"売却済みの洋食店で、女将ごっこをする女" 第4話
株主総会の決議――すなわち、単独株主である美緒様のご決断のみで、完全に成いたします」
「そ、そんなはずがあるか!」
浩司の喉が引きつった音をてた。 類を持つ指先が、ガタガタと目に見えて震えている。
「俺は代表だぞ!? の通帳だって俺が管理してたし、対な契約だって俺の名でやってきたんだ!」
「代表権を持つことと、会社を所することは全く別の概です。商法の初歩ですよ」
黒田は突き放すように言い捨てた。
その、客席の奥で固まっていた幸子が、鳴のような声をげて駆け寄ってきた。
「ちょっと! あなたたち、何者なのよ! 警察を呼ぶわよ!」
幸子は黒田のにちはだかり、テーブルをバンと叩いた。
「ここはのよ! 主が命を削って遺して、浩司が代目として継いだなの! 美緒さんはただ、浩司の稼ぎから遣いをもらって計簿をつけていただけの女よ! あの棒猫が、うちのを勝にに売りばすなんて、そんな条理が許されるわけがないでしょう!」
黒田は、喚き散らす幸子をじっとたい目で見つめ返した。 りもせず、呆れもせず、ただ害虫の羽音を聞くかのような無質な差しだった。
「お母様でしょうか」
黒田は静かに問いかけた。
「では、伺いますが。、先代がおくなりになった際、旧『限会社瀬亭』が抱えていた億千万円の負債は、どなたがどのように処理されたかごじですか?」
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幸子のが、パクパクと魚のようにいた。
「そ、それは……浩司が、頑張って……」
「違います」
厨の入りから、くい声が響いた。
老料理、本だった。 エプロンでを拭きながら、ゆっくりと客席へと歩みてくる。
「本さん……?」
浩司がすがるような目を向けた。だが、本はその線を真っ向から無した。
「浩司。お、自分が何言ってるか本当に分かってんのか」
本のには、厨の事務机の奥に仕い込まれていたはずの、茶く変した冊のファイルが握られていた。
「、先代がくなった、このは完全に潰れてたんだよ。仕入れ先への未払いが千万円、からの借入が千万円。も、おたちの自宅も、全部競売にかけられる寸だった」
「本さん、余計なことを言うな!」
浩司が鳴ったが、本は止まらなかった。
「あの、をげて回ったのは美緒さんだ。美緒さんが実から相続した遺産を全部注ぎ込んで、会社を作ってくれたから、この簾は首の皮枚で残ったんだ。おはその、なんて言った? 『美緒、ありがとう。俺は料理だけに集する』って、泣きながらをげてただろうが」
「つ……」
浩司の顔が、今度は屈辱で赤黒く染まった。 声がない。 喉に何かが詰まったように、ただ喘ぐような呼吸を繰り返している。
玲奈は、完全に直していた。
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糸で『瀬亭 玲奈』と刺繍されたエプロンが、見るも無惨な滑稽さを醸ししていた。
「嘘……」
玲奈の唇から、掠れた声が漏れた。
「じゃあ……浩司さんが言ってたこと、全部……」
『婚さえ成すれば、このは俺たちのものだ』 『あいつは勘定しかできない女だから、追いせばすべてうまくいく』 『玲奈、おを本当の女将にしてやるからな』
浩司が甘い声で囁いていた言葉の数々が、ガラガラと音をてて崩壊していくのが、玲奈の表から痛いほど見て取れた。
玲奈は震えるで浩司の腕を掴んだ。
「浩司さん! 嘘だって言ってよ! あなた、こののオーナーじゃないの!? 私、会社も辞めて、友達にもみんな女将になるって言っちゃったのよ!?」
「玲奈、落ち着け……! これは何かの違いだ、美緒の嫌がらせに決まってる……!」
浩司は必に言い訳を取り繕おうとしたが、その声には何の説得力もなかった。
黒田は腕計に目を落とし、淡に告げた。
「浩司様。本付で、臨株主総会の決議に基づき、あなた様を代表取締役から解任する続きをめております。今のの振り方、および料理としての処遇については、監査の終に改めて協議いたします」
「解任……!?」
浩司が絶叫した。
「ふざけるな! 俺がいなきゃ、こののデミグラスソースは作れないんだぞ! 客がついてるのは俺の腕だ! 俺を追いして、が回るとってるのか!?」