"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第17話
事故からヶが経過した初。
主治医から「骨は完全に癒しました。今でリハビリ通院は終です」と告げられた。
松葉杖は、もう必なかった。
を踏みすと、微かな張りはあるものの、自分の体をしっかりと支えて面を蹴ることができる。
病院からの帰り、私はマンションの郵便ポストをけた。
チラシの束のに、枚だけ、見覚えのある歪んだ跡のハガキが混ざっていた。
差は、母の千代子だった。
エレベーターに乗り、部に戻ってから、私はコートを着たままハガキの裏面に目を落とした。
震える文字で、便箋の罫線も無してかれたい文章。
『真由美へ。健たちは度も顔を見せません。あんたがにかけたあの、を奪おうとしたこと、本当にすまなかったとっています。、あんたに背負わせて、悪かったね。寒くなってきたから、体に気をつけておくれ』
文字の端々が、涙で滲んだように歪んでいた。
、私が喉からがるほど欲しかった、母からの謝罪の言葉。
「ごめんね」という、たったの反省。
だが、それを読んだ私のには、何のもまれなかった。
涙もなければ、胸を締め付ける痛みもない。
ただ、「ああ、届いたんだな」という、のを読んだのような平坦なしかなかった。
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失われたは戻らない。
集治療で呼吸器をつけられていた私から、を奪おうとしたあの瞬の母のたい瞳を、私は忘れることはない。
許す必はない。
親子の縁を法に切ることはできなくても、の境界線を度と越えさせないことはできる。
私は机の引きしをけ、母からのハガキを、読んだ本を棚に片付けるような気軽さで、引きしの奥へと仕い込んだ。
返事はかない。
面会にもかない。
毎万千円の費用を械のように振り込み続けることだけが、私がこのに提供する最の、そして唯の「関係」だった。
翌週、私は会社に復帰した。
デスクのに積みになっていた伝票と決算類。
同僚たちが「主任、無理しないでくださいね」と温かい声をかけてくれる。
数字をわせ、キーボードを叩く常が、これほどおしいものだとはらなかった。
休暇の残数をシステムで確認すると、事故の休職で消化しきれなかった数が、まだく残っていた。
私は迷わず、来の末に週の連続休暇申請を打ち込み、承認ボタンを押した。
発の朝。
京は抜けるようなれだった。
羽田空港へ向かう、私はクローゼットの鏡のにった。
元にあるのは、美が取り戻してくれた、父の形見の田杉の箱。
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蓋をけ、純のネックレスを取りす。
指先で擦ると、属は体温を吸ってじんわりと温かくなった。
「独だから」「子どもがいないから」と、誰かに譲る必などない。
これは、父が私ののために遺してくれたいであり、私が自分の力で守り抜いた私の尊厳だ。
私はネックレスを首にかけ、さな留めをパチンと留めた。
鏡のに映る歳の私は、病院のベッドで怯えていたあのの私ではなかった。
空港の発ロビーは、旅つ々で賑わっていた。
搭乗ゲートへ向かうエスカレーターに乗った瞬、コートのポケットのでスマートフォンがく震えた。
画面を見ると、健からのショートメッセージだった。
『姉貴、母さんの施設から今の雑費の請求が届いたんだけど。俺今マジでがなくて払えない。姉貴のほうでて替えてくれないか? 頼むよ』
相変わらずの、甘え腐った文面。
私はち止まることもなく、親指で淡に返信を打ち込んだ。
『支払いは各自の義務です。度と私に連絡しないでください。用件はすべて支援センターのさんを通しなさい』
送信し、即座に健の番号を着信拒否とブロックリストに放り込んだ。
スマートフォンを内モードに切り替える。
もう、私のを誰かに奪われることはない。
搭乗ブリッジを抜け、の座席にく腰をろした。
窓のには、の太陽に照らされた滑と、どこまでも青く広がるの空が見えていた。
誰かのためにきることを、やめたわけじゃない。
ただ、これからは私のにも、私自の居所を作りたかった。