"正月の料亭で仲居に渡された「逃げてください」の紙切れ" 第7話
「美智子さんが作られた計画表を拝見しました。そこには、曜から曜までの平の通院、買いし、事のすべてに私の名がかれていました。そして備考欄には、私に無断で『からパート勤務に切り替えさせること』と記されていました」
親戚たちの顔に、微かな戸惑いがる。
「私は現、医療法の正社員としてフルタイムで勤務しております。夫とも、義母とも、義姉とも、働き方を変えるという相談は度もしておりません。今、この席で親戚の皆様が揃ったを利用して、事承諾で私にサインを迫る筈になっていたようです」
「な、何を言いすのよ!」
義母がハンカチを握りしめ、甲い声で叫んだ。
「相談しようとって、みんなを集めたんじゃないの! 族なんだから、しは助けうのが当たりでしょう!? 嫁に来たんだから、こののために尽くすのは義務じゃないの!」
「族だからこそ、事の相談もなく堀を埋めてするような真似は許されません」
私は義母の目を真っ向から見据えた。
「私はこれまでも、できる限りの通院の付き添いや買いしをお伝いしてきました。ですが、私自の仕事と活をすべて捨てて、無償の専任介護者になることはできません。男の嫁だからという理由だけで、私のを勝に決める権利は、誰にもありません」
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「お……!」
義姉が逆してちがりかけた。
「親に向かって何ての利き方をするのよ! 男の嫁のくせに、義務を放棄する気!? あんたが面倒を見ないなら、お母さんはどうなるのよ!」
「実の娘である美智子さんと、実の息子である修さんが、まずご自で分担されるべきです」
「私たちは忙しいのよ!」
「私も忙しいです」
歩も引かない私の態度に、部の空気が張り詰める。義姉の顔は屈辱とりで歪み、義母は座布団のでわなわなと震えている。
そのときだった。
座に座っていた本の伯父が、元の湯呑みを座卓のにトン、と静かに置いた。乾いた陶器の音が、部のざわめきを瞬で断ち切る。
伯父は髪混じりの眉をく寄せ、座卓の向こうの義母をじっと見つめていた。
「……おい、子さん」
々しい声だった。
義母はすがるような目を伯父に向けた。「お兄さん、聞いてくださいな。この嫁がね……」と泣きつこうとした義母を、伯父のが制した。
「ちょっと待て。話がい違ってないか?」
「え……?」
義母の言葉が、喉の奥で詰まった。
伯父は腕を組み、怪訝そうに目を細めて義母を凝している。
「お、暮れの話で儂に何て言ってた? 『真由美さんが、お義母さんの腰を配して、から仕事をパートに変えて平は全部てくれるって自分から言いしてくれた』と、そう嬉しそうに話してたんじゃないのか?」
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部の空気が、さらに段、え込んだ。
私の臓が、ねた。……暮れの話?自分から言いしてくれた?
「そうだぞ」
伯父の隣に座る叔母も、審そうにをいた。
「私も子さんから聞いたわよ。『真由美さんは本当にできた男の嫁で、自分から仕事をセーブして尽くしてくれるって言ってくれた。だから正に親戚を集めて、みんなで真由美さんにご苦労様、ありがとうってをげる会にするんだ』って……」
叔母の線が、義母から私へと移る。
「だから私たち、今はお祝いの気持ちで集まったのよ。真由美さんに『ありがとうね』って言うために。……違うの?」
座卓を囲む親戚たちの表が、変した。非難の矛先が、私から、座卓の央にいる義母へと急激に方向を変えていく。
全の毛穴から、汗が引いていくような覚がした。
そういうことだったのか。
義母は、親戚たちを「嫁を追い詰める共犯者」にするために呼んだのではなかった。すでに親戚たちに対して、「嫁が自発に介護を申してくれた美談」を既成事実として吹き込んでいたのだ。
親戚全員ので「真由美さん、いつもありがとうね」と謝の言葉を述べ、親戚同からも「いいお嫁さんをもらったね」「真由美さん、よろしく頼むよ」と拍を浴びせる。その満の賛同と賞賛の空気ので、私が「いいえ、私はそんなこと言ってません」
と否定できるはずがない、と。