"「娘に頼まれたから」深夜に30個の弁当を作る母、私は何も知らなかった" 第2話
顔は気で、目のには濃い隈が張り付いている。私を見るなり、母は箸を取り落としそうになりながら目を丸くした。
「歩美……? どうして、あんたがここにいるの?」
「何してるの、これ……こんな夜に、何を作ってるの!?」
私の叫び声に、母は困ったように眉をげ、力なく笑った。
「何って……あんたに頼まれたからでしょう?」
……は?
「急に、個追加になったって輔さんが……。歩美が職のみんなと取引先に配るんだから、絶対に失敗できないって。だから、お母さん急いで仕込みをしてて……」
の芯を、鈍器で殴られたような衝撃がった。
「……頼んでない」
私の声は、ひどく掠れていた。
「え?」
「私、お母さんに弁当なんて度も頼んでない! 頼むわけないでしょう!?」
母のが止まり、濡れた瞳で私を見つめ返した。台所の換気扇のファンだけが、けたたましい音をてて回っている。
「でも……輔さんが」
母のからぽつりぽつりと零れたのは、私の像を遥かに超えた、あまりにもグロテスクな現実だった。
半。夫はでこの実を訪れていた。
『歩美がね、将来を見据えて、お弁当のケータリング事業を副業でさくちげたいって言ってるんです』
夫はそう切りしたという。
『ただ、あいつは保険会社の事務が激務で、平は仕込みのが取れない。お義母さんは昔、定で厨を仕切ってらしたでしょう? 最初だけでいいから、歩美ののために料理を伝ってやってくれませんか』
夫はそう言って、母に々とをげた。
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『あいつはっ張りだから、お義母さんに負担をかけるのを気にして、自分からは絶対に言いせないんです。「私からお母さんに頼むのは申し訳ないから、やっぱり諦める」って泣いてて……。だから、僕がに入ってお義母さんにお願いに来ました』
母は、その言葉を片の疑いもなく信じた。
夫に先たれ、で暮らす母にとって、娘の自や挑戦を支えられることは、何物にも代えがたいきがいだったはずだ。『歩美がやりたいことなら、お母さん、何だって伝うわよ』と、つ返事で引き受けたという。
最初は、曜の朝に個だけだった。
それが翌には個になり、やがて個になり、個になり――。気がつけば週に回、回と頻度が増えていった。
曜の朝、曜の夕方、曜の夜。夫から指定されたにわせて、母は朝のに起き、あるいは夜を徹して、きりで仕込みを続けていたのだ。
「私……あんたのの邪魔をしたくなかったのよ」
母は腫れがった自分の指先をさすりながら、震える声で言った。
「輔さんがね、『歩美は今、軌に乗せるために必だから、では仕事のプレッシャーをいさせないよう、お弁当の話は切振らないであげてくれ』って……」
私は母のスマホを借り、夫とのLINEのやり取りをいた。
画面をスクロールするが、りでガタガタと震える。
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『お義母さん、曜の朝8までに30個お願いします』『今回は唐揚げをきめにして、彩りを良くしてください。SNSに写真を載せるお客さんがいので』『歩美もすごくんでます。「お母さんの付けじゃないと、このはせない」って言ってました』
私の名を騙り、私の言葉を捏造し、母のを都のいい燃料にしてらせていた。
「これ……全部、輔が受け取りに来てたの?」
「ええ。勤や、仕事帰りにで寄ってくれてね。いつもきなクーラーボックスに詰めて、運んでくれてたわ」
「代は?」
喉の奥がカラカラに渇いていた。
「材料費よ。お米代も、お肉代も、このパック代も。輔から受け取ってたの?」
母は瞬、言葉に詰まったように線を泳がせた。そして、申し訳なさそうにさな笑みを浮かべた。
「……最初のに、万円だけもらったわ。『ガソリン代としにしてください』って。でも、それ以は……ほら、業したばかりの頃は、備品のリース代とか宣伝費とかで、元の現が回らないでしょう?」
「だからって、お母さんが全部払ってたの……?」
「あんたが苦労してるのに、母親の私が請求なんてできないじゃない。丈夫よ、お父さんの残してくれた遺族もあるし……あんたの仕事が軌に乗ったら、そのにまとめて精算してくれればいいって、輔さんにもそう伝えてあるから」