"「娘に頼まれたから」深夜に30個の弁当を作る母、私は何も知らなかった" 第8話
話の向こうで、野田さんが息を呑む気配がした。
「……なことって、お弁当に何か問題でも?」
「はい。百分の命に関わる、管理と契約の根本な問題です。義母の恵子さんも同席させますので、どうかよろしくお願いいたします」
「ちょ、ちょっと歩美さん、やめなさい! 何言ってるの馬鹿なこと――!」
義母の鳴のような制止を無し、私は通話を切った。
静まり返った玄関に、義母の荒い呼吸だけが響いている。義母の両は刻みに震え、りと恐怖で唇が引きつっていた。
「あんた……本気なの? 野田さんにそんな鱈目を吹き込んで、私がどうなるか分かってんの!?」
「鱈目かどうかは、野田さんに判断してもらいましょう」
私は実のがり框から、母の保険証と、昨形科でしてもらったばかりの『度腱鞘炎・全治ヶ、作業の厳禁』とかれた診断、そしてあの万円の仕入れノートを鞄に収めた。
「お義母さん、公民館にきますよ。自分のでついてきてください。来ないなら、私と母のだけで全てをぶちまけるまでです」
「な……っ!」
義母は悔しそうに爪を噛み、憎悪に満ちた目で私を睨みつけたあと、逃げるように自分の軽自へ乗り込んでいった。
あけぼの区の公民館、階の第1会議。テーブルを挟んで、実委員の野田美代さんが、険しい顔で私たちを待っていた。
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野田さんは代半、元教員で域の信望もい女性だ。机のには、あの『藤本恵子さんの真作り幕の内弁当』と々にかれた交流会のチラシが置かれていた。
「それで、歩美さん。管理と契約の問題とは、どういうことですか?」
私は母の隣に座り、鞄から連の物証を取りしてテーブルのに並べた。
まず、母の首。湿布と分いサポーターでガチガチに固められたを、野田さんのにそっと差しさせた。
「……森田さん、その、どうされたの?」
「野田さん、結論から申しげます」
私は母の代わりに、澱みなく言葉を紡いだ。
「このチラシにかれているお弁当は、義母の藤本恵子が作ったものではありません。過半、婦会やサークルに納品されていた数百個の弁当も、全て私の母である森田幸子が、たったで仕込んでいたものです」
「……え?」
野田さんが目を丸くし、同席していた義母へ線を向けた。義母は俯き、膝のでハンドバッグの持ちを千切れんばかりに握りしめている。
「輔が私の名を騙り、『娘が事業をちげるから伝ってほしい』と母を騙していました。母は娘のためだと信じ込み、を切り崩して材料費をて替え、朝から仕込みを続けていたんです」
私は、母の学ノートをいて見せた。
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半にわたるスーパーのレシート、容器代の領収、そして計万千百円の支記録。さらに、昨夜撮した母の台所に並ぶ個の弁当の写真と、形科の診断を突きつけた。
「母は現、度の腱鞘炎です。包丁を握ることも、鍋を振ることもドクターストップがかかっています。今週末の百分を作ることは、物理に能です」
野田さんは息を呑み、ノートに貼られた几帳面なレシートの束を枚枚めくった。その顔が、みるみるうちに厳しく引き締まっていく。
「それだけではありません」
私は徹に続けた。
「母の自宅は、ただの築の般な造宅です。品法に基づく営業許も、そうざい製造業の許も受けていません。湯設備も、洗いシンクの独設備も、基準を満たしていない民の台所です。そこで作られた百のものや揚げ物を、特定数の民にを取って配る。もし当、サルモネラや黄ブドウ球菌、ウェルシュ菌による毒事故が起きたらどうなりますか?」
会議の空気が、完全に凍りついた。
「実委員会として、保健所のち入り検査と業務過失傷害の捜査に耐えられますか? 『藤本恵子の作り』と偽って無許営業の民で作らせていたと公表された、責任を取れる役員がでもいるんですか?」
「……っ!」
野田さんの背筋が、ピンと張り詰めた。