"検事採用面接の朝、夫は「妹のために辞退しろ」と言った" 第9話
義母からのメッセージだった。
『の席は、老舗料亭の「千歳」を予約しました。伯母様もとても楽しみにしています。玲奈さんには番末席に座るよう伝えなさい』
画面を見つめたまま、私はややかに微笑んだ。
自ら墓穴を掘り、れ台をえてくれたのだ。
「、私もくわ」
私は夫を瞥もせず、背を向けた。
「お義母さんが待ちにしている祝勝会よ。族の真実を、全員で祝ってあげましょう」
曜、午。
老舗料亭「千歳」のれの座敷には、すでに親族同が揃っていた。
座には、艶やかな訪問着にを包んだ義母・節子が座っている。
その隣には、親族の老格である伯母。
従兄弟や叔父たちも顔を揃え、内には祝い酒の甘いりが漂っていた。
「彩佳、本当によかったわねえ」
伯母が目を細め、嫌でビールを注いでいる。
「神田から学の先がるなんて誇らしいわ。回落ちたは配したけれど、やっぱり最は力よ」
義母は扇子を元に当て、勝ち誇ったように喉を鳴らした。
「力だけじゃありませんのよ、お姉様。今回は特別に、教育界に太いパイプをお持ちの林先にお骨折りいただいたんですの」
義母の線が、部の隅の末席に座る私へ突き刺さる。
あからさまな見しの笑み。
「女性がで男勝りにあくせく働くより、域に根ざして子どもたちを育てる方が、ずっと尊いき方ですものねえ」
広告
私への当てつけ。
検事を目指す嫁を貶め、実の娘を持ちげるための、計算し尽くされた台だった。
親戚たちが気まずそうに線を泳がせる、私は静かに湯呑みを置いた。
「お義母さん」
凛とした私の声が、座敷の空気を切り裂く。
義母は眉をひそめ、そうに私を睨みつけた。
「何かしら玲奈さん。お祝いの席で無粋なを挟まないでくださる?」
「その林先という方は、公教員の採用を確実に保証してくださったのですか?」
義母はで笑った。
「当たりでしょう! を投じて特別な指導をお願いしたのよ。漢のあなたには分からない世界でしょうけれど」
座敷の空気が、微かにざわめいた。
「……?」
伯母が怪訝そうに眉を寄せる。
「節子、公学の採用試験におを積んだというの? それは聞き捨てならないわよ」
義母は慌ててを振った。
「い、いえ、正なコネではありませんのよ! 正式なコンサルティング契約を結んで、く導いていただいたということですわ!」
「その正式な契約が、こちらですね」
私は鞄から、通の類を取りした。
ちがり、畳を踏みしめて座へとむ。
義母と伯母ののテーブルに、類を広げて置いた。
『採用支援に関する特別コンサルティング契約』
親族同の線が、斉に面へと集する。
広告
「費用総額、百万円」
私は淀みなく、全員に聞こえる声で告げた。
「すでに夫婦の共財産から万円が無断で振り込まれています。そして最部をご覧ください」
伯母が老鏡をかけ、類の末尾に目を落とした。
「……『本契約は採用結果を保証するものではなく、否に関する切の責任は負いません』……?」
伯母の声が座敷に響いた瞬、義母の顔から血の気が引いた。
「え……? な、何よそれ……そんなの見てないわよ!」
「見ていないはずがありません」
私は徹に続けた。
「契約者の欄をごらんください。署名しているのは、神田裕です」
親戚たちの線が、末席でさくなっていた夫へ斉に向かった。
夫は脂汗を流し、今にも机のへ潜り込みそうなほど縮こまっている。
「裕! どういうことなの!」
義母が甲い叫び声をげた。
「先は確実だって仰ったじゃない! あなた、先からそう聞いて契約したんでしょう!?」
「裕さんは最初から、格など保証されないとっていましたよ」
私は髪入れずに言葉をねた。
鞄から、もう数枚のプリントアウトを取りす。
昨夜、夫のパソコンから印刷したメールの履歴だ。
「林氏は最初から『結果の保証は切できない』と裕さんに伝えていました。それを承ので、裕さんは万円を支払ったのです」
「な、なんで……」
義母の唇が刻みに震え、焦点の定まらない目で息子を見つめる。