"「寝かせた金」と呼ばれた一千万円" 第6話
自己資がたった百万、運転資の計算も破綻している。何より、本の同もないのに『義姉から千万拠予定』などと虚偽の記載をした類を、融関に通そうとするなんて犯罪よ」
「犯罪だと!? 内の事業を応援するのが、なんで犯罪なんだよ!」
夫はテーブルを拳で叩いた。
パックに入った焼き鳥がねる。
「おはのだろ! 俺の妻だろ! 族が困ってるに、を持ってるやつがすのは当たりじゃないか! たかが千万だろ! おがぬまで持ってても、使いなんてないじゃないか!」
たかが、千万。
その言葉を聞いた瞬、私ののにあった最のわずかな体温が、完全に消えった。
私がどれだけの残業をこなし、どれだけの理尽に耐え、将来へのを打ち消すために通帳の数字を積みげてきたか。
この男は、何つらないのだ。
ろうともしなかったのだ。
「私のおよ」
私の声は、自分でも驚くほどく、たかった。
「私が独代からかけて貯めた、私の特財産。のものでも、あなたの私腹を肥やすための具でもない」
「お、おい……」
夫は私の目のたさに気圧されたのか、わずかにずさった。
だが、すぐに虚勢を張るように胸を突きす。
「……どうせ、急にをすのが怖くなっただけだろ。ヒステリー起こすなよ。
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いいか、もう親戚みんなに話しちゃったんだぞ? 曜に織が千万すって、母さんがみんなに触れ回ってるんだ。今さら『しません』なんて言えるわけないだろ!」
「言えばいいじゃない」
「言えるわけないだろ、俺の面子はどうなるんだよ! 会社の部や取引先にも、弟がをすって話しちゃったんだぞ! おがを張ったら、全員が赤っ恥をかくんだ!」
ったことではない。
ので買った面子など、で溶かしてしまえばいい。
「これ、受け取ったわね」
私は通告のもう枚の控えを指差した。
「同じものを、、公庫と相方の融関、それから政士を通じてあなたの実にも送達するわ。あなたが勝に話をめても、は円も融資を実しない。諦めなさい」
夫は類を握りつぶそうとしたが、私の線に射抜かれ、を止めた。
肩を刻みに震わせ、激しい息を吐いている。
「……悔するぞ」
夫は絞りすような声で言った。
「曜、母さんが親戚全員のでおを問い詰めるぞ。みんなので恥をかくのは、織、おの方だからな!」
脅しのつもりなのだろう。
族の同調圧力で私が屈すると、この男は本気で信じているのだ。
れな。
私は何も答えず、ただややかに微笑んで背を向けた。
恥をかくのが誰なのか、曜のその瞬まで、せいぜい甘いを見ていればいい。
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翌。
私は休暇を取り、田辺由紀の助言のもとで作成した警告を、関係各所へ正式に提して回った。
融関側の反応は極めて迅速だった。
「ご本様から正式な同の申しがあった以、当該計画における保証設定および資証は切無効として処理いたします」
公庫の担当者は、私の提した通告の控えとの正申受領を瞥しただけで、械にそう答えた。
融の世界において、名義冒用の事実が発覚した案件は、その瞬に「毒物」として扱われる。
これで、亮介の計画の資ルートは、法に完全に断たれた。
午、私は駅の商業ビルにあるカフェに入り、スマートフォンを操作した。
亮介のSNSアカウントを確認するためだ。
夫の弟、亮介。
アカウントをいた瞬、私の目にび込んできたのは、眩暈がするような投稿の数々だった。
の付で、真しい舗用物件のスケルトン写真が何枚もアップされている。
駅徒歩分、通りのい角の面。
坪単価を考えれば、敷と保証だけで数百万円はらない等だ。
『ついにへの第歩! 最の物件を契約完!』
『妥協は切なし。エスプレッソマシンはイタリアから直輸入決定』
『族の全面バックアップに謝。持つべきものは、理解ある兄と最の族です!』
コメント欄には、親戚や友からの賛辞が溢れていた。
『亮介ちゃん、すごい!』