みかん小説
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"23年逃げた母が、娘のスマホの中にいた" 第4話

美咲は両でを塞いだまま、に崩れ落ちていた。

「美咲、これを見なさい」

私は玄関へ戻り、に転がっていたダンボール箱をリビングの央へと引きずってきた。 カッターの刃をし、頑丈に巻かれた布ガムテープに突きてる。

バリバリと、鈍く引き裂かれる音が響く。 箱の隙から、分の埃と、湿ったカビの悪臭が噴きした。

「見なくていい、志保!」

健が止めようとしたが、私は箱の蓋を力任せに押しけた。

番に詰め込まれていたのは、に浸されたように汚れた、数の私のブラウスとスカートだった。 ハサミでズタズタに切り裂かれ、雑巾のように丸められている。

そして、その。

「……っ!?」

美咲の喉から、い鳴が漏れた。

箱の底面に散らばっていたのは、吹のような無数のい片だった。 福沢諭吉の顔が、原型を留めないほど細かく、無残に寸断されている。

「健さんがね」

私の声は、氷のようにたくなっていた。

「ぶりに帰る私に、たまには親に旨いものでもべさせてやりなさいって、タンス貯から持たせてくれた万円よ」

美咲が、震えるを伸ばしかけて、止めた。

切り刻まれた万円札の残骸のに、枚の細い半が放り込まれていた。 墨汁の太い文字で、憎悪を込めてき殴られた言葉。

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『棒娘へ。たった万で親を買う気か。親を捨てるなら、これまでの迷惑料百万円を括で支払え』

「これがおばあちゃんのの、本物の姿よ」

私はコートのボタンをし、襟元をきくいた。 リビングの蛍灯のに、私の首筋がわになる。

鎖骨から喉仏にかけて、くっきりと残る赤黒い指の跡。 皮膚が擦り切れ、鬱血した痛々しい暴力の痕跡。

「美咲がね、『お母さんが帰省する』って事に連絡を入れたからよ」

美咲の顔から、完全に血の気が引いた。

「玄関をけた瞬、に歩も入れてもらえなかった。にたされたまま、あのの包括委任状に実印を押せと迫られて……断ったら、兄さんに首を絞められて、壁に叩きつけられた」

「あ……あ……」

「鞄を奪われて、の万円を見つけられて、目のでハサミで切り刻まれた。そして、このゴミを押し付けられて、のに放りされたの」

美咲の瞳から、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。

「私……らなかった……おばあちゃん、ただ、お母さんと仲直りしたいって……昔のことを謝りたいって言ってたから……だから、チケット取れたよって教えちゃったの……」

美咲はそのに膝をつき、両で顔を覆って号泣し始めた。

「ごめんなさい……ごめんなさい、お母さん……! 私のせいで……私が、お母さんをあんな目に……!」

歳の娘の、無ゆえの善。

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だがその善こそが、あの怪物たちにとって最も都のいい凶器になったのだ。

私は美咲のにしゃがみ込み、そのえ切った両肩にを置いた。

「泣かないで、美咲」

「でも……!」

「あなたが謝る必はない。あなたは、ただ族を信じたかっただけ。悪いのは、その気持ちを利用して私を罠に嵌めたあのたちよ」

私は美咲の目を、まっすぐに見据えた。

「でもね、美咲。つだけ約束して」

美咲が涙に濡れた顔をげる。

「これからは、私のことでも、何でも、の誰かじゃなくて私に直接聞きなさい。私が全部、話すから。もう度と、あなたに何も隠さない」

美咲は嗚咽を漏らしながら、何度も、何度も頷いた。

「……、病院へくぞ」

健が、私の肩を抱き寄せた。その瞳には、かつて見たことのない徹なが宿っていた。

「救急来で診断をいてもらう。警察に被害届をす。それから、弁護士のところへく。あいつらは完全に線を越えた。族のなんてぬるいもので済ませる問題じゃない」

「警察……?」

美咲がおびえたように呟いた。

「そうよ。警察よ」

私はちがった。 の震えは、完全に止まっていた。

の罪悪。 親を捨てたというろめたさ。 毎送っていた万円の贖罪。

そのすべてが、切り刻まれた幣と、首筋の激痛とともに、完全に消えっていた。 私のに残ったのは、が子を守るというたい決だけだった。

に散らばる古着のを片付けようとを伸ばした、箱の底に挟まっていた枚の茶い片が指に触れた。

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