"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第2話
昔からの弟の悪癖だった。
「荷物を全部運び込んだって聞いたわよ。誰が許したの」
「だから、母さんがいいって言ったから! 姉貴だって入院してて誰もいないんだから、防犯も誰かいたほうがいいだろ?」
「今すぐ、LINEのビデオ通話に切り替えて」
私のい声に、健は骨に嫌そうな声を漏らした。
「は? なんで今ビデオなんだよ。俺も荷解きで忙しいんだけど」
「切り替えなさい。私のを、今すぐこの目で見せなさい」
沈黙の、画面が度暗くなり、ビデオ通話のリクエストが届いた。
通話を繋ぐと、見慣れたリビングの景が画面に映しされた。
だが、そこはもはや私のっている空ではなかった。
靴を脱ぐ玄関ホールには、のついた見らぬ子ども用のスニーカーが散乱している。
廊の壁には、引っ越しの際にぶつけたのか、真しい擦り傷がく残っていた。
「ほら、ちゃんと綺麗に使ってるから。配しすぎだって」
健が自撮りカメラに自分の顔を映し、引きつった笑みを浮かべる。
「階の私の部を映して」
「え? 階? いや、階はまだ片付いてないから……」
「映しなさい」
健は舌打ちを漏らし、階段をがった。
スマートフォンの画面が激しく揺れ、階の突き当たりにある私の寝ので止まる。
私は息を呑んだ。
ドアノブが、変わっていた。
私が選んだ真鍮製の落ち着いたハンドルではなく、量販で売っているようなっぽいの円筒錠が、無造作に取り付けられている。
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鍵穴がついた、しいロック。
「……何よ、それ」
「ああ、これ? ほら、子どもたちが勝に入ったら危ないし、プライバシーもあるからさ。美が鍵をつけとこうって」
「私の部に、のあなたが勝に鍵をつけたの?」
健は返答に詰まり、気まずそうにドアノブを回して部のへ入った。
画面が切り替わった瞬、激しい眩暈に襲われた。
私のセミダブルベッドので、弟の歳の男が靴のままびね、ゲームを握りしめて喚いている。
窓際にあったはずの私の無垢材のワークデスクは、も形もなかった。
本棚に並べていた税務や経理の専、ファイル類は、部の隅に積まれた段ボール箱のに無造作に突っ込まれている。
「私の机はどこへやったの」
「邪魔だったから、階の納戸に突っ込んどいた。退院したら戻せばいいだろ?」
「今すぐ戻しなさい。私の荷物に指本触れるなと言ったはずよ!」
声を張りげた瞬、胸に激痛がり、咳き込んだ。
肋骨がきしみ、界がチカチカと滅する。
画面の向こうで、弟は淡な目でこちらを見ていた。
「姉貴さ、そうやってヒステリックになるのやめなよ。病なんだからしく寝てなよ」
健は言い捨てて、階段をり始めた。
カメラが階のリビングを雑把に捉える。
その、画面の端を横切った景に、私の臓がねがった。
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ダイニングテーブルの央。
見覚えのある、さな箱が置かれていた。
父の形見の、田杉で作られた箱。
母に隠れて、父が「真由美、おはいつも族のためにばかりしているから」と、私の歳の誕に渡してくれた切な宝物だった。
その箱の蓋が、無残にも全にされていた。
「健、テーブルのの箱を映しなさい」
「あ? これ? 美がなんか触ってたけど」
「ちょっと待ちなさい!」
私の制止を無し、健は「じゃあ切るから。お事に」と言って方に通話を切断した。
ツーツーという無質な切断音が病に響く。
私はスマートフォンの画面を凝したまま、荒い息を吐きした。
首のろがじっとりと汗ばんでいた。
あの箱のに何が入っているか。
父が遺してくれた、純のネックレスと、さな真珠のピアス。
私が自分ので唯、誰のためでもなく、父のいとして切に保管してきたものだ。
すぐに弟の妻である美のLINEを探し、メッセージを打ち込んだ。
『テーブルのの箱を触りましたか? 今すぐを確認して、写真を送ってください』
送信ボタンを押して、分も経たないうちに既読がついた。
返ってきたのは、何枚かの写真だった。
枚目は、け放たれた箱。
枚目は、美の首元にかけられた、あの純のネックレスのドアップだった。