"手切れ金百万、消えた一億三千万" 第5話
「しなさいよ! ここは私の息子のよ! あんたたち、自分が誰に向かってを利いてるのか分かってるの!?」
畳ので、髪を振り乱したが、裁判所の執官との警察官に掴みかからんばかりに暴れ狂っていた。
その傍らでは、美奈がメイクの崩れた顔で面にへたり込み、無効になったクレジットカードを何枚も握りしめてガタガタと震えている。
「お母様、ずいぶんと賑やかですわね」
私がハイヤーから静かにりち、理のアプローチを歩み寄ると、の血った目が瞬で私を捉えた。
「栞! あんた、警察に何を吹き込んだのよ! このたちが勝ににがり込んできて、鍵を全部付け替えるって……何の嫌がらせなの!?」
は指を突きつけ、唾をばしながら私に詰め寄ろうとしたが、即座に屈な警察官によって両腕を固められた。
「法侵入および退罪の現犯になりますよ。しくしなさい」
警察官のややかなに、は顔を真っ赤にして団駄を踏んだ。
「何が法侵入よ! ここは神崎の本宅よ! くなった主が遺してくれた、由緒正しい私たちのなのよ!」
その言葉を聞いた瞬、私のろに控えていた佐々弁護士が、法務局の公印が鮮に捺された全部事項証をの顔のに突きつけた。
「神崎さん、現実を直なさい。
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このおよび建物は、平成の購入当初より、神崎栞氏の単独所信託財産として登記されております。くなられた先代の遺産など、登記簿のどこを探しても文字もしません」
佐々弁護士は酷な事実を淡々と読みげた。
「さらに、貴女方が贅沢に浪費してきた活費、台のリース料、美奈さんの級ブランド品の購入費用……これら千万円を超える支は、すべて栞氏が個報酬からて替えて支払っていたものです。賃貸借契約も結ばれていない以、貴女方は単なる法占拠者に過ぎません」
「う、嘘よ……そんなの嘘に決まってる!」
へたり込んでいた美奈が、掠れた鳴をげた。
「お兄ちゃんは商数億のエリート経営者よ! 私たちはお兄ちゃんのおで暮らしてたのよ! なんでこのな女が……!」
「その商数億のからくりを、まだごじないのですか?」
私は美奈を見ろし、憐れむような線を投げかけた。
「事務所のクライアントの割は、私の公認会計士としてのネットワークと、私のき父の遺志を継いだ企業の方々が、私を信頼して発注してくださっていた案件よ。航平さん個の実力で獲得した仕事など、最初から割もなかったの」
美奈は息を詰まらせ、いたが塞がらないまま、青ざめて直した。
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その、けたたましいスキール音を響かせて、台のタクシーが邸宅のに急した。
ドアがねがるようにき、びしてきたのは、ネクタイを引きちぎり、顔面を蒼にした航平だった。
航平は玄関先の惨状を見るなり、崩れ落ちるように私の元へと膝を突いた。
「栞……! 頼む、嘘だと言ってくれ! 事務所が、事務所がもう終わりだ!」
航平はのついたで私のパンプスに縋り付こうとしたが、佐々弁護士の助が素く割り込み、その体を酷に押し戻した。
「航平さん、みっともない真似はおやめなさい」
「栞! だけじゃない、国税局の査察官が事務所に入ったんだ! 取引先は全員契約解除を通告してきて、違約の請求がのように積みがってるんだよ!」
航平は涙とを垂らしながら、狂ったようにアスファルトに額を打ち付けた。
「全部僕が悪かった! 母さんも美奈も、今すぐ実のアパートに追いすから! 梨との関係も今すぐ清算する! だから頼む、会社を助けてくれ! おがいなきゃ、僕は何つできないんだ!」
かつて傲の限りを尽くし、私を見していた男の、あまりにも無残でれな姿だった。
そのに居わせた隣のたちや、荷物を運びしていた作業員たちから、ややかな失笑と軽蔑の線が航平へと注がれる。
「航平……あんた、何をけないこと言ってるの!」
が切り声をげたが、その声には先ほどまでの威勢はなく、底れぬ恐怖が混じっていた。