"「寝かせた金」と呼ばれた一千万円" 第4話
スピーカーにして、テーブルの央に置く。
「……もしもし、お義母さん」
受話器の向こうから、突き抜けるように甲く、そして傲な声が響き渡った。
『ああ、織さん? 健から聞いたわよ! 亮介の計画を見てくれたんですってねえ』
「ええ、今、拝見したところです」
『よかったわあ! あなたもやっとの嫁としての自覚を持ってくれたのね。子どもがいないんだから、その浮いたおをの繁栄のために使うのは当然の義務でしょう?』
スピーカー越しに、夫が「母さん、言い方……」と声で窘めるが、義母の勢いは止まらない。
『今週末の曜ね、親戚みんなを集めて、亮介のの決起集会をやることにしたのよ。料亭の個を取ってあるから』
「決起集会、ですか」
『そうよ! あなたも絶対に、番いい着物を着て来なさいね。主賓席を用してあるから』
「どうして私が、主賓席なんですか?」
私が静かに問いかけると、義母はさも当然のように、らかに笑い声をげた。
『決まってるじゃないの。だって、あなたが番の功労者になるんだから! 親戚ので、亮介に千万円をポンとしてくれる太っ腹な義姉さんとして、盛にお披目してあげるわよ!』
話の向こうで、義母が満そうに息を吸い込む音が聞こえた。
隣で、夫が「ほらな、母さんもんでるだろ」とでも言いたげに、満そうに頷いている。
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私は、机のに広げられた計画を見つめた。
私の名のに、雑に引かれた赤ペン。
私のを奪い、自分の柄にしようと群がるハイエナたち。
喉の奥の渇きは、いつのにか消えっていた。
代わりに広がっていたのは、氷のように研ぎ澄まされた、絶対な静寂だった。
「……わかりました」
私は、微笑みすら浮かべて答えた。
「曜の決起集会、必ず伺います」
『そう! 遅れないようにね!』
通話が切れた。
夫が嬉しそうに私の肩にを置こうとした。
私はそれを、スマートフォンをに取る自然な作で、再びたくすり抜けた。
曜。
親族が全員揃う、盛な宴席。
台は、向こうが完璧にえてくれた。
私の千百万を奪おうとした罪のさを、そので、全員ので支払わせてやる。
翌朝、午分。
私は誰よりもく起き、寝を抜けした。
隣で眠る夫の健は、を半きにして無防備な鼾をかいている。
昨晩、義母との話を終えた、夫は「これで全部うまくいく」と信じ切って嫌でビールを本空けていた。
愚かさに目眩がする。
のを奪う計画をてておきながら、ここまで眠できる神経が理解できない。
けれど、その鈍さこそが、私にとって最の武器になる。
私は斎のパソコンをちげ、枚の文を作成し始めた。
『表示撤回兼資拠同通告』
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タイトルを打ち込む指先に、迷いはない。
私は、物流会社の経理として、契約の文言つで会社が傾く瞬を何度も見てきた。
曖昧なのやり取りほど、で毒になるものはない。
「あのはそう言った」「族なんだから暗黙の解だ」――そんな劣な言い逃れを、民法の条文と確定付で完全に圧殺するための類だ。
、通(私)は、亮介氏が計画するカフェ業事業に対し、銭の資、貸付、連帯保証、または預の担保提供を切わないこと。
、過および将来において、通の事の面による同なく作成されたいかなる名義利用、委任状、承諾もすべて無効であること。
、被通(夫・健)が通の代理として部に表した資調達の約束は、すべて無権代理であり、通にその責は切及ばないこと。
民法第百条、無権代理為の追認拒絶。
そして民法第百条第項、夫婦財産制における特財産の排所権。
文脈をえ、プリンターから部力する。
インクの匂いが漂う面をに取ると、指先に確かなみが宿った。
午。
私はスマートフォンの通話履歴から、親友の田辺由紀に発信した。
由紀は都の融資管理部で以のキャリアを持つ、実務のプロだ。
『織、LINE見たわよ。座は抑えた?』
受話器の向こうから、切の無駄を省いた質な声が返ってくる。