"百万円を積まれても、他人に戻る" 第12話
運転席からりてきたのは、仕ての良いウールのコートを羽織った義母だった。
には、名果実の桐箱に入ったマスクメロンと、老舗百貨の袋。
チャイムが鳴る。
居にいた母が眉をひそめてちがろうとしたが、私はそれを制した。
「お母さん、私が対応する。葵と結を奥の部へ連れていって」
「美咲、またをげられたらどうするの」
「丈夫。あんな真似、今のあのは度とできないから」
私はスマートフォンのボイスレコーダーを起し、エプロンの胸ポケットに滑り込ませた。 録音ランプが、静かに点滅を始める。
玄関の引き戸をけた。 ドアチェーンはさない。
そこにっていた義母は、数の般若のような形相が嘘のように、満面に卑屈な笑みを浮かべていた。
「美咲さん! ああ、よかった、宅していて!」
甲い、猫なで声。
「弘から聞いたわよ! 双子の男の子なんですってねぇ!」
チェーン越しに、義母は桐箱を差ししてきた。
「これ、千疋のメロンよ。妊婦さんは体をやしちゃいけないから、等な果物をべて栄養をつけなきゃ。さあ、に入れて頂戴。事な話があるの」
私は桐箱を瞥し、線を義母の顔に戻した。
「何の用ですか」
え切った言に、義母の笑みが微かに張る。 しかし、すぐにわざとらしい溜め息をついて見せた。
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「もう、くさいわねぇ。こののことは、私だってし言葉が過ぎたと反省しているのよ? でも、あなたも悪いのよ。あんな事なことを黙っているから、こっちだって勘違いしちゃうじゃない」
喉の奥で、吐き気がせりがってきた。
勘違い。 平打ちをし、相親写真と婚届を突きつけて追いした蛮を、この老婆は『勘違い』の文字で片付けようとしている。
「男の子だとっていたら、あんなことは言わなかった」 その言葉の裏にあるのは、『女の子なら殴って追いしても当然だった』という剥きしの差別だ。
「話なら、ここで伺います」
「ち話なんてとんでもない! 藤原の事な跡取りをお腹に入れているなのよ? えたらどうするの!」
義母は引にドアの隙に体をねじ込もうとした。 私は容赦なく、ドアを体をかけて引き戻した。 ガタン、とチェーンが張り詰め、義母の指先が挟まれそうになる。
「ひっ……!」
「これ以無理に入ろうとするなら、居侵入で警察を呼びます」
義母は目を丸くし、息を呑んだ。 しかし、お腹の男児という『質』をに入れたい執が、プライドに勝ったらしい。 唇を噛み締めながら、持っていた級百貨の袋から、分いい封筒を取りした。
表きには、何もかれていない。 けれど、そのみだけでが何であるかは目瞭然だった。
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「これを受け取りなさい」
義母はチェーンの隙から、その封筒を差ししてきた。
「百万円よ」
万円札の束。 万円の帯封が本、透けて見えるほどの々しい現。
「これで、設備のったきな総病院の特別を予約しなさい。産費用も、産の肥ちのための費用も、全部このお母さんがしてあげるから」
「……何の条件ですか」
私がく問い詰めると、義母は待ってましたとばかりに顔を輝かせた。
「条件だなんて、聞きの悪い! ただね、無事に男の子がまれたら、美咲さんと赤ちゃんたちは本に戻ってくること。それが筋でしょう?」
「葵と結は?」
私が髪を入れずに問うと、義母の線がふっと泳いだ。
「あの子たちは……ほら、環境が変わるとじゃない? ここのお母さんも暮らしで寂しいでしょうし、葵ちゃんと結ちゃんは、当分の、実で預かってもらえばいいわ」
臓の奥が、たいりで凍りついた。
「置いていけ、と?」
「置いていくだなんて、言葉が悪いわねぇ!」
義母は平然と言い放った。
「男の子の育児だけでも杯になるのよ? 女の子の面倒まで本で見るなんて、私の体が持たないわ。あの子たちは所詮、いずれへ嫁ぐのの血よ。藤原の血統を継ぐ男の子たちとは、育てるの掛け方が違って当たりでしょう?」
悪気すらない。 骨の髄まで染み付いた、純粋で醜悪な選別。
子供を、性別で仕分けする。 男は本で囲い、女は実に払いげる。