"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第15話
私は類を母の膝のに落とした。
『サービス付き齢者向け宅 入居同』
病院から徒歩分、護師が常駐し、各部にナースコールとすりが完備された齢者向け宅の資料だった。
「誰が施設なんかに入るもんですか! 私はまだで暮らせるわよ!」
「で暮らせないから、健に縋り付いて私のを奪おうとしたんでしょう」
私は徹に、語語を突き刺すように現実の数字を並べてた。
「あなたの国民と遺族は、わせて額万千円です。このサの額利用料は、費と活支援費込みで万千円」
母の呼吸が止まる。
「差額は万千円。通院費や雑費を含めると、毎およそ万円のがます」
「そ、そんなにおがかかるなら、尚更あんたが今まで通り……」
「民法第百条に基づき、直系血族としての扶養義務は、健と私で均等に分割します」
私は元の卓を叩くこともなく、確定した数字をにした。
「私の負担額は、毎万千円。それ以は円もしません。その万千円も、あなたの座ではなく、施設の運営会社へ直接振り込みます。あなたへ自由に使える現を渡すことは、度とありません」
「な……」
「健の負担分である万千円については、支援センターを通じて健の勤務先と居へ請求を毎送付します。
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あいつが払おうが滞納しようが、それは健と施設のの問題です。私が肩代わりすることは絶対にありません」
母の顔から、完全に表が抜け落ちた。
おの管理権を奪われ、息子の財布になることも許されず、自分がかつて「たい」「世体が悪い」と蔑んでいた齢者施設へ送られる。
逃げは、完全に塞がれていた。
「健……健に話してちょうだい! 健がこんなこと許すはずがないわ!」
母は震えるでポケットからスマートフォンを取りそうとした。
私は自分のスマートフォンを取りし、画面をタップしてスピーカーホンをオンにした。
発信先は、健。
回のコールの、苛ちに満ちた弟の声が響き渡った。
『もしもし! なんだよ姉貴、荷物はもう全部しただろ! これ以何の文句があるんだよ!』
健の背から、トラックの音と、狭いアパートのい壁が軋むような活音が漏れ聞こえる。
「健。お母さんが、あなたのにきたいそうよ」
スピーカー越しに、健が息を詰まらせる気配がした。
『……は? 何言ってんだよ! こっちは畳だぞ! 呂なしの共同トイレだぞ! 連れてけるわけねえだろ!』
母が目を血らせ、私のスマホに向かって絶叫した。
「健! お母さんよ! 真由美が私を施設に放り込もうとしてるの! 助けに来て! 部の隅っこでいいから、あんたと緒にいさせて!」
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通話の向こうで、荒々しい舌打ちの音が響いた。
『母さんさあ、いい加減にしてくれよ! こっちは美に逃げられて、借取りが会社にまで話かけてきて毎本当ににそうなんだよ!』
健の鳴り声には、母親へのなど欠片も残っていなかった。
『姉貴がしてくれる施設があるなら、黙ってそこに入れよ! 俺にこれ以迷惑かけないでくれ!』
プチッ。
方に通話が切断された。
ツーツーという無質な子音だけが、具の消えた広いリビングに虚しく霊する。
母の元が刻みに痙攣していた。
「健……? 嘘でしょう、健……?」
し、甘やかし、娘の活を犠牲にしてまで守り続けてきた息子の本性が、そこにあった。
をみさない母親など、借に追われる弟にとってはただの荷でしかなかったのだ。
「千代子さん、お迎えの福祉両がに到着しております」
さんが静かに、だが抗いがたい業務な声で告げた。
「きましょう。元の段差、お気をつけくださいね」
理恵が母の子のハンドルを握り、ゆっくりと押し始めた。
母は度だけ、すがるような目で私を振り返った。
だが、私は歩もかず、ただたい瞳でその姿を見送った。
玄関のドアが閉まり、へ続くスロープを輪がりていく音が消えるまで、私のには何の傷も湧かなかった。
「様、交換作業完いたしました」