"23年逃げた母が、娘のスマホの中にいた" 第10話
分。会議のドアがき、女性社員に案内されての物が入ってきた。
の丈にわない物のスーツを着込み、脂ぎった顔に品な笑みを浮かべた兄・孝志。そして、原のアニマル柄のコートを羽織り、落ち着きなく部の調度品を見回す義姉・真由美だった。
は通されるなり、革張りの子にふんぞり返った。机のの切を、飢えた獣のような目で見つめている。
「いやあ、部さん! お待たせしましたねえ」
孝志の品のない胴声が、控のスピーカーから鮮に響いてきた。
「のの件、いよいよ今で決着ですな! 妹の志保も京にいるんですがね、昨の夜から急に体調を崩しまして。兄である私に全権を委任するというので、必な類は全部私が揃えて持ってきましたよ」
そう言いながら、孝志は鞄のから誇らしげに枚のプラスチックカードと、印鑑証の束を取りした。
テーブルのに滑り込ませたのは、精巧に作られた偽造の分証だった。私の顔写真が貼り付けられ、名とが印字されている。
「ほら、妹の本の証ですよ。これと、包括委任状があれば何の問題もないでしょう。さあ、契約にサインを交わしましょうや!」
真由美が横からを挟んだ。
「付けの切、今すぐ振りしていただけるんでしょうね? こっちも々と入用なもんで!」
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隣につ捜査員たちが、無線を握り直す。相馬弁護士が私を見て、静かに頷いた。
「志保さん、きましょう」
「はい」
私はく息を吸い込み、背筋をまっすぐに伸ばした。ドアノブにをかけ、押しける。
カツン、と私のパンプスの音が、静まり返った会議に乾いて響いた。
子の背もたれに寄りかかっていた孝志が、怪訝そうに振り返る。そして、その顔から瞬で血の気が引いた。
「……あ?」
孝志の喉から、の抜けた声が漏れた。そのろから、ダークグレーのスーツを着た相馬弁護士、そして漆塗りの箱を切そうに抱えた元のさんが姿を現す。
「だ、の爺さん……!? な、なんでここに……」
真由美が子からね起き、毛皮のコートを掻き抱いた。
「な、何よあんたたち! 部者が何で入ってくんのよ! ここは数億円のビジネスの話をしてんの! 警備員呼びなさいよ!」
「志さんですね」
法務部の徹な声が、静まり返った会議の空気を切り裂いた。
法務部は机のの偽造カードには指本触れず、背の相馬弁護士とさんへ線を向けた。
「弊社としては、正当な単独所権者である志保様ご本、ならびにその代理弁護士のち会いのもとで、事実確認をわせていただきます」
「……は? 本……?」
孝志の脂ぎった顔から、急速に血の気が引いていく。
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真由美が弾かれたようにちがり、子がを激しく擦る嫌な音をてた。
「な、何言ってるのよ! 志保は体調崩してホテルで寝てるって言ったでしょ! ここは数千万の契約のよ、部者を勝に入れないで頂戴!」
「兄さん、真由美さん」
私は静かに歩みた。
の濁った線が、私を捉えた瞬、が止まったように直した。
「……志保?」
孝志の喉から、掠れた空気の音が漏れる。
「私の分証を、どこの誰に偽造させたのですか」
私はバッグから、本物のマイナンバーカードと、今朝交付されたばかりの印鑑登録証をし、卓に置いた。
「私の本物の証は、ここにあります。兄さんが持ってきたそのカードは、公文偽造のらかな証拠です」
「ふ、ふざけんな……!」
孝志がちがり、激昂して私を指差した。
だが、その指先は目に見えて震えていた。
「お、実の兄を嵌めやがったな!? 誰のおかげで今まで京で呑気に暮らせてたとってんだ! 親の恩も忘れて――」
「そこまでにしてください」
会議の扉の脇に控えていた名の男が、静かに歩み寄った。
胸元から提示された黒い帳。
「警庁捜査課です。志さん、真由美さん。印私文偽造、同使、ならびに詐欺未遂の容疑で、ご同願います」
「け、警察……!? 嘘でしょ!?」
真由美が裏返った鳴をげ、ずさりした。
そのがテーブルの脚に引っかかり、無様にへ倒れ込む。