"娘が義母に叩かれた日、娘婿はケーキで済ませようとした" 第6話
「くの?」
私が尋ねると、美咲は帳をき、弁護士と作成した類を指先でなぞった。
「くわ。でも、事をしにくんじゃない」
約束のの昼がり、美咲はかつてデートで着ていたような柔らかいのではなく、濃紺のジャケットにを包んでかけていった。
私もまた、しれた席から見届けるために同した。 過保護だと言われようと構わない。 あの男の卑怯な甘えから、娘の決を守る防壁になるのが私の役目だった。
のテラス席で、直さんは美咲の姿を認めるなり、パッと顔をるくした。
「美咲! 来てくれたんだな。……座ってくれ。パスタ、おが好きだったウニのクリームソースを頼んでおいたから」
美咲は勧められた席に浅く腰をろしたが、メニューをくことも、運ばれてきたにをつけることもなかった。
「直、事に来たんじゃないわ。件を聞くために来たの」
「そんな儀なこと言うなよ。ほら、顔も良くなったみたいだし……そろそろに帰ってこないか? 母さんも反省してる。おが戻ってきたら、活のルールをしく作ろうって言ってるんだ」
直さんはテーブル越しにを乗りし、必に笑いかけていた。 しやつれたその顔には、事態を元通りに収拾したいという勝な焦燥が張り付いている。
美咲は何も答えず、鞄からクリアファイルを冊取りし、直さんの目のに滑らせた。
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表には、端正な朝体で印字されていた。 『別居および今の居管理に関する案』。
直さんの笑顔が、ピキリと凍りついた。
「……何だよ、これ」
「読んで。私が弁護士と相談して作成した条件よ」
直さんは震える指でファイルをめくった。 淡々とした法な文言が並んでいる。
、典子氏の現居からの即退、および実への復帰。 、退完までの期における、美咲単独名義物件へのち入り制限。 、婚姻関係の継続、または解消に向けた協議期の設定。
「美咲……お、俺に母さんを追いせって言うのか?」
直さんの声が震え、りが滲み始めた。
「追いすんじゃないわ。お義母さんをご自宅にお戻しするだけよ」
「母さんは暮らしがなんだよ! 父さんがんでまだなんだぞ! それを実にで放りせっていうのか!?」
「お義母さんのを解消するために、なぜ私の尊厳と活が犠牲にならなければいけないの?」
美咲の言葉は、氷のように研ぎ澄まされていた。 なぶり配は微もない。 事実だけを淡々と並べるその声が、直さんを激しく追い詰めていく。
「俺だって……俺だってこのにをしてるんだぞ!」
直さんは周囲の目を気にすることも忘れ、声を荒らげた。
「のリフォーム、百万! 俺の貯から全額払った! 活費だって毎折半以入れてる! なのに、どうしておが全部で決める権利があるんだよ!」
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「百万の改修費については、の条に記してあるわ」
美咲は静かに指先で面を示した。
「あなたが拠した事実は認める。将来にを売却、もしくは財産分与をう際には、法定の計算に基づいて全額清算するわ。払ったものを払っていないとは言わない」
「そういう問題じゃないだろ! 俺にもここにみ続ける権利があるはずだ!」
「居の事実と、誰が所者であるかは別よ。弁護士の先からもそう説されたはずよ」
直さんは言葉を失い、喉を激しくさせた。 妻がに泣き喚いてくれれば、「落ち着けよ」と抱きしめて丸め込むこともできた。 だが、目のにいる美咲は、徹な法と論理の鎧を纏い、歩の隙も見せていなかった。
「直。今、こので返答を求めるつもりはないわ。弁護士を通じて回答してちょうだい」
美咲はそう告げると、席をった。 運ばれてきた湯気をてるパスタには、フォーク本つけられていなかった。
「美咲! 待てよ!」
ちがろうとする直さんを、美咲はたい瞥で制した。
「追ってこないで。次に対面で話すは、弁護士の同席を条件にします」
直さんはテーブルにをついたまま、呆然と妻のろ姿を見送るしかなかった。 その元に残されたが、乾いたにパタパタと虚しくめくれていた。