"正月の料亭で仲居に渡された「逃げてください」の紙切れ" 第8話
親戚からの「謝」という名の真綿で私の首を絞め、笑顔のまま逃げを塞ぐ。それが、義母と義姉が描いていた筋きだったのだ。
あまりの悪質さに、背筋が凍りついた。
「お母さん」
私の声が、静まり返った広に落ちた。
「私、そんなこと、度でも申しげましたか?」
義母の顔から、完全に血の気が引いていた。目元に当てていたハンカチが、力なく膝のへ落ちる。
「仕事をパートに変えて、平は全部お義母さんの面倒を見るなどと、私がいつ言いましたか? 度でも、そんな相談を私から持ちかけたことがありましたか?」
「そ、それは……」
義母の線が、宙を泳いだ。唇が渇いた音をてて擦れう。
「あ、あなたなら……男の嫁として、当然そうしてくれるものだと……私が、そうって……」
「っていたことと、私が言ったことは全く違います」
私は容赦なく言葉をねた。
「お義母様は、私が言ってもいない嘘を親戚の皆様に吹聴し、既成事実を作って私に介護を押し付けようとされたのですね」
「な、何よその言い方は!」
義姉が慌てて割って入ろうとする。
「お母さんは悪気があって言ったんじゃないわよ! 族なんだから、これくらいの話、阿吽の呼吸で通じるとっただけでしょ!」
「阿吽の呼吸で、の仕事を辞めさせるがどこにいますか」
私の徹なに、義姉が言葉を詰まらせた。
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広のの空気が、完全に反転していた。親戚たちの目は、もはや「気な嫁」を見る目ではなかった。正々、嘘の美談で親戚を呼びし、嫁を嵌め込もうとした老母と義姉に対する、侮蔑と失望の差しだった。
「子さん……」
本の伯父が、く、吐き捨てるようなため息をついた。
「お、儂らに嘘をついて呼びしたのか。親戚同を集めて、嫁いびりの片棒を担がせる気だったのか」
「ち、違います、お兄さん! そんなつもりじゃ……!」
「恥をりなさい」
伯父のく鋭い言が、義母の胸に突き刺さった。
義母のプライドが、音をてて砕け散るのが見えた。世体と親戚からの評判を何よりもんじ、常に「派なの母」を演じ続けてきた義母にとって、本のから「恥をれ」と言われたことは、刑宣告にも等しい屈辱だったはずだ。
「修」
私は、義母のろで青ざめて縮こまっている夫に顔を向けた。
「あなたも、この嘘をっていたわよね? お義母様が親戚にこんな嘘をついて今のを設定したこと、っていて私をここに連れてきたのね?」
「い、いや……俺は……母さんがそう言うから……」
夫の線がに激しく泳ぐ。ネクタイの結び目を震える指で緩め、逃げを探して脂汗を流している。
「修さん、答えて。っていたの? らなかったの?」
「だ、だから……! 母さんも悪気があったわけじゃないんだし、結果におがパートになれば丸く収まるとったんだよ! 俺だって族のために……!」
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「どこが族のためなの!?」
私の叫びが、広の障子を震わせた。
「自分の母親の介護を妻に丸投げして、嘘で塗り固めた罠に妻を放り込むことが、あなたの言う『族のため』なの!? 、私はあなたにとって何だったの!? 都のいい政婦だったの!?」
夫は言葉を失い、喉をヒュッと鳴らして線を畳に落とした。もはや、誰として夫を庇う者はいなかった。
その苦しい沈黙ので。
座布団のに崩れ落ちていた義母が、突如として顔をねげた。その目は真っ赤に充血し、狂気じみたを宿していた。作られた「かい老母」の仮面が完全に剥がれ落ち、醜悪な本性が剥きしになっていた。
「もういいわよ!」
義母が座卓をバンと叩いてちがった。腰が悪いなどという嘘が吹きぶほどの、凄まじい勢いだった。
「もういい! 誰のも借りないわ! そこまで言うなら、おなんかに頼むものですか! 男の嫁のくせに、これっぽっちの孝もできない者! 結構よ!」
肩をらせ、荒い息を吐きながら、義母は親戚同を見回して叫んだ。
「私が自分ので、料老ホームにでも入れば満なんでしょう!? 貯もも全部使い切って、施設に入ってやるわよ! それでいいんでしょう、真由美さん!」
自暴自棄の当てつけ。「そこまで言わせるなんてかわいそう」
と、誰かが自分を引き止めてくれることを期待した、最のあがきだった。