"手切れ金百万、消えた一億三千万" 第3話
会社の当座勘定に残された現残は、億千百万円。
航平はこのが、すべて自分のデザインセンスと営業力によって稼ぎされた純利益だと盲信していた。
だが実態は、私が個の税理士事務所を通じて請け負っていた企業社の財務コンサルティング報酬を、事務所の対信用を維持するために無利息で貸し付け、プールしていた資に過ぎなかった。
私の指先が、切の躊躇なくキーボードのを速でう。
事に公正証として作成してあった『銭消費貸借契約・特約条項』に基づき、代表取締役のな背任および契約違反を理由とする、貸付億千万円の即期限の利益喪失続きを発させた。
画面の央で、送処理を示すバーが滑らかに端へと到達する。
億千万円の資が、神崎デザイン事務所の座から、私の個信託専用座へと瞬に引き揚げられた。
事務所の当座預に残された残は、わずか千百万円。
そして、この座から自引き落としされる予定の請求は、表参の等に構えるオフィスビルの賃、そして注のデザイン制作会社や印刷所への支払いで、計千百万円に達していた。
「差し引き、千百万円の資ショートよ。
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航平さん、あなたの華やかなビジネスの幕引きよ」
私は淡に呟き、続いて画面を法クレジットカードの管理ポータルへと切り替えた。
本会員である私の名義から発されていた枚の追加族カード――航平、、美奈に持たせていた限度額無制限のプラチナカードを、すべて『紛失・正利用の疑い』として利用止に設定した。
全程を完するまでにしたは、わずか分だった。
私の綿密な計算よりも、はるかに迅速に、そして音もなく罠の網は絞りげられた。
ハイヤーは首都速を抜け、世田の級宅へと滑らかに滑り込んだ。
亜のコンクリート打ち放しが美しい、階・階の堂々たる邸宅。
正のな銘板には、「神崎」の文字が誇らしげに刻まれている。
玄関のスマートキーを解除してを踏み入れると、広な吹き抜けのリビングには、が画廊で衝買いした悪趣な彫刻や、美奈が脱ぎ捨てた毛皮のストールが散乱していた。
私は自分の音を響かせながら階の主寝へ向かい、クローゼットから事に用してあった頑丈なスーツケースつを引きした。
私の私物である類、母の形見のジュエリー、公認会計士の登録証、そして何よりも決定な証拠となる類の束を然と詰め込んでいく。
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斎の奥に隠された耐庫の暗証ダイヤルをわせ、い扉をいた。
そこには、世田のおよび建物の登記識別報通、神崎デザイン事務所の全株式の譲渡担保契約、そして航平が過にわたって繰り返してきた裏帳簿と使途の領収が、完璧な系列順にファイリングされていた。
私はそれらすべてを鞄に収めると、机のに枚の質な便箋を残した。
『鍵の管理権は、すべて私の代理弁護士に預託しました。産の占権については、、京方裁判所の執官より正式な退勧告が届きます。神崎栞』
リビングのイタリア製ガラステーブルの央にそのメモを置くと、私は着の欠片もなくなったをにした。
はいつのにかがり、夜空にはたいが青く冴え渡っていた。
翌朝、午。
港区青の超層タワービルにある私の個事務所「神崎アソシエイツ」の特別会議で、私は淹れたてのエスプレッソのりを静かに楽しんでいた。
窓には、朝のを浴びて輝く京の並みがどこまでも広がっている。
私の対面には、髪を綺麗にえた佐々弁護士と、メインバンクである都信託の融資統括部・氏が、厳粛な面持ちで着席していた。
「栞さん、京裁への仮処分申請、ならびに産の保全執命令が、先ほど午ちょうどに正式に受理・発令されました」
佐々弁護士が、裁判所の赤い公印が鮮に捺された決定通の束をテーブルに並べた。