せた酷な計算も、美咲を懐けようとしていた猫撫で声も、跡形もなく吹きんでいた。そこにあったのは、い通りにいかなくなった老の、剥きしの錯乱と憤だった。

『孝志が警察に捕まったって、さっき連絡があったんだよ! 京の警察に錠をかけられたって! 真由美さんも緒に連れてかれたって!』

母の荒い呼吸が、スピーカーを通じてリビングの空気を濁らせる。

『お、実の兄を警察に突きしたのかい!? 内に恥をかかせて、を潰す気かい! 今すぐ警察にって取りげてきなさい! 「私の勘違いでした」って言えば済む話だろうが!』

喉の奥が、からからに渇く。だが、臓の鼓は驚くほど静かだった。数までの、母の声を聞くだけで指先が震え、胃が痙攣していたあの恐怖は、どこにもなかった。

「取りげるわけがありません」

私の声は、の朝の氷のように平坦だった。

「兄さんと真由美さんは、私の分証を偽造し、父の遺産を勝に売りばそうとしました。

な犯罪です」

『犯罪だなんて袈裟なことを言うんじゃないよ!』

母は叫び、激しく咳き込んだ。

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