"23年逃げた母が、娘のスマホの中にいた" 第9話
准護師の推薦も、おばあちゃんがに鳴り込んで取り消させたんでしょう?」
『……あの子が、そんな鱈目を言ったのかい』
母の声の温度が、瞬で氷点まで落ちた。先ほどまでの甘い響きは完全に剥ぎ取られ、く濁った怨嗟がスピーカーからいしてくる。
『美咲ちゃん。おまで、あのな女に毒されたのかい』
「答えて、おばあちゃん。お母さんが盗んだっていうお、いつ、どこから持ちしたの?」
『のことにを挟むんじゃないよ!』
突然の声が、静まり返った法律事務所に破裂した。美咲の肩がビクッとねる。だが、娘は話から目を逸らさなかった。
『孝志が京の学をて、派にを継ぐはずだったんだ! あの子が作ったの借くらい、妹の志保がで働いて穴埋めするのは当然だろうが!』
相馬弁護士が元のメモ用に、素くペンをらせる。
『女のくせに気に資格なんか取って、京へ逃げられたら困るから止めてやったんだよ! 親の言うことを聞かない来損ないを、誰のおかげで育ててもらったとってんだ!』
自らを滑らせた。もの、私を棒猫と罵り、親戚に嘘をばらまいてきた理由のすべてが、母自のからのに引きずりされた瞬だった。
私の両目がくなり、爪が掌にくい込む。
広告
隣に座る健の顔が、りで真っ赤に染まっていた。
「……じゃあ、お母さんがおを持ち逃げしたっていうのは、嘘だったんだね」
美咲の静かな追及に、母は受話器の向こうでヒステリックに叫びてた。
『嘘も本当もあるもんか! 男を傷物にできるわけがないだろう! 親戚には志保が悪者になってくれたほうが都がよかったんだよ! あの子はの犠牲になるためにまれたんだからね!』
これ以、聞く必はなかった。私は美咲の震える肩を抱き寄せ、テーブルののスマートフォンにを伸ばした。
通話に向かって、私はぶりに母へ言葉を放った。
「澄さん」
話の向こうの狂乱が、ピタリと止まった。
『……志保?』
「あなたの言葉、すべて録音させていただきました」
『な……っ!?』
「の朝、町の発会社でお会いしましょう。兄さんと真由美さんにも、そうお伝えください」
『待ちなさい! 志保! 親に向かって何を――』
私はスピーカー通話の赤い終ボタンを、迷いなくタップした。通話が切れ、オフィスにい沈黙が戻った。
美咲が、机に突っ伏して肩を震わせ始めた。それは悔しさの涙ではなく、信じ込もうとしていたが完全に砕け散った痛みの涙だった。
「よく頑張ったな、美咲ちゃん」
相馬弁護士が穏やかな声で告げ、録音データをクラウドへバックアップした。
広告
「完璧な自です。当の名誉毀損、迫、そして今回の当求のとして、これ以の証拠はありません。の印式、完全に罠を踏ませましょう」
私はちがり、窓のの夜景を見つめた。胸の奥で燻っていたの澱が、氷のように研ぎ澄まされた刃へと変わっていくのをじていた。
曜の朝、午分。町のオフィスは、休の静寂に包まれていた。
を突くような層ビルの駐から、私たちは関係者専用のエレベーターに乗り込んだ。階の役員フロアで扉がくと、そこには発会社の法務部と、スーツを着こなした屈な体躯の男たちが待していた。
男たちの無駄のないのこなしと鋭い。警庁捜査課の私捜査員たちだった。
「様、準備はすべてっております」
法務部がくをげた。
「昨夜、相馬先からいただいた証拠と音声データを確認いたしました。弊社としても、反社会勢力との繋がりが疑われる物や、無権利者からの正取得など断じて過できません。警察の方々と連携し、徹底に対処いたします」
「よろしくお願いいたします」
私はをげた。案内されたのは、会議に隣接する部だった。壁面がマジックミラーになっており、内の様子がに取るようにわかる。
な枚板のテーブルのには、数億円の売買に関する分い契約類と、付け千万円の切が置かれていた。