"「ヒモ男」と笑われた夫と私に、88歳の祖父が深く頭を下げた" 第14話
「それは……!」
言葉に詰まった叔父を庇おうと、叔母の理恵がヒステリックに甲い声をげた。
「何よ! 族なんだから助けうのは当然じゃない! 子さんだって納得して、自分からんでしてくれたんでしょ!? 私たちが無理やり奪ったわけじゃないわ!」
「納得なんて……していません」
居の静寂を切り裂いたのは、いもよらない声だった。
母だった。
、親戚の集まりではいつもさくなり、叔父夫婦の傲な物言いにただ笑いを浮かべて耐えてきた母。
その母が、畳にをついたまま、ゆっくりと顔をげた。
唇は震えていた。
けれど、その瞳の奥には、押し殺してきた母親としての確かなりが宿っていた。
「子さん、あなた目の私たちに向かって――」
「私は」
母の声は、理恵の甲い鳴り声を遮るように、静かに、けれど驚くほど瞭に響いた。
「お義父さんのために、おをしてきました。夫がお世話になった恩を返したくて、苦しんでいるお義父さんを助けたくて、で貯めてきたおを窓で払いました」
母はまっすぐに達夫叔父を見据えた。
「あなたに褒めてもらうためじゃありません。……でも、あなたの柄にされるためでもありません」
「な……っ」
「『親戚同士だから』と笑って誤魔化し、親戚のでは自分がすべてしていると嘘をつき、挙げ句の果てに私の娘の夫を『ヒモ男』と嘲笑う……。
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そんなことのために、私はあのをくしてから、で歯をいしばっておを残してきたんじゃありません!」
母の目から粒の涙が溢れた。
けれど、声はミリもブレなかった。
「おを返してください。達夫さん。今すぐ、全額返してください」
叔母の理恵が息を呑み、魚のようにをパクパクとかして黙り込んだ。
老たちが叔父を睨みつける線は、もはや完全な軽蔑へと変わっていた。
「達夫……お、ここまで浅ましい男だったのか」「弟が遺した妻子からを巻きげて、社の面子を保っていたのか」「けない……先代にを塗るにも程があるぞ」
親族からの酷な線に晒され、叔父の全がカタカタと震え始めた。
逃げはどこにもなかった。
追い詰められた獣のように血った目をギラつかせ、叔父は最に、もっとも御しやすいはずの相――悠真へとりの矛先を向けた。
「……てめえだ」
叔父は座卓からちがり、悠真の先を指差した。
「てめえが裏で糸を引いて、子さんを唆したんだろ! 定職にも就けないくせに、のに首を突っ込んで族をバラバラにしやがって! 嫁の稼ぎにぶらがってる無職の分際で、偉そうに正義面するんじゃねえ!」
居の空気が再び凍りついた。
私がちがろうとした、その瞬――
「はい」
悠真が、く返事をした。
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そして、取り乱すこともなく、静かに、極めて洗練された作でちがった。
作業着のと同じような、無駄のない佇まい。
悠真は親族全員に向けて、度く礼した。
「叔父様のおっしゃる通り、私は現、職のプラント閉鎖に伴い、求職活のです」
親族たちが息を呑む。
「妻の希と話しい、資格取得までの数ヶ、計のくを支えてもらっていることも事実です。そのことについて、私は恥じるつもりも、隠すつもりもありません。私は毎、のことをすべて担い、もく次の現で自できるよう、全力でいています」
悠真は線をげず、まっすぐに達夫叔父の目を見つめ返した。
「ですが――私が求職であることと、叔父様が私の妻や義母を当に踏みにじることは、全く別の問題です」
「……何だと?」
「私の妻を見すに、私たちのやを指図する権利はありません」
悠真の声には、声も威圧もなかった。
ただ、自らのでを踏みしめてきているだけが持つ、圧倒な誇りがあった。
「男が無職だから介護を押し付けていい、内だからを奪っていい。そんな勝な理屈は、社会では切通用しません。私たちは、おじい様が必とするならんで力を尽くします。しかし、叔父様の見栄や保のための具になる気は、切ありません」
叔父は息を詰まらせ、歩ずさった。
見していたはずの『無職の男』が放つ、濁りのない正論。