"「月5万払うから」離婚した私に介護を頼む元夫" 第14話
部のは、静かだった。誰にも脅かされない、私だけの。
スマートフォンをテーブルのに置く。度と鳴ることのないように、源ボタンを押しした。液晶画面がスーッと暗くなり、漆黒のガラスに私の静かな笑顔が映り込んだ。
暗に沈んだ部で、私はく、く息を吐きした。
肺の底に溜まっていたたい澱が、しずつ吐きされていくような覚だった。
廊の騒ぎは、すでに潮が引くように消えっていた。パトカーの赤灯が壁を赤く染めることもなく、障りな罵声も聞こえない。残ったのは、蔵庫がく唸る微かな音と、壁掛け計の秒針が刻む規則正しいリズムだけ。
、ずっと張り詰めていた糸が、完全に切れた夜だった。
翌朝、に目が覚めた。いつもなら、び起きるようにして布団をね除けていただ。義母の圧剤の準備、朝番の血圧測定の確認話、健の朝と弁当の支度、そして自分の勤準備。分刻みで誰かの都に追われ、息をつく暇もなかった朝。
でも、今は違う。
ベッドので、ゆっくりと井を見げる。誰も私を呼ばない。誰の嫌を伺う必もない。布団の温もりを肌で確かめながら、ただ自分の呼吸だけにを澄ますことができる。
やかんをにかけ、お気に入りのマグカップに湯を注ぐ。
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湯気の向こうに広がるさなリビングは、昨までの修羅が嘘のように澄み切っていた。
「……私の、朝だ」
声にしてみると、胸の奥がきゅっと温かくなった。
信用庫の支に勤すると、同僚たちから「佐伯さん、し顔が良くなりましたね」と声をかけられた。ここ数、のすべてを義母の通院と実の雑務で使い果たし、常に疲弊しきっていた私の変化に、周囲はすぐに気づいたようだった。キーボードを叩く指先が軽い。類のチェックも、窓での顧客対応も、驚くほど淀みなくむ。誰かの尻拭いをするために削られていた集力が、すべて自分の仕事へと真っ直ぐに向いていた。
平穏を取り戻した私とは対照に、佐伯の現実は音をてて崩壊へと向かっていた。
その部始終を教えてくれたのは、斜め向かいの田辺さんだった。事件から週ほど経った曜の昼がり、買い物帰りに駅でばったり会った田辺さんは、私のをぎゅっと握りしめて言った。
「美さん、本当に変だったわね。でもね、町内のつまみ者があの親子だってこと、みんなとっくに気づいてるわよ」
田辺さんの話によれば、あの夜、警察に連されかけた千代子を警察署まで引き取りにったのは、結局、夜に叩き起こされた健だったという。
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警察署の待で、みっともなく取り乱す母親をに、健はを抱えていたそうだ。さらに、翌には管理会社から「これ以の迷惑為があれば退勧告をす」と厳注を受け、親戚筋にも警察汰になったことがれ渡った。
「健さん、会社をも休んだんですってよ。智子さんも隣から呼びされてね。で千代子さんを連れて、役所の域包括支援センターの窓に駆け込んだらしいわ」
田辺さんは呆れたように溜息をついた。
窓での修羅は、職員のでも語りになるほど酷いものだったらしい。
介護認定の申請をに、実の姉弟が窓の真んで醜い押し付けいを始めたのだ。
「あんたが男なんだから、引き取って同居するのが筋でしょ!」「俺は仕事があるんだよ! 智子姉さんだって専業主婦だろ、そっちので面倒見ろよ!」「うちは娘の学受験よ! 義理の両親だっているのに、母さんを連れてけるわけないでしょ! デイサービス代とヘルパー代はあんたの料からしなさいよ!」「せるわけないだろ! 玲奈との居の違約で貯が底をついたんだぞ!」
域包括支援センターのケアマネジャーが、淡に説したという。公な介護保険で利用できるサービスには限度があること。支援レベルであれば、毎の事の支度や買いし、夜の見守りなどはすべて自己負担になるか、族の自助努力が提であること。