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"「妻も了承した」夫が勝手に約束したのは、亡き母のマンションだった" 第13話

底れない浅ましさと自己。

「悟……あんた、本当にそんなことを……?」 義母の声が、震えていた。 自の男。親孝で、来損ないの嫁に耐えているはずだった息子。 その正体が、族全員を玉に取って悦に浸っていただけの卑怯者だったという現実に、義母の顔は見るもなく青ざめていた。

「母さん、違うんだ! 俺は……!」 夫は座卓にをつき、取り乱したように叫んだ。

だが、娘たちも、叔母も、そして母親すらも、歩ずさりするように夫から線を逸らした。 かけて築きげたが、完全に崩壊した瞬だった。

義母が、震える唇をいた。 「……奈美さん。私、らなかったのよ。悟がそんなに吹き込んでいたなんて……」

保。 息子を切り捨て、自分だけは悪くないと言い逃れようとする浅ましい態度。 私は義母の言葉を、ややかに遮った。

「らなかったことと、私を傷つけたことは、別の話です」

義母が息を呑む。

「ろくな嫁入り具も持たずに来たと罵ったのも、実のマンションを差しせとしたのも、お義母さんご自の志です。悟さんの嘘とは関係ありません」

私は座卓のに、もう通の類を置いた。 緑の枠線が引かれた、婚届。

「私の署名と捺印は済んでいます。弁護士を通じて続きをめますので、速やかにサインしてください」

ちがり、鞄を肩にかけた。

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夫がすがるようにを伸ばしてくる。

「奈美! 待ってくれ! 頼むから……! の全部が嘘だったわけじゃないだろ!? 俺たち、確かに幸せなもあったじゃないか!」

そのけない叫びを、私は振り返ることなく受け止めた。

「ええ。幸せだったがあったからこそ、あなたを信じていたの」

私はドアノブにをかけ、首だけを巡らせた。

「でも、信じていたことと、これからも緒に暮らせることは別よ」

夫の顔が、絶望に歪む。 私は度もを止めることなく、義実の玄関をた。

たいのが、照った頬を撫でていく。 のい枷が、音をててれたような、澄み切った解放だけがそこにあった。

季節が巡り、は柔らかなのに包まれていた。

婚届は滞りなく受理され、法な続きはすべて完した。 あの族とは、あの以来、度も顔をわせていない。

私は今、駅くのさな古マンションの契約ルームに座っていた。 母のマンションの売却代の部をにし、残りは将来のために残して、自分の名だけで購入を決めた部だ。

「こちらが、お部の鍵になります」

産会社の担当者が、に輝く鍵をテーブルのに置いた。 「もう本、ご族用にお渡ししますか?」

担当者の何気ない問いかけに、の景が瞬だけ脳裏をかすめた。

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かつて母の部の鍵を勝に使われ、で踏みにじられた、あの記憶。

私は静かに微笑み、はっきりと答えた。

「いいえ。渡しません」

この鍵は、私が自分のでち、自分のを守るためのものだ。 もう度と、誰の都にもけ渡さない。

鍵を受け取り、居へと向かった。 向きの窓から、たっぷりとが差し込むリビング。 部の央には、母のマンションから唯引き取ってきた、あのさなの卓が置かれている。

テーブルののスマートフォンが、く震えた。 画面をくと、真紀さんからのメッセージが表示されていた。

『奈美さん、しい活はどうですか。所は聞かないでおきます。いつか、奈美さんの気が向いたにお茶でもできたら嬉しいです。無理はしないでね』

続けて、綾子さんからも。 『落ち着いたら、体だけは事にしてね』

とも、私が引いた境界線を理解し、くから静かに見守ってくれていた。 私は「ありがとう。も元気で」とだけく返信を打ち、画面を伏せた。

かつての義実と私を繋ぐ鎖は、もうどこにもしない。

夕暮れ、駅のカフェで昔からの友と落ちった。 湯気をげる茶をに、のない世話にを咲かせる。

「奈美、なんだか顔つきが変わったね」 友がカップを置き、柔らかく目を細めた。

「はいつも何かに怯えてるみたいに、気を張って笑ってたのに。……最、どう?」

その問いかけに、私は窓のを見つめた。

暮れなずむを、につく々がき交っている。

誰かの顔を伺うこともなく。 誰かの嘘に怯えることもなく。 私は今、私自の志で選び取ったのにっている。

私はゆっくりと線を戻し、自然とこぼれた笑みとともに答えた。

「やっと、自分の言葉で話せるようになった気がする」

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