"結婚3週間前、私のマンションを「弟に10%譲れ」と言った婚約者" 第12話
「換した220万円の使途内訳よ。消費者融への返済、140万円。そしてここ。『匠兄貴へ返済(活費替分):80万円』」
静寂が座敷を支配した。誰も呼吸すらできないほどの、絶対な沈黙。私は匠の目を、逃げを塞ぐように見据えた。
「弟いの優しいお兄さん? 笑わせないで。健太君が抱えた借を私ので穴埋めさせ、さらに自分が過に健太君へ貸した80万円まで、私の資産を切り売りさせて回収しようとしていた。自分の懐は銭も痛めず、弟に恩を売り、回収能になりかけていた80万円を私の犠牲で清算する。それが、あなたの『兄』の正体よ」
「匠……お、これ……本当なのか?」父のく沈んだ声が、鳴りのように響いた。匠は唇を刻みに震わせ、畳のに線を落としたまま、言も発することができない。首筋に青筋が浮かび、全から力が抜けたように肩を落としていた。
その、これまで静かに座っていた川美穗が、ゆっくりとちがった。
「美穗さん……待ってくれ、美穗さん!」健太がすがるように美穗のスカートの裾にを伸ばした。美穗はそのを、汚らわしい虫を払うかのようにたく振り払った。
「健太。あなた、私に何て言っていたの? 『兄貴が優秀だから、実から産を分けてもらえることになった』『結婚費用は配いらない』って……全部、さんを騙して奪い取る提の嘘だったの?」
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「違うんだ美穗! 俺は、おの実に釣りう男になりたくて……!」
「私の両親が、いつあなたに資産を求めたの!?」美穗の凛とした声が、料亭の座敷に鋭く響き渡った。その瞳には、溢れそうな涙を押し殺した、激しい侮蔑とりが宿っていた。
「私の父も母も、あなたが誠実に働いているだとったから結婚を許してくれたのよ! それを……借を隠し、の財産を騙し取って見栄を張るなんて、浅ましいにも程があるわ! 私の族まで巻き込んで侮辱しないで!」
美穗はバッグから婚約指輪のケースを取りし、健太の目のの畳へ叩きつけるように置いた。「婚約は破棄します。私の座から結婚準備としてあなたに預けていた200万円も、今週に全額返還してください。弁護士を通じて正式に通告を送ります」
「待ってくれ美穗! 母さん、兄貴、何とか言ってくれよ!」パニックに陥った健太が叫ぶと、恵子が逆して美穗に掴みかかろうとした。「ちょっと美穗さん! なぜ健太を責めるのよ! あんなメモ用枚で健太を犯罪者扱いして! 男のがし借することの何が悪いのよ! 結婚すれば何とかなる話でしょうが!」
「見苦しい真似はおやめなさい!」父のが、座敷を震わせた。恵子の体がビクッとねがり、そのに固まる。
完全に追い詰められた健太が、狂ったような形相で匠を指差した。
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「全部兄貴のせいだろ!!」
座敷にいる全員の線が、健太に集した。健太は涙とを垂らしながら、兄に向かって声を浴びせかけた。
「兄貴が言ったんじゃないか! 『リナはに流されやすい女だから、式直に10%くらい譲れって言えば世体を気にして絶対に断れない』って! 『結婚しちまえばこっちのものだ、持分さえに入れば業者に売って、俺の80万も返せるしおの借もチャラになる』って、全部兄貴が筋きをいたんだろ!!」
「健太、貴様、余計なことを喋るな!」匠が顔を真っ赤にしてちがり、実の弟の胸ぐらを掴んだ。「俺はおを助けようとしてやったんだぞ! 母親におが泣きつくから、俺がをかぶってやったんじゃないか!」
「助けるためだって!? 自分の80万を取り戻したいだけだったくせに! 格好ばっかりつけやがって!」「おがの丈にわない買い物ばかりして借を作るからだろ!」
男が畳ので取っ組みいを始め、座敷の調度品がガタガタと音をてた。恵子は「やめて! 喧嘩はやめてちょうだい!」と切り声をげ、親族の叔父は「恥をれ、杉の恥晒しどもが!」と吐き捨てて席をった。
美しい庭園を望む格式い料亭の座敷は、欲に目が眩んだ族が互いの急所をい破りう、獄のような修羅と化していた。
私は静かにちがり、乱れたスーツの裾を直した。
軽蔑すら湧かない。ただ、目ので繰り広げられる醜態を、どこかい世界の来事のように徹に見つめていた。