"「ヒモ男」と笑われた夫と私に、88歳の祖父が深く頭を下げた" 第13話
央の座には、祖父が両を膝に置き、彫像のように微だにせず座っている。
私と悠真は、母の隣――末席に静かに腰をろしていた。
叔父は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、老たちに向かって仰に語り始めた。
「皆様、本はお集まりいただきありがとうございます。事態は刻を争います。ご覧の通り、親父はもう齢で、物事の分別がつかなくなっている。そこへつけ込んだのが、そこにいる希と、その無職の夫です」
叔父はビシッと、悠真を指差した。
「定職にも就かず、嫁の稼ぎに寄しているような男が、藤森の財産に目をつけないはずがない! 親父を丸め込んでボロに居座らせ、あわよくばを自分たちの名義にき換えさせようとしているんです! こんなハイエナのような連を、野放しにしていいわけがない!」
叔母の理恵も、ハンカチを目元に当てて芝居がかった声をげる。
「本当に恐ろしいわ……。子さんも子さんよ。夫をくしてから、ずっと本に銭な面倒を見てもらっていながら、娘にこんな浅ましい真似をさせるなんて!」
親族の老たちが、怪訝な顔で私と母を見つめる。
母は震えながら、膝ので握りしめた拳をくしていた。
「言いたいことは、それだけか」
静寂を破ったのは、座の祖父だった。
叔父は咳払いをし、自信満々に頷いた。
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「ええ! ですから親父、今すぐあの売却の委任状に判を押してください。施設の配は俺が責任を持って――」
「達夫」
祖父の声が、氷点のたさを帯びて居に響いた。
祖父は脇に置いてあった、あの分い青いファイルをに取った。
そして、座卓の央――叔父の目のの目を割りかねないほどの力で、バァンッ!と叩きつけた。
激しい破裂音が広に轟き、全員がビクッと肩をねがらせた。
「親父……? これは……」
叔父が狼狽えて線を落とす。
祖父は座卓に両をつき、を乗りして、叔父を射殺さんばかりので睨み据えた。
そのから放たれた言葉は、居にいた全員の鼓膜を、そして叔父の急所を、正確無比に撃ち抜いた。
「達夫。おはをけば、希たちが財産を狙っとると喚き散らすがな――」
祖父のくをうような号が、静寂を切り裂いた。
「ならまず、このにいる全員ので説してみろ。子の通帳から毟り取ったこの万千百円……お、いつになったらを揃えて返すつもりなんじゃ!?」
座敷の空気が、瞬に真空になったかのようだった。
誰も息をしていない。
叔父の達夫は、目のに叩きつけられた青いファイルを凝したまま、目を見いて直していた。
顔からサーッと血の気が引き、気へと変わっていく。
「な……なな、何を……親父、何の話だ?」
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叔父の引きつった喉から、掠れた声が漏れた。
「子さんの? ……だ、騙されてるんだよ親父! そいつらが作った偽造類だ!」
「見苦しいぞ、達夫!」
藤森運輸の創業期から祖父を支えてきた老の伯父が、膝を叩いてした。
「現造さんがそんな鱈目を言うわけがないだろう! を見せてみろ!」
老のによって、青いファイルの留め具がされた。
枚目に綴じられていたのは、からの病院の領収と、母の通帳の引きし記録を照した覧表。
そして、そのすぐろに拡印刷されていたもの――
古いスマートフォンの画面をそのまま写し取った、LINEのやり取りだった。
『術の万、悪いが朝イチで病院に振り込んでおいてくれ』『親父には、俺がまとめて払ったことにしておいてくれ』
居にいた親族たちがを乗りし、その画面の文字を目にした瞬、ざわめきが波のように広がった。
「これ……達夫のアカウントじゃないか」「『親父には俺が払ったことにしておけ』って……」「まさか、本当に弟の未に払わせてたのか?」
「違っ……違う!」
叔父は額に脂汗を吹きしながら、両をぶんぶんと振った。
「それは、あのたまたま元に現がなかったから、にて替えてもらっただけで! でまとめて清算するつもりだったんだ!」
「もか」
祖父のくたい声が、叔父の言い訳を容赦なく叩き折った。
「、度も返さず、催促されても『親戚同士で細かいを請求するな』と鳴り散らして踏み倒したそうだな」