"結婚3週間前、私のマンションを「弟に10%譲れ」と言った婚約者" 第11話
恵子はを乗りし、父の顔を伺いながら甘ったるい声で本題を滑り込ませてきた。「もちろん、里奈さんの切なおですから、名義をかすのがどうしてもごだというなら、それはもう結構ですの。ただ、健太のを祝う気持ちは、これから親戚になる私ども全員同じはずですわよね。お父様のようにご派な社会位がおありの方でしたら、若いの将来のために、しばかりの資援助をしていただくことは造作もないことかとじまして……。名義の代わりに、そうした形でお力添えをいただければ、匠と里奈さんの結婚式も予定通り挙げられますし、全てが円満に収まるといましてね」
同席していた親族の叔父が、いたたまれなさそうにお茶を啜った。するに、マンションの持分を寄越さないなら、代わりに現を差しせ。さもなければ、結婚式を潰して娘を傷物にするぞという、体裁だけを取り繕った劣な脅迫だった。
父は湯呑みにを触れもせず、凍りつくような線で恵子を見つめ返した。「杉さん。確認だが、君たちは私の娘のを、弟の結婚資を調達するための集装置か何かと勘違いしているのか」
座敷の空気が瞬で凍結した。恵子の貼り付けた笑顔がぴくりと引きつる。「な、何を仰るんですか! 族になるのだから、助けうのは美徳でしょうと――」
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「美徳を語るに、片付けるべき事実があります」私は静かにをき、膝ののバッグからクリアファイルを取りした。
「リナ、おは黙っていろ!」匠が焦ったように声を荒らげ、私を制止しようとを伸ばしてきた。「これは男同士、両の親同士で解決すべき問題だ! おがになってを挟むじゃない!」
「論でお茶を濁せる段階は、とっくに過ぎているのよ」私は匠の線を真っ向から射抜き、卓の央へ枚の類を滑らせた。いのに、鮮な文字が踊る。『共持分(10%)買取事査定決定通』。
「……っ!?」健太の喉から、空気の抜けるような鳴が漏れた。匠の顔から、瞬で血の気が引いていく。
「何かしら、これ……?」穏な空気を察した恵子が眉をひそめ、類にを伸ばそうとした。私はそのからのひらを置き、内にいる全員に聞こえる凛とした声で読みげた。
「京都内の産会社、株式会社〇〇エステートによる、私のマンションの持分10%に対する買取事査定通です。発は先週の曜。買取概算提示額は、220万円。健太君、見覚えがあるわよね」
健太は両で顔を覆い、カタカタと膝を震わせ始めた。「な、なんで……それを……」
「弟の顔をてるため? 産の名義を持たせて、婚約者のご両親をさせるため? 全部真っ赤な嘘だったわね」
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私は匠を徹に見据えた。「あなたたちが計画していたのは、私を言いくるめて10%の登記を健太君に移転させた直、その持分をこの専業者へ即座に転売して現化することだった。違う?」
「転売……ですって!?」叔父が驚愕の声をげ、恵子と匠を交互に見つめた。恵子は狼狽しながら、甲い声で叫んだ。「ち、違うわよ! それはただ、もしものにどれくらいの価値があるのか、健太が世らずだから参考までに調べただけで――!」
「査定だけで、共物分割請求のスキーム説まで業者から取り寄せるわけがないでしょう」私は髪を入れずに枚目の類を叩きつけた。
「持分を買い取った業者は何をするとう? のの10%だけ持っていてもめない業者は、残りの90%を持つ私に対し、価格を遥かに超える法な値段で持分を買い取れと迫るのよ。応じなければ民法258条に基づく共物分割請求訴訟を起こされ、マンション全体を競売にかけられるリスクを背負わされる。あなたたちは、私にそんな爆弾を抱え込ませて、自分たちだけ220万の現を掠め取ろうとしていたのよ」
「そんな……そんなつもりじゃ……!」匠の声がけなく裏返り、額から脂汗が滝のように流れ落ちる。
「まだ言い逃れをする気? じゃあ、これは何かしら」私はファイルから最の枚――美穗が健太の部で見つけした、きのメモ用を卓へ突きした。