"「格下」の同級生に頭を下げる夜" 第10話
によってのみ裁かれるのだ。
仕事を定で切りげ、私は約束の喫茶へと向かった。
郊の私鉄に揺られ、ぶりにりった駅のホームは、すっかりしく改装されていた。
しかし、駅から続く古い商のには、代に通学として自転をらせていた頃の匂いが、かすかに残っていた。
目の喫茶は、蔦の絡まるレンガ造りの古い佇まいだった。
カラン、とドアベルを鳴らしてへ入る。
煙の煙と焙煎された豆のりが漂う暗い内の奥に、背を丸めて座る老の姿があった。
田先だった。
髪はすっかりくなり、肩幅もさくなっていた。
、教壇のから私たちを鋭いで見ろしていた厳格な教師の面は、そこにはない。
「先」
私が声をかけると、先はビクリと肩を震わせ、ゆっくりと顔をげた。
目元にく刻まれた無数の皺が、痛ましげに歪む。
「……藤森か。よく、来てくれたな」
ちがろうとする先をで制し、私は向かいの席に腰をろした。
運ばれてきた湯呑みのほうじ茶にもをつけないまま、先は両をテーブルので固く組み、そのまま々とをげた。
「すまなかった」
掠れた、だがい謝罪だった。
「先、をげてください」
「いや、げさせてくれ」
先は顔をげず、テーブルの目を凝したまま言葉を絞りした。
広告
「あの夜……同窓会の席で、桂がおに酒をかけた、俺はすぐには止められなかった。それどころか、、おが桂にどれほど理尽に虐げられていたかをりながら……俺は、学級の平穏という保のために、見て見ぬ振りをしたんだ」
喉の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
「林千から聞きました。当、千が職員まで訴えにってくれたそうですね」
先の肩が、さくねた。
「……そうだ。林が泣きながら、桂がおの弁当を嘲笑い、教科を隠していると訴えてきた。俺は桂を呼びして注したよ。だが、それだけだ。桂の父親が域の力者で、学のPTA役員をやっていたこともある。だが何より……事にして、クラスの雰囲気が悪くなるのを恐れたんだ」
乾いた告だった。
「おは愚痴も言わず、仕返しもせず、ただ黙って耐えていた。だから俺は……甘えていたんだよ。『藤森なら耐えてくれる』『藤森がしていれば、クラスは波がたずに済む』とな」
奥歯が軋む音が、自分のので響いた。
被害者がしく耐えていることをいいことに、そのを「平穏」の材料として搾取する。
それは桂の暴力と同等か、あるいはそれ以に残酷な、制度の側の裏切りだった。
「だが、俺が犯した最の罪は、それじゃない」
先は震えるで、元に置いていた季の入った革の鞄をけた。
広告
から取りされたのは、茶く変した冊のファイルだった。
「の、のことだ」
先がそのファイルをめくり、から枚の類を引き抜いた。
部に『全国業等学技術競技会 代表推薦』と印字された、の公な類の原本だった。
「おがこの会の学代表に決まった、俺はから嬉しかった。おの設計センスと、何でも図面に向きい続ける集力は、違いなく全国でも通用すると確信していた」
私の胸の奥に、当のい記憶が蘇る。
放課、油の染みた作業着を着て、実習の旋盤や制御盤と向かいっていた。
誰にも邪魔されない、私にとって唯の誇りだった所。
「だが、会の週におの母親が倒れ、急遽きな術を受けることになった。……おは放課のすべてを町でのバイトに充てなければならず、征で数もを空けることなど絶対にできないと、俺に辞退を申してきた」
先の目が、赤く潤んでいた。
「俺は援助を探すと言った。奨学や支援制度を当たると言った。だが、おは首を振ったんだ。『先、使えるおがあるなら、どうか妹の学費に回してください。僕はおのためにを追うわけにはいきません』と……そう言ったんだ」
宴会で、桂が吐き捨てた言葉が脳裏をよぎる。
『あいつは本番が怖くなって逃げしたんだ』