"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第5話
母の座の取引履歴の控えを精査していた私の目が、ある奇妙な規則性に留まった。
私が母の座に、活費とは別に「医療費の予備」や「の買い替え費用」として万、万とまとまった現を振り込んだ直。
数以内に、ほぼ同額の現がATMから引きされている。
引きされた所は、母の自宅くの支ではない。
健が当んでいたアパートの最寄り駅にある、コンビニのATMだった。
それが、度や度ではない。
直の記録だけでも、回以。総額にして百万円いが、母の座を経由して、誰かのへと消えていた。
喉の奥が、砂を噛んだようにザラついた。
母は、私のを活のために使っていたのではなかった。
私がを削って振り込んだを、裏でそっくりそのまま、い息子へ横流ししていたのだ。
カチ、と病の計の針がむ。
消灯を過ぎ、暗い病にノートパソコンの青いだけが私の顔を照らしていた。
画面に並ぶ数字は、もはや単なるデータの羅列ではない。
、私が族に捧げてきたと、尊厳と、踏みにじられた善の残骸だった。
私はスマートフォンを取りし、健に話をかけた。
刻は夜の半。
しめのコールの、健が嫌そうにた。
「……何だよ姉貴、こんなに。
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こっちはもう寝るとこなんだけど」
「健。あなた、おがないからアパートを退して私のに転がり込んだのよね」
「何回言わせるんだよ。な避難だって言っただろ」
「来、親族だけでフォトウェディングを挙げるそうね」
話の向こうが、ピタリと静まり返った。
美から送られてきた写真の端に、ブライダルサロンの見積がチラリと写り込んでいたのを、私は見逃していなかった。
格式のい、老舗ホテルのフォトプラン。
装のレンタル代、着付け、アルバム制作を含めれば、最でも万円はらない。
「賃を払うもないが、どこからそんな予算を捻してるの?」
「……それは、美の親がしてくれるって言うからさ」
健の声が、骨に泳いでいる。
「嘘をおっしゃい。美さんの実は、あなたたちの結婚に最初から反対して、援助なんて切しない方針だったはずよ」
「姉貴には関係ないだろ! 俺たちがどうやって式を挙げようが、俺たちの勝だ!」
「関係あるわよ。私のを法に占拠し、私の首飾りにをつけ、母の活費を滞納しているの財布事なんだから」
私は静かに、だが語語を研ぎ澄ました刃のように告げた。
「院したら、これまでのすべての清算をしてもらうから。覚悟しておきなさい」
「は!? 清算って何だよ! 族ので――」
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健の鳴り声を遮るように、私は通話を切った。
画面を閉じ、ベッドにを沈める。
折れたが疼き、肋骨の痛みが波のように押し寄せてくる。
だが、のの迷いは完全に消えっていた。
私は、もう「物分かりのいい女」には戻らない。
夜を回った頃。
静まり返った病で、枕元に置いたスマートフォンがく震えた。
画面を点灯させると、弟の妻・美からのLINEメッセージだった。
通に表示されたプレビューの文面を読んだ瞬、私の背筋に、氷のような気が突き抜けた。
『夜遅くにすみません。健さんから聞いたんですけど、お姉さん、私たちをから追いすつもりなんですか? 健さんは「あのはおやじの遺産を使って建てたんだから、実質半分は俺の権利だ」って言ってますよ。お義母さんも、お姉さんが退院したら名義を健に変更する続きをするって約束してくれました。お姉さん、本当は最初からそのつもりで私たちをまわせてくれたんじゃないんですか?』
スマートフォンのたいガラスを握りしめたまま、私は暗ので静かに目を見いた。
画面にる美の文字を、私は度、声をさずに読み返した。
『あのはおやじの遺産を使って建てたんだから、実質半分は俺の権利だ』 『名義を健に変更する続きをするって約束してくれました』
……は?
寝返りも打てない病のベッドで、乾いた笑いが喉から漏れそうになった。
弟が妻に吹き込んでいる鱈目と、母が裏で結んでいる密約。